2026年の新しい年が始まり、寒さも本格的になってきました。来月2月13日は年金の支給日ですが、「年金だけで月30万円もらえる人って、どれくらいいるんだろう?」と考えたことがある人もいるかもしれません。

筆者は現役のFP(ファイナンシャルプランナー)として、多くの方から家計や老後の資金相談を受けてきましたが、年金は常に関心の高いテーマです。特に、2カ月に一度支給される公的年金について、具体的な金額のイメージが湧かない方も少なくありません。

今回は、厚生労働省年金局の最新統計をもとに、厚生年金の受給額の分布や平均額との違いや、多くの人が抱える年金制度のよくある勘違いについて分かりやすく解説します。

1. 「年金だけで月30万円は夢のまた夢?」厚生年金の支給額、月30万円以上は1%未満の現実。

今のシニア世代が実際に受け取っている年金額を見てみましょう。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(老齢基礎年金を含む)の男女全体の平均月額は15万289円です。

では、受給額の分布はどうなっているのでしょうか。

1.1 厚生年金の受給額ごとの割合

厚生年金の受給額1/6

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

この結果から、一度の支給で60万円(月額30万円)以上を受給している人は、全体の0.12%とごく少数であることが分かります。平均額が15万円台であることをふまえると、月30万円以上の年金は「一部の人に限られる水準」といえるでしょう。

2. 【現役FPが明かす】年金の勘違い①「年金は元が取れない」ってホント?

公的年金は、老後の生活を支える老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金といった保障も含む社会保険制度です。保険料と国庫負担によって支えられ、世代間で支え合う仕組みになっています。

世代と世代の支えあい2/6

世代と世代の支えあい

出所:日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」

また、公的年金には所得再分配機能があり、現役時代の賃金差ほど、年金額の差が大きくならないよう調整されています。

公的年金の所得再分配機能3/6

公的年金の所得再分配機能

出所:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料①」

そのため、「支払った保険料と受け取る金額を単純に比べて元が取れるかどうか」という損得勘定だけで判断するのは、制度の本質を見誤る可能性があります。公的年金は、貯蓄というよりも、一生涯受け取れる「終身保障」という『保険』の性質が強いものです。予期せぬ長生きや、障害、一家の支え手を亡くした際のリスクに対する『保険』ととらえることで、将来の備えとしての価値をより正しく理解できるはずです。

3. 【現役FPが明かす】年金の勘違い②「年金制度は破綻する」ってホント?

日本の公的年金には、給付水準を自動調整するマクロ経済スライドが導入されています。これにより、人口構造や平均寿命の変化に応じて調整を行い、長期的な財政の持続可能性を確保しています。

また、賃金の上昇や就業者の増加といった経済成長は、年金財政の安定と密接に結びついています。制度は「破綻するかどうか」ではなく、「どう維持されているか」を理解することが大切です。

4. 【現役FPが明かす】年金の勘違い③「将来、年金保険料はもっと上がる」ってホント?

少子高齢化が進む中で、「将来の負担が増えるのでは」と不安に感じる方もいるでしょう。しかし実際には、女性や高齢者の就業が進み、年金制度を支える働く人の数は想定より増加しています。

この影響で年金財政は改善し、積立金残高は予測を約70兆円上回る見通しとなりました。これは「将来の年金額が大幅に増える」ことを意味するものではありませんが、年金制度の持続可能性(将来にわたって制度を維持できる力)を大きく高める好材料ともいえます。

厚生年金の「保険料率」は2017年を上限(18.3%)としてすでに固定されており、現役世代の負担が際限なく増えない仕組みが整っています。 また、自営業者などが支払う国民年金保険料も、賃金や物価の変動に応じた調整はありますが、少子高齢化を理由とした際限のない引き上げにはブレーキがかかっています。

こうして現役世代の負担を抑えつつ、運用益や積立金を活用して制度全体の「土台」が強化されているのです。

5. 年金の正しい「知識」で将来設計を

今回は、厚生年金の支給額の実態と、年金制度に関するよくある3つの誤解について解説しました。厚生労働省のデータによると、厚生年金の平均月額は約15万円で、月30万円以上を受け取る人は全体の0.12%とごくわずかです。

また、「制度が破綻する」「保険料が上がり続ける」「元が取れない」といった不安の声も聞かれますが、実際には制度を維持するための仕組みが整っています。公的年金は、老後の生活保障だけでなく、万が一の事態に備える社会保険としての役割も担っています。

年金の正しい知識を持つことは、ご自身の将来のライフプランを冷静に考える第一歩になります。この機会に、今後の収入や暮らしについて、改めて見直してみてはいかがでしょうか。

※この記事は再編集記事です。

参考資料

村岸 理美