人手不足倒産が増えるのは日本経済にとって良いニュース

通常であれば、勤務先の倒産は労働者にとって悲劇ですが、人手不足倒産の場合は、むしろ労働者は待遇が改善する可能性が高い、という点も重要です。今までの勤務先が人手不足倒産をしたのは、給料が他社より低いから労働者を募集しても集まらなかったわけで、他社に移れば給料が上がる可能性が高いのです。

労働者が「情報弱者」で、自分の給料が他社より低いことを知らなかった場合もあるでしょうし、知っていても恩のある会社を辞めると言い出せなかった場合もあるでしょう。いずれの場合にも、勤務先が倒産すれば新しい仕事を探すことになり、そこで今までより高い給料がもらえる可能性が高いのですから、素晴らしいことです。

過当競争が沈静化することにも期待

日本企業は過当競争体質なので、「効率的に経営しているけれどもライバルとの値引き合戦が激しくて利益が出ず、高い賃金が払えない」、という企業も多いはずです。そうした企業の中で人手不足倒産が発生するとすれば、それは残念なことに違いありません。

しかし、業界全体のことを考えれば、当該企業が倒産したことで、過当競争が緩和され、生き残った企業が適正な価格で販売できるようになり、適正な利益を得て適正な賃金を支払えるようになる可能性が高いでしょう。これは、素晴らしいことだといえるでしょう。

日本経済全体としても、こうして値下げ合戦が収束していくことは、デフレ脱却に向けた望ましい動きだと言えるはずです。

倒産より合併等が望ましい

企業が倒産すると、企業の中に蓄えられてきたノウハウや顧客リストなどが散逸してしまい、もったいないことになります。まだ使える機械がスクラップ業者に二束三文で叩き売られてしまう場合も多いでしょう。

それを避けるためには、企業が合併したり身売りしたりすることが望ましいと言えそうです。企業経営者としては、自力で生き残れる可能性が少しでもあるならば、身売りしたりするのは嫌だと思うでしょうが、生き残れる可能性が相当低いのであれば、あるところで諦めるという決断も必要となるでしょう。

数百万社ある企業のなかで、求人難などによる倒産がわずか131社しかない、ということは、人手不足で倒産が危ぶまれる多くの企業が身売りや合併などを選択している結果だと推測されます。それは、悲しい決断だとは思いますが、結果的には正解だったのかもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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