とかく世の中は「子育てできることは幸せ」と結論付けたがる傾向にあります。それはそれで間違いではありません。でも、「幸せ」ってもっと多角的に考えるべきものなのではないでしょうか?

確かに子どもがいることで得られる幸せはたくさんある。でも、その一方で子どもがいるからこそ犠牲にしなければいけない、子どもがいるから諦めなければいけないこともたくさんあるはず。「愛する子どもがいる幸せ」という感情はベースにあります。でも、常にフラットな感情でなんていられないのですから、四六時中「幸せ」なんて思えるはずありません。

たとえば本当に満ち足りた気持ちのときに「ママになるって幸せ」という文章を読めば「ほんとその通り!」と思えるでしょうし「今の母親は恵まれている」という文言を聞けば、「そうだなぁ。当り前に感謝しなきゃなぁ」って素直に受け取れる。

しかし、心に余裕のないときに、そんな言葉を目にしたら?

「確かに周りから見れば幸せかもしれないけれど、でも、悩みだってたくさんあるのに!」と思うし、「昔の方が大変って言われても、今は今で昔にはなかった大変さがあるはず!」って反発したくなります。でも、そんなこと言ったらますます風当たりが強くなるから、グッと言葉を飲みこんで「そうです、私は幸せです」と答えるしかない。モヤモヤは蓄積されていくばかり。母親とはなんと窮屈なのでしょう。

とにかく少しでも愚痴を言ったら、「でも、あなたが望んだことでしょう」「恵まれている、ってちゃんと認識しなさい」酷いときには「そんな風に思っている母親が、虐待とかするんだろうね」なんて心にもない言葉を言われる。

「母は強し」という言葉は、子どもを守るために発揮される強さのことを言うのであって、自分の心に芽生えたストレスを自然に解消できる術を持つことや、第三者から発せられた心ない言葉にも傷つかない鋼のメンタルを指して言っているわけではありません。

もし、あなたが子育てをしていて「幸せ」だと思えない瞬間があっても、「幸せ」と答えながら心の中がモヤモヤしていても、決してそれを恥じる必要はありません。

大切なのは、「今、私は幸せじゃない。じゃあ、幸せになるためにどうしようか?」と考えることだと思います。

「幸せ」かどうかはあなたが決めていい

母親として充実した毎日に巣食う心のモヤモヤ。それは、「母親とは幸せなものである」と他人に決めつけられてしまうことが原因なのではないでしょうか。

常に「私は幸せなんだ」と思いこむ必要はありません。「幸せじゃないな」と思ったらそれを素直に認めて、「どうしたら幸せになれるかな」を考えてみてもいいと思います。そしてもう一つ、「子どもがいることで感じる幸せ」も確かにあるのも事実。ストレスがたまってしまい、その事実を忘れてしまうことだけはないように…自分を大切にしてあげてください。

大中 千景