まもなく新年度を迎える3月。4月15日(水)には年金の支給が予定されており、2カ月に一度のこの機会に「自分は将来いくら受け取れるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が公表した令和8年度の改定額や最新の統計データをもとに、現在の年金受給水準や受給額の分布、そして公的年金制度に対する代表的な誤解について、詳しく解説していきます。

1. 【2026年度・年金額改定】厚生年金は月額23万7279円に!標準的な夫婦世帯で4495円増額

2026年1月に、令和8年度における年金額の改定内容が公表されました。

▼令和8年度 年金額の例(月額)

  • 国民年金(満額・1人分):7万608円(前年度比+1300円)
  • 厚生年金(標準的な夫婦世帯):23万7279円(前年度比+4495円)
    ※厚生年金は、平均的な収入(平均標準報酬額45万5000円)で40年間就業した夫と、専業主婦の基礎年金を合わせたモデルケースです。

この改定は、近年の物価や賃金の変動を反映したもので、結果として一定の増額となっています。

2. 厚生年金「月額30万円以上」もらえる人は何パーセント?受給額のリアルな分布を解説

厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢基礎年金を含む厚生年金の受給額は、男女合計の平均で月額15万289円です。

では、実際の受給額はどのように分布しているのでしょうか。

2.1 厚生年金の受給額ごとの割合

厚生年金の受給額2/7

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

特に注目したいのが「月30万円以上」を受け取っている人の割合です。

データを見ると、その割合はわずか0.12%でした。

これは1000人に1人強という水準であり、極めて少数派であることがわかります。平均受給額が約15万円台であることを考慮すると、月額30万円を超える年金を受け取るのは、かなり例外的なケースといえそうです。

3. 公的年金にまつわる代表的な3つの誤解をスッキリ解消

ここからは、公的年金制度に関してよく耳にする3つの誤解について、一つずつ解説していきます。

3.1 誤解1:日本の年金制度はいずれ破綻してしまう?

日本の公的年金制度には、「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みが導入されています。これは、社会情勢の変化(少子高齢化や平均寿命の延伸など)に応じて、年金の給付水準を自動的に調整する機能です。

このように、制度の財政バランスを維持するための設計がはじめから組み込まれているため、「ある日突然、年金の支給が停止する」といった事態にはなりにくい構造になっています。

したがって、重要な論点は「破綻するかどうか」ではなく、将来にわたってどの程度の給付水準で制度を維持していくかという点にあるといえるでしょう。

3.2 誤解2:年金保険料は将来もっと引き上げられる?

厚生年金の保険料率は、2017年に18.3%で上限が固定されました。そのため、制度上、この水準を超えて無制限に引き上げられる仕組みにはなっていません。

また、近年は女性や高齢者の就労参加が進んだことで保険料収入が増加しており、年金積立金の残高は事前の想定よりも約70兆円上振れする見通しです。

このように、国民の負担だけが増え続けるという単純な話ではないことも、知っておきたい大切なポイントです。

3.3 誤解3:「支払った保険料の元が取れない」は本当?

公的年金は、個人が支払った保険料を単に積み立てて将来受け取る、というだけの貯金ではありません。

  • 老齢年金(長生きによって生活資金が不足するリスクへの備え)
  • 障害年金(病気やけがで働けなくなった際の保障)
  • 遺族年金(加入者が亡くなった後の家族への生活保障)

これら3つの機能を備えた、社会全体で支え合う「社会保険制度」としての役割を持っています。

世代と世代の支えあい6/7

世代と世代の支えあい

出所:日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」

さらに、公的年金には所得再分配の機能があり、現役時代の収入格差が、そのまま老後の年金受給額の格差につながらないように設計されています。

公的年金の所得再分配機能7/7

公的年金の所得再分配機能

出所:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料①」

そのため、「元が取れるか」という損得勘定だけで制度の価値を判断することは、その本来の役割を見誤ることになりかねません。

4. まとめ:まずは自身の「年金受給見込み額」を把握することから

今回は、令和8年度の年金額改定の内容、受給額の分布、そして年金制度に関するよくある誤解について解説しました。標準的な夫婦世帯の厚生年金は月額23万7279円に増額される一方、全体の平均受給額は約15万円台で、月30万円以上を受け取る人は0.12%とごくわずかです。また、制度には給付水準を自動調整する仕組みがあり、「破綻する」「負担だけが増え続ける」といった見方は必ずしも正確ではないことも確認しました。

この記事で紹介したデータを参考に、まずはご自身の「ねんきん定期便」などで受給見込み額を確認することが、老後準備の第一歩です。その上で、公的年金を老後生活の土台としつつ、iDeCoやNISAといった私的年金や資産形成で上乗せ部分を準備するなど、将来に向けた具体的な計画を立ててみてはいかがでしょうか。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

東大森 勝太