5月22日に示された案に、「老後は年金だけでは足らず、夫婦が95歳まで生きていくには2000万円の貯蓄が必要」との内容が書かれた「金融審議会『市場ワーキング・グループ』報告書」。年金受給年齢の引き上げや減額などたびたび話題になってきた年金問題に、かつてないほど国民の関心が集まっています。

この報告書に対する政府の曖昧な対応への怒りが巻き起こり、6月16日、東京・日比谷では反対運動「年金返せデモ」が行われました。主催者によるとデモ参加者は約2000人。20代~30代の若い層も含まれるなど、関心の高さが伺えます。

さらに、このデモ参加者に対し、実業家の堀江貴文氏が「税金泥棒」と発言。波紋を呼んでいます。

堀江氏の発言の真意は?

堀江氏はデモが行われた翌日の6月17日、自身のツイッターで「そんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め」と投稿。“税金泥棒”という強い言葉に多くの人が反応し、怒りの声を上げていました。

続いて堀江氏は、デモ参加者は納税額よりも受給額の方が多いこと、そして彼らが年金制度の仕組みを理解していないこと、そして今自分たちにできることは誤解したままデモに参加して政府を批判するのではなく、税収を増やすために効率よく稼ぐこと、といった趣旨のツイートを投稿。

堀江氏の発言は間違ってはいないでしょう。ただ、自身のような経済強者が、ビジネスで成功したり所得が著しく高かったりする人、さらには大企業への言及はせず、一般市民と思われるデモ参加者をバカにするような姿勢が怒りを買うのは無理もない面もあります。

社会情勢によって給付水準が変わるマクロ経済スライドが採用されている以上、受給年齢引き上げや受給額の減額は避けられなくなってきます。しかし少子高齢化の加速は数十年前から予測できていたにも関わらず、少子化対策や年金制度についての説明において政府による納得のいく対応がなされていないことも事実。

年金返せデモの怒りは、「払った年金を返して欲しい」と思ってしまうほど多くの人が将来への不安に駆り立てられ、政府の誠意ある対応を求める動きだったのではないでしょうか。

“税金泥棒”という表現は妥当なのか?