正論は「言えばわかってもらえるはず、だって正論なのだから」と思うもの。しかしいくら論理的に説明しても、分かってもらえないことは少なくありません。そればかりか、そんなつもりはなかったのに相手を傷つけてしまうなんてことも。

かくいう筆者も、「正論が全て通じるわけじゃない」「正論を伝えるときには細心の注意を」と考えていたものの、本当に理解するまでには時間がかかりました。

「正論を言えばわかってもらえる」という期待を捨てるためには、ある程度場数を踏む必要があるのでしょう。今回は結婚・育児に着目して、正論を考えるときに注意したいポイントをご紹介します。

環境と優先順位によって異なる正論

結婚すると、全く違った価値観をもつ2人が一緒に生活することになります。結婚して数年間は、この価値観を埋めるのに苦労するでしょう。つい「どちらが正しいか」という言い合いをしてしまいがちですが、どちらも正しい場合が多いものです。

たとえば夫の母親が専業主婦で、「1日の中で朝食が一番大切。日本人は朝から米・魚・みそ汁が当たり前」という価値観で育ってきたとしましょう。

一方、妻側の両親は夫婦共働きで朝は忙しく、朝は「パン・卵・サラダやフルーツを食べれば大丈夫」という考えで育ちました。

この場合、どちらが正解ということはありません。朝食を大切にし、時間に余裕のある夫の家族にとっては、ご飯が正論。また、仕事で忙しく時間に余裕がない妻の家族にとっては、パンが正論なのです。

このように正論は環境によっても、何を優先順位にするかによっても異なることを覚えておきたいものです。

産後の生活で「正しいこと」はケースバイケース

産後の夫婦関係についても、筆者の経験をご紹介しましょう。以前独身の友人から、「子どもが生まれても、夫が子育てに協力するようサポートしたり、お世話してあげたり、ゆっくり夫婦で会話する時間を作ればいいんだよ」というアドバイスをもらいました。

正論ではありますが、産後は自分の体もあちこち痛く、初めての子育てに精いっぱい。夜は1~2時間おきの授乳と寝不足で、心身ともに余裕ゼロ。1日1日を乗り切るのに精いっぱいで、1分でも寝れる時間があれば眠りたいため、育児にあまり興味がなく、大人である夫のお世話をする余裕はありませんでした。

当時を振り返り、もう一度同じことを繰り返しても、やはり友人の正論通りにはできないでしょう。初めての育児、核家族、ワンオペ育児の中、当時は当時なりにできることを100%やり切りましたし、あれ以上のことはできません。

周囲に聞いてみても、産後は夫のお世話までできないという人が多数。一方で、夫が家事育児に協力的だったり、夫婦ラブラブという方もいます。ケースによって異なる部分もあるでしょう。

他にも「昼間はパジャマでいてはいけない」「家族そろってご飯を食べる」などの正論があると思いますが、産後は難しいところ。人生には正論通りにするのが難しい時期もあるものなのです。

得意・不得意と心身のキャパシティ

育児・家事・仕事・夫婦関係については、その人の得意・不得意と心身のキャパシティに大きく左右されることを考えておくべきでしょう。