しかし、連日長時間ずっとうるさいわけではなく、だいたい週に1、2回聞こえてくるかどうか程度。想像してみればわかると思いますが、これは決して“騒音”とは言えないでしょう。通行人の会話や車が通る音と、大きな違いがあるとは思えないというのが筆者の実感です。
一方で、保護者のマナーや送迎する自転車や車の増加なども、近隣住民が懸念する要素です。筆者宅の向かいの保育園の例で言うと、敷地内に駐輪場や駐車場を確保し、入園の際には保護者に対して「送迎の際には近隣住民の迷惑にならないようにしてください」と呼び掛けていることを聞きました。
ただし保護者のマナーについては、保育園側が行う対策以上に、保護者ひとりひとりのモラルによる側面が大きいのではないでしょうか。電車内でマナー悪い人がいたら、鉄道会社ではなくその人個人に注意すべきなのと同じです。
筆者は現在のところ、マナーの悪い保護者を見たことはありません。しかし、もし迷惑をかけるような保護者がいた場合、保育園ではなくその保護者本人に配慮を求めると思います。
反対派に納得してもらうにはどうしたらいいのか
近隣住民の反対によって保育園建設が滞るケースがあるという日本社会の現状は、ただただ残念だと言わざるをえません。しかし、保育園建設に反対する人に、「自分たちも子どもの時は騒がしく、人に迷惑をかけてきたはずだ」「子どもは社会が育てていくべきなのに」といった正論は通用しないでしょう。
それどころか、反対する人たち自身は「誰かが我慢しなければいけない物事の“誰か”になってしまう」といった被害者意識さえ芽生えていると思われます。
この問題で最も大切なことは、保育園や自治体側が近隣住民に対して、防音対策や保護者へのマナー順守の取り組みについて事前にしっかりと説明すること。「子どもの未来のために」といったきれいごとではなく、外遊びに関する詳細や一般的な保育園における騒音レベルを具体的に提示するといった歩み寄りによって、耳を傾ける近隣住民もいるかもしれません。
今回ご紹介したことは、確かに筆者の経験による一例ではあります。保育園の規模やその地域の状況等によっても、大きく異なることもあるでしょう。ただ、今の保育園建設反対派の人たちの動きは、「きっと子どもの声がうるさくなるだろう」と、想像だけで頭ごなしに反対しているようにも感じられます。実際に保育園の近所に住んでいる人の経験談も参考にしてみてほしいところです。
秋山 悠紀