投資という言葉へのイメージが改善
2010年から6回にわたって行ってきたサラリーマン1万人アンケートの中から、女性のデータを取り出して分析を行ってみると、「投資」という言葉に対するイメージが大きく変わっていることがわかります。
投資という言葉に対するイメージを「前向き」「楽しい」「明るい」「儲け」「リスク」「ギャンブル」「損失」「怖い」の8つの選択肢から選んでもらい、初めの4つを「ポジティブ」なイメージとしてまとめてみました。その結果、2010年の「ポジティブ」イメージは全体のわずか8.5%にしかすぎませんでしたが、2018年の調査では26.7%へと大きく増加していました。
一方で、「ギャンブル」「損失」「怖い」の合計を「ネガティブ」なイメージとしてとらえると、その比率は2010年の27.5%から2014年には38.3%へと上昇し、その後は若干減少気味で2018年は34.2%となっています。これに対して大きく減っているのが「リスク」のイメージです。2010年の54.0%から2018年には39.1%へと15ポイントほど低下してます。
総じて言えることは、「ネガティブ」イメージは3割前後で変化が少ないのですが、「リスク」というイメージが減って、その分、「ポジティブ」なイメージが増加しているという傾向です。
これは男女ともに同様の傾向です。しかも、20-30代と40-50代で、その見方に大きな段差があり、若い世代ほど「ポジティブ」な見方をする人が多いということもわかっています。2010年の調査ではこの段差が35歳前後にありましたから、これは世代の特徴としてとらえるべき傾向だと思います。
2000年以降に社会人生活を始めた現役層、すなわち現在の40歳より若い世代(2010年調査の折には35歳より若い世代)を、いわゆるミレニアルズという世代で括ることができるのではないでしょうか。
積立投資への理解が進む一方で複雑さが足枷か
投資へのイメージが改善していることに合わせて、注目しているのが、「投資をしない理由」の変化です。2010年以降の調査でみると、総じて女性の8割弱が投資をしていないと回答していますが、その理由を聞いてみると大きな変化が表れていました。
2010年の調査で、「投資をしていない理由」としてトップに挙げたのが「まとまった資金がないから」でした。全体の44.2%が指摘していました。これが2018年には29.1%にまで低下し、第3位となっています。
実は、この傾向は男女を問わず表れていて、2014に始まった少額投資非課税制度(NISA)の導入で注目を集め始めた積立投資が、その後の個人型確定拠出年金(iDeCo)の適用範囲の拡大やつみたてNISAの導入などで女性にも浸透している結果だと考えられます。
ただ、若干気になっているのが2015年の調査結果をボトムにして、「何をすればいいのか分からない」が徐々に増加して第2位の理由になっている点です。NISA、iDeCo、つみたてNISAなど制度が複数で、その制度そのものや手続きなどが複雑なことが、こうした指摘の増加につながっているのかもしれません。より一層わかりやすく、また詳しく説明する努力が求められているといえそうです。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史