米中の関税報復合戦、中国の景況感悪化、円高傾向・・・
2019年5月31日の日経平均株価の終値は、前日より341円34銭安の20,601円19銭となりました。3日続落です。終値ベースで21,000円を割り込んだのは、3月25日以来です。また、終値ベースで2月8日以来の安値となりました。
令和になってから1か月で1,657円あまりの下落となりました。背景には、米中貿易摩擦の悪化にともなう世界経済減速への懸念があります。発端はやはり米トランプ大統領でした。日本が連休中の5月5日、中国からの輸入品に対する関税率を10%から25%に引き上げると表明し、実際に10日に引き上げが行われました。
さらに、中国の通信機器最大手、ファーウェイ(華為技術)に対する米国製部品などの禁輸措置を発動したことで、電子部品・半導体メーカーの業績に影響が出ると考えられ、関連銘柄が売られました。
今週以降の動きはどうなるでしょうか。米中摩擦については、トランプ氏の言動で市場が一喜一憂するような状況が続いています。しかし、中国はそのかけひきには乗らず、強気の姿勢です。
中国政府は6月1日、米国の制裁関税に対する報復措置を発動し、液化天然ガス(LNG)など600億ドル分の米国製品について、追加関税を最大25%に引き上げました。報復合戦が続く可能性もあります。
心配されるのは、実際に中国の景況感が悪化していることです。5月31日に発表された中国の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と、節目となる50を下回りました。
米国の通商政策、特にトランプ氏の言動に振り回される展開も続きそうです。30日には、トランプ氏がメキシコに追加関税を課すと発表したことから投資家の間に警戒感が広がり、31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比354ドル安の24,815ドルと大幅反落しました。
円高傾向になっているのも注意が必要です。31日のニューヨーク外国為替市場では1ドル=108円25~35銭で取引を終えています。円高水準が続けば日本企業の業績にも影響が出ます。
こういったことから、日経平均は週初から下げる可能性もあるので注意が必要です。
今週はさらに、米5月ISM製造業景況指数の発表のほか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言にも注目したいところです。
25日移動平均線と75日移動平均線のデッドクロス形成か
先週の日経平均の値動きをテクニカル面から振り返ってみましょう。前週末の24日には、ローソク足が直近の下値めどである5月14日の安値(20,751円)付近で反発して陽線となりました。チャートの形としてはここからの反発が期待できるところです。
しかし実際にはその後、直近の上値めどである5月20日の高値(21,430円)付近で上値を押さえられて反落しました。このあたりは75日移動平均線に重なっていました。その後は下落が続き、5月14日の安値も割り込んでしまいました。
今後の展開はどうなるでしょうか。短期的には目線は下になるでしょう。5月14日の安値を割り込んだことで、「Wトップ」が形成されました。4月24日の高値(22,362円)を頂点とする下降トレンドができたことになります。
さらに気になるのは25日線が75日線に近づき、デッドクロスが形成されようとしていることです。
ここから下がるとすればどこまで行くでしょうか。3月25日の安値(20,911円)も割り込んでしまったので、下値めどは2月8日の安値(20,315円)さらには、節目として意識されやすい20,000円になるでしょう。
このあたりは過去に売買が積み上がっているため、しばらくもみ合うことも考えられます。ただしここを抜けてしまうとするすると下落してしまう可能性もあります。
20,000円付近で押し目買いを狙っていく戦略もありますが、当面は警戒が必要です。柔軟に対応できるよう備えておきたいところです。
下原 一晃