「老後、ひとりで生活できるのか?」そう不安を感じる人は少なくないでしょう。

現役世代の方は「年金を月20万円以上はほしい」と感じるかもしれません。しかし、現代は国民年金・厚生年金ともに平均月額が月20万円を下回っています。

将来の年金額は現役時代の加入状況により決まるもの。では、厚生年金を月20万円受給するにはどれくらいの年収が必要なのでしょうか。

1. 日本の平均年収は478万円

まずは日本の平均年収を確認しましょう。

2025年9月26日に公表された国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の全体の平均年収は478万円です。

平均年収を男女別にみると男性587万円(対前年比3.2%増)、女性333万円(同 5.5%増)となっており、伸び率は女性の方が多くなっています。

雇用形態別の平均年収と、給与所得者数の対前年比の伸び率は以下の通り。

1.1 正社員(正職員)の平均年収・給与所得者数の対前年比の伸び率

  • 全体:545万円(同 2.8%増)・2.3%
  • 男性:609万円(同 2.5%増)・1.4%
  • 女性:430万円(同 4.1%増)・4.0%

平均年収については、正社員以外と比べると正社員の方が伸び率は高くなっています。また男性と女性を比べると、女性の方が伸び率が高いことがわかります。

女性の正社員数の伸び率をみると4.0%と高くなっています。

1.2 正社員(正職員)以外 の平均年収・給与所得者数の対前年比の伸び率

  • 全体:206万円(同 2.2%増)・▲3.3%
  • 男性:271万円(同 1.0%増)・▲2.6%
  • 女性:174万円(同 3.0%増)・▲3.6%

正社員(正職員)以外 となると全体の平均は206万円でした。

2. 年金の仕組みとは?

日本の公的年金制度は「2階建て」2/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

次に年金の仕組みを確認します。

日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」をベースとし、会社員や公務員などが「厚生年金」に上乗せ加入する二階建て構造です。

2.1 1階部分:国民年金(基礎年金)

  • 誰が加入する?:原則として「国内在住の20歳以上から60歳未満」全員
  • 保険料はいくら?:全員一律(2025年度月額 1万7510円)
  • 老後の受給額はいくら?:全期間(480カ月)納付すれば満額(2025年度月額 6万9308円)
  • 被保険者区分は?:第1号~第3号の3区分(※)

国民年金の被保険者区分

  • 第1号被保険者:農業者・自営業者・学生・無職の人など
  • 第2号被保険者:厚生年金の加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者

2.2 2階部分:厚生年金

  • 誰が加入する?:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料はいくら?収入に応じて決まり、給与からの天引きで納付(保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算)
  • 老後の受給額はいくら?:加入期間や納めた保険料により個人差あり
  • 被保険者区分は?:第1号~第4号の4区分

厚生年金の被保険者区分

  • 第1号:第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人
  • 第2号:国家公務員共済組合の組合員
  • 第3号:地方公務員共済組合の組合員
  • 第4号:私立学校教職員共済制度の加入者

3. 厚生年金と国民年金の平均年金月額はいくら?

では、年金の平均額はいくらでしょうか。

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、公的年金(厚生年金・国民年金)の平均年金月額、および年金月額分布を見ていきます。

厚生年金・国民年金の平均月額(2024年度末現在)3/4

厚生年金・国民年金の平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

3.1 厚生年金:平均年金月額

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

※厚生年金の月額には国民年金の月額部分が含まれています。また、ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。

3.2 国民年金:平均年金月額

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金の平均月額は、男性は6万円台・女性は5万円台にとどまります。これは、保険料が全員一律となる国民年金の仕組み上、受給額に大きな差が出にくいことが影響しています。

2025年度の国民年金の満額(1人分)が月額6万9308円です。国民年金のみで年間240万円(月額20万円)超の年金収入を確保することは現実的ではないでしょう。

一方、厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給されます。さらに、加入月数とその期間の収入に応じて保険料と受給額が変動するしくみです。そのため、国民年金と比べて年金額に個人差が出やすいのが特徴です。

厚生年金の平均月額は男女全体で15万289円ですが、男性は16万9967円、女性は11万1413円と、男女間でも大きな差が見られます。

4. 厚生年金「ひとりで月20万円以上の人」は何パーセント?

次に厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額分布を見てみましょう。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数4/4

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

4.1 厚生年金:受給額ごとの人数

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

公的年金収入が「月額20万円以上」に達しているのは、厚生年金受給権者のうちわずか18.8%にとどまります。

8割以上の人がひと月20万円未満となっているのが実情です。年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで安定した生活を送るためには、自助努力による備えが欠かせません。

なお、この数字は、あくまで厚生年金を受給している人のなかでの割合です。国民年金のみを受給している方々も含めて全体を見渡すと、年金月額が「月額20万円以上」となる人の割合は、さらに低くなると考えられます。

5. 「平均年収」はいくらあれば「年金月20万円以上」を超えられるか試算

では、平均年収がいくらあれば年金月額20万円以上を達成できるのでしょうか。

厚生年金の受給額は「2003年3月以前」と「2003年4月以降」で以下のように計算式が異なります。

  • 2003年3月以前の加入期間:平均標準報酬月額(※) ×(7.125/1000)× 2003年3月以前の加入月数
  • 2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額 ×(5.481/1000)× 2003年4月以降の加入月数

※平均標準報酬月額:勤務先から支給される月給の平均額で、月給と賞与を合わせて12で割った金額

上記をもとに以下の条件で試算を行いましょう。

5.1 試算条件

  • 加入時期:2003年4月以降に加入
  • 国民年金受給額(年間の満額):83万1700円
  • 厚生年金加入期間:40年間

試算は下記のとおりです。

  • 240万円(厚生年金年額)ー83万1700円(国民年金年額:満額)=156万8300円(厚生年金部分)
  • 平均標準報酬額×5.481/1000×480カ月(40年間)=156万8300円(1年間の国民年金を差し引いた厚生年金の受給額)
    • 平均標準報酬額=約60万円

上記の試算によれば、40年間、年収だと約720万円で月20万円を受け取れる結果となりました。

6. まとめにかえて

今回は平均額やシミュレーション結果をみてきましたが、実際には個人差が大きいもの。年収は年齢によっても変わりますし、転職をされるなどで変わる方もいるでしょう。

まずはねんきんネットやねんきん定期便で自身の年金見込み額や年金記録などを確認することからはじめましょう。

現役時代のうちに公的年金を増やす対策をすることもできますし、また私的年金や貯蓄で備えることもできます。

新NISAやiDeCoといった制度も老後資金準備に利用できますので、まずは情報収集から始めてみましょう。

参考資料