未来が語られた決算説明会

2016年1月21日に開催された日本電産(6594)の2016年3月Q3累計(4-12月期)決算説明会で、永守重信社長によるプレゼンテーションでは、その大半で未来に向けた戦略が語られました。

投影されたスライド10枚のうち短期業績に関するものが4枚で、残り6枚は中長期の戦略についてでした。質疑応答を含む1時間の説明会で、短期業績に費やされた時間は10%程度という印象でした。

では、未来についてどのようなこと語られたのでしょうか。ポイントを以下に説明します。

過去にない技術革新の波が押し寄せている

プレゼンテーションの中で永守社長は、日本電産は「創業して42年で、過去に経験したことのない技術革新の波が押し寄せている」とコメントし、技術革新による新規ビジネスチャンスが到来していることを強調しました。

技術革新をもたらす社会環境の変化としては、「省電力対応」、「先進各国での少子高齢化」、「交通システムの電動化」、「通信インフラの高度化」、「データ分析・処理(AI)」を挙げました。

その上で「自動運転」、「HMI(Human Machine Interface」、「EV/PHEV」、「IoT」、「Robotics」、「ドローン」、「ウエアラブル」、「VR(仮想現実映像)」などが、今後、同社にとって有望な成長領域になるという考えを示しました。

数年前までの同社は、HDD用モータの販売動向だけが注目ポイントであったことを考えると、まさに様変わりと言ってよいでしょう。また、こうした見通しを語れるのは、これまで行ってきたM&Aが上記の成長領域に全て関連し、身を結ぶ可能性があるためです。

ただし、永守社長は、これでM&Aは終わりではなく、まだまだ続ける必要があるともコメントし、特にセンサー、ソフトウエア分野についてはさらに強化していく必要があるという考えが示されました。

加えて、成長領域での引き合いも活発であり、エンジニアが不足していること、IoTを活用したモノづくり力の強化も必要で、今後は国内にも先端工場を建設していく考えも明らかにしました。

1日だけの株価の動きの深読みは不要

決算翌日、1月22日の同社の株価は、寄り付きは高く始まったものの、途中、マイナスに転ずる場面もあり、終値は、日経平均が+6%近い上昇になる中で+2%の上昇に留まりました。

経営者が足元の業績について多くを語らず、将来について多くを語る時、足元の業績があまりよくないため将来の話でお茶を濁す場合と、将来の成長への自信が高まっている場合の二通りがあります。

同社の場合は、Q3累計実績は増収・増益となり過去最高を更新していること、中国のエアコン関連やスマホ用触覚デバイスを除くとほぼ想定通りに推移し通期業績は据え置かれていたこと、そして、上記のプレゼン内容などから、明らかに後者のケースと考えられます。

このため、決算翌日の株価上昇率が市場平均を下回ったことへの深読みは不要だと考えます。株価は、需給要因など様々な要因で決まるものなのです。

LIMO編集部