2019年2月26日に行われた、片倉工業株式会社2018年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:片倉工業株式会社 代表取締役社長 佐野公哉 氏
1.トピックス
佐野公哉氏:まず、決算の説明に先立ち、直近の取り組みに関するトピックスを4点お伝えいたします。
1つ目に、構造改革推進体制の再構築でございます。本年(2019年)1月のリリースのとおり、繊維事業のうち「実用衣料」、また「医薬品」「機械関連」は、安定した収益基盤の確立と成長事業への転換が完了していないと判断し、構造改革を1年継続することを決定いたしました。また、3事業における構造改革を担う「構造改革推進室」を2月に新設いたしました。
2つ目に、成長事業への体制変更でございます。昨年(2018年)12月のリリースのとおり、従前取り組んでまいりました新規事業と一部の既存事業を「ライフソリューション事業」と再定義し、1月に組織再編を行いました。
また、先般のリリースのとおり、さいたま新都心の第三期開発などの不動産事業の重要課題を着実に推進するため、開発・運営と分かれていました組織を「不動産事業部」へ統合し、効率的かつ集中的に取り組む体制といたしました。
3つ目に、選択定年優遇制度拡充でございます。昨年12月のリリースのとおり、当社社員の転身を支援する目的で選択定年優遇制度を拡充し、今月(2019年2月)15日から22日まで募集を行いました。この結果、63名が応募し、昨日の2019年度業績予想において発表済みですが、割増退職金などの特別損失を約5億円見込んでおります。
4つ目に、役員体制の強化でございます。本年1月にリリースのとおり、私が代表取締役会長に、専務の上甲が代表取締役社長に、それぞれ就任予定でございます。また、社外取締役を2名から3名へ増員し、ガバナンスの強化を図ってまいります。
なお、役員人事については、3月28日の定時株主総会・役員会での承認を経て、正式に決定する予定でございます。
連結損益計算書
2018年の決算概要についてご説明いたします。2018年度は構造改革の2年目として取り組んでまいりました。前期比では減収減益となりましたが、最終利益は、固定資産の売却益もあり、ほぼ前期並みとなりました。
2018年度の売上高は443億800万円。営業利益は15億3,100万円。経常利益は24億5,600万円。親会社株式に帰属する当期純利益は12億8,300万円となりました。なお、昨年(2018年)8月にリリースいたしました予想からは、機械関連で下振れがありましたが、税金費用の減もあり、最終利益は増益となりました。
連結損益計算書/セグメント別実績
セグメント別の売上高・営業利益についてです。まずセグメント別の実績でございますが、増減の大きいセグメントについてご説明いたします。
前期増減でございますが、①の医薬品事業で2億9,600万円の減収、4億1,700万円の減益となりました。これは、昨年(2018年)6月に新規後発品2成分3品目の発売がありましたが、薬価改定の影響によるものであります。
②の機械関連事業で、6億3,700万円の減収、2億8,800万円の減益となりました。これは、前期に高粗利の電力会社向けの大容量送水ポンプ車の受注があったためであります。
③の繊維事業で、8億7,300万円の減収でしたが、若干の利益貢献となりました。これは、構造改革に伴う低採算商品の絞り込みや昨年4月の子会社の事業徹底により、減収となりました一方、物流費などの削減により利益は改善いたしました。
④の不動産事業で、1億9,900万円の増益となりました。これは修繕費・減価償却費の減によるものであります。
次に予想との差異でございます。①の機械関連事業で、売上高が13億4,800万円、営業利益が2億5,600万円、それぞれ下振れしました。これは、受注した特装車両及び一部消防車の出荷が、次の期にずれ込んだためであります。
連結貸借対照表
連結貸借対照表についてご説明いたします。総資産は1,389億600万円で、前期末より56億6,700万円減少しました。これは、昨年末の世界的な株安の影響を受け、投資有価証券が時価下落したことが主因であります。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフローの実績についてご説明いたします。現金及び現金同等物の期末残高は70億9,100万円であり、およそ23億円増加しました。営業キャッシュ・フローは、税前利益20億円に加え、減価償却が32億円で、56億9,100万円の収入となりました。
投資キャッシュ・フローは、有形固定資産の取得を主として、18億4,000万円の支出となりました。また、財務キャッシュ・フローは15億4,400万円の支出となりました。短期借入金・長期借入金がネットで5億円の返済、そして配当金の支払い4億円などにより、支出となりました。
設備投資額・減価償却費・研究開発費
設備投資額・減価償却費・研究開発費の実績についてご説明いたします。設備投資額は、経常的なものが主であり、合計が16億3,300万円。減価償却費は合計が32億5,600万円。研究開発費は合計が20億5,700万円。前期から大きな増減はございませんでした。
連結損益計算書/通期予想
2019年12月期の通期業績予想についてご説明いたします。2019年の通期予想は、2018年の構造改革の影響などにより減収となりますが、利益面は改善する見込みです。2019年度の売上高は441億円、営業利益は20億円、経常利益は26億円、親会社株主に帰属する当期純利益は15億円を見込んでおります。
冒頭にご説明しましたとおり、選択定年優遇制度拡充による割増退職金などを計上いたしますが、投資有価証券などの売却により、最終利益は増益の見込みでございます。
連結損益計算書/セグメント別予想
セグメント別の予想でございますが、増減の大きいセグメントについてご説明申し上げます。①の繊維事業で、1億5,900万円の減収となりますが、2億1,400万円の利益改善を見込んでおります。これは、2018年の補整下着事業の撤退により減収を見込みますが、物流・生産体制の改善により利益改善を見込むものであります。
②の「その他」では、6億5,500万円の減収となりますが、1億8,800万円の利益改善を見込んでおります。これは、スライドに記載の3事業からの撤退によるものであります。
③の機械関連事業では、7億4,800万円の増収、1億5,600万円の利益改善を見込んでおります。これは、前期からずれ込んだ納品分、及び一般消防車の採算性改善により増益を見込むものであります。
④の医薬品事業では、2億7,500万円の減収となりますが、ほぼ前期並みの利益水準を見込んでおります。これは、奇数年の薬価改定の影響を受けることとなりますが、コスト削減などにより、利益は横ばいを見込むものであります。
設備投資額・減価償却費・研究開発費予想
設備投資額・減価償却費・研究開発費の予想についてご説明いたします。設備投資額は、繊維事業のうち、機能性繊維で製造工場の耐震補強工事を実施予定であり、合計が27億円です。減価償却費は合計が31億円。研究開発費は合計が20億6,000万円の見込みであります。
(1)構造改革2年間(2017-2018)のまとめ①
次に、2017年度を初年度とする、中期経営計画「カタクラ2021」の進捗状況についてご説明いたします。中期経営計画の進捗状況のご説明にあたり、前半2年間の構造改革の取り組みの結果について総括いたします。
まず、体制などの見直しでございます。2017年11月に指名・報酬諮問委員会を設置しました。加えて、冒頭にも説明いたしましたが、社外取締役を2名から3名として、ガバナンスの強化を図っております。ポンチ絵を入れておりますが、7名中3名を社外取締役が占める体制としております。
次に、8月にも説明済みの部分ですが、地方の低採算物件につきましては適宜売却を進め、不動産ポートフォリオの整理を進めております。また、保有意義が乏しいと判断した政策保有株式を段階的に売却しており、今後も事業運営上の必要性などを総合的に勘案し、整理を検討してまいります。
(1)構造改革2年間(2017-2018)のまとめ②
次に事業の一部撤退などについてですが、前段でもご説明のとおり、繊維事業及びライフソリューション事業から、スライドに記載の4つの事業について撤退いたしました。
医薬品事業については、2017年2月に希望退職を実施しており、約2億円の特別損失を計上しましたが、最適な体制となるよう見直しを実施しております。
これらの取り組みから一定程度の効果を得られたものと考えておりますが、計画策定時からのさらなる事業環境の悪化や、注力してきた新規製商品の拡販が伸び悩んだことによりまして、残念ながら構造改革が完了したとは言えない状況にあると考えております。
冒頭でも触れましたとおり、繊維事業のうち「実用衣料」「医薬品」「機械関連」の3事業については、安定した収益基盤の確立と成長事業への転換が完了していないと判断し、構造改革を1年継続することを決定いたしました。
本年以降も一部の不採算事業については縮小・撤退を検討し、不動産事業などの成長事業へ経営資源を振り向けられるよう取り組んでまいります。また、その判断においては、収益性以外にも資産効率性なども意識し、進めてまいります。
(2)業績の推移①
2021年の目標数値に対しまして、現状の見込みでは売上高は大幅に乖離しており、営業利益は不動産が順調に推移しておりますが、不採算の部門も残る状況となっております。
(2)業績の推移②
構造改革の2年間の取り組みによる成果についてご説明いたします。グラフの左側が2016年の営業利益で14億8,600万円。右側が2019年の予想で20億円です。約5億円増益となっておりますが、グラフにセグメント別に増減を入れましたとおり、セグメントごとにばらつきが出ています。
まず不動産事業については、約5億円と順調な増益となりました。その他・繊維事業については、撤退効果もあり、それぞれ4億円・3億円の利益改善となりました。医薬品事業は、2018、2019年の薬価改定の影響を受けますが、コスト削減もあり、利益水準を維持している状態であります。
機械関連事業は、消防車の利益率が悪化し、構造的な課題が残る状況でございます。また、全社費用である調整額では、退職給付費用の増加により、減益となりました。
(3)今後の方向性(2019以降)~構造改革を1年継続~
構造改革の推進にあたっては、その企画・立案・推進を担う専任部署である「構造改革推進室」を2月に新設いたしました。
方針としては、事業環境の悪化などにより、安定した収益基盤の確立に至っていない事業については、ビジネスモデルの転換とさらなる収益改善に取り組み、2020年度での黒字化が見込めない事業につきましては、本年度中に事業規模の大幅な縮小、または撤退を検討します。
医薬品事業については、国による医療費抑制策や消費税増税に伴う薬価改定の影響などにより、想定よりも厳しい事業環境下におります。今後、インライセンスや承継によるさらなる製品ラインナップの拡充、諸経費・研究開発費の効率的支出や人員体制の適正化に取り組んでまいります。
繊維事業における実用衣料分野については、業界環境の厳しさと新商品の浸透遅れから、さらなる抜本的な収益改善を図ってまいります。具体的には、事業規模の縮小を含めた商品カテゴリの見極めと、物流費・生産コスト削減に取り組んでまいります。
機械関連事業の大半を占める消防車については、これまでの大型受注が一巡し、一般消防車の利益率改善を含めた、収益構造の改革が急務であります。採算性を重視した営業体制の再構築に加え、生産計画の精度を高めることにより生産性を向上させ、早期の採算性改善を図ってまいります。
売上のボリュームは大きくありませんが、苦戦している受託加工・環境機器・農業用機械についても、事業規模の縮小を含めた事業再構築やさらなる経費削減に取り組むことで、安定した収益構造への転換を図ってまいります。
(3)今後の方向性(2019以降)~成長分野~
次に成長分野でございます。不動産事業につきましては、冒頭にも触れましたとおり、3月1日付けで組織再編を実施し、従来、運営と開発に分かれた組織を一体化いたします。中核事業であるさいたま新都心駅前社有地開発においては、エリア全体を対象に第三期開発を検討してまいります。
繊維事業における機能性繊維については、製造工場のインフラを整備するとともに、新たな高機能素材の開発と耐熱性繊維の用途開発を進めてまいります。
ライフソリューション事業については、グループ内における商品・サービスの市場競争力や独自性の高い事業、交配専用みつばちなどの農業関連製品、高付加価値野菜などの食品や植物とペットの専門店などをライフソリューション事業部として束ね、集約しました。今後は業務提携やM&Aなどの外部リソースの活用も含めた事業拡大を図ってまいります。
(参考)さいたま新都心まちづくり
この画像は、従前からお見せしております、さいたま新都心駅前社有地周辺の航空写真でございます。直近では、大型マンションや公共インフラなどが整備されつつあり、駅反対側の施設と相まって、多様な機能の集積が継続しております。
先ほど申し上げました第三期開発は、「コクーンシティ」として運営しておりますが、スライド右半分にあります黄色い枠の社有地14万7,000平米の中を対象に、最適地の選定も含めて開発計画を検討しております。
(4)ESGへの取り組み
最後に、ESGの取り組みを2つご紹介いたします。1つ目は、地権者、周辺企業、それから行政で構成される「さいたま新都心エリアマネジメント検討会」により、公共空間の賑わいを演出するため、パブリックライフフェスを開催いたしました。左側の画像でございます。
2つ目は、コクーンシティ内に企業主導型保育園を開園し、提携企業、地域住民の方にご利用いただいております。これらの取り組みを継続することで、地域との共生を深めるとともに、事業成長のベースとなるよう推進してまいります。
株主還元
株主還元についてご説明いたします。当社は、株主のみなさまへの利益還元を経営上の重要な政策の1つに位置付けております。利益の配分につきましては、安定配当の実施を基本とし、業績や今後の事業展開、内部留保の水準及び配当性向などを総合的に勘案の上、配当を行うこととしております。
2018年度の配当については、1株につき12円の期末配当といたしました。2019年度についても、安定配当の実施を基本として、1株につき12円の配当を予定しております。今後も安定配当を基軸に、そして、より私どもの経営実態が株価に反映され、株主のみなさまにもお喜びいただける、ご満足いただけるような片倉グループになっていきたいと考えております。
以上をもちまして、ご説明を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。