何万円も払ってフランス料理を食べるよりも、300円(値上げ後は380円)の吉野家の方がコスパは高いという主張です。

値段は100倍になっても、味の良さはきっと100倍にはならないので、これは一見、正しそうですね。フランス料理も確かにうまいけれども、吉野家もそれなりにうまいじゃないかと。だからコスパが良いと。

実はこれが、コスパでものごとを考える限界を示していると思います。

結論を言ってしまうと、コスト(費用)とパフォーマンス(効果)は実は比例しないんです。そこには、限界効用逓減(ていげん)の法則が働くからです。

限界効用の逓減

限界効用とは、「通常、ある財の消費量の増大と共に、その効用の総量も増加するが、その財一単位当たりの効用の増加量が次第に減っていく(=限界効用逓減の法則)、その最終単位による効用の増加量」のことです。

ちょっと何を言っているのかわかりませんよね。

専門用語を使わずに言えば、「みかんを1個貰ったら嬉しいし、1個よりは2個の方が嬉しいけれども、1個目の時の嬉しさほどには、2個目のみかんは嬉しくない」ということです。

ちょっとずつ、喜びが減るんです。10個目とかほとんど、何も感じないですよね。マイナスではないですけど、喜びはゼロに近い。効用の増加量が逓減しているんです。

それで、同じ1個なのでまあ厳密には違うのですが、これと同じことが高級品の消費にも言えると考えられます。

吉野屋の牛丼の2倍の美味しさを得ようと思えば、お金は3倍・4倍とかかってしまいます。そこは比例しないんです。算数が得意な人には効用は二次曲線を描く、でご理解いただけるかもしれません。

コスパでは高額商品を評価できない

従って、コスパで評価すると「安かろう、そこそこ良かろう」のモノが常に勝ってしまいます。高額商品は全て、コスパが悪いことになります。

実は世の中は、そのようにできています。最初から、単純に効果を費用で割ってはいけないんですよ。

なので、コスパで評価して良いのはあくまで価格帯が近いもの同士だけです。

3千円と3千500円の居酒屋で料理が見劣りしないなら、前者の方がコスパが良いというのはあり得ます。高級フランス料理の店と比べるには、そもそもコスパという指標を使うのは適切ではありません。

ということで、不毛なコスパ論争には終止符を打ちましょう。そして、結婚も高級フランス料理も、一度は試してみてはいかがでしょうか。

その上でやはり、「あんなもん、割に合わねえよ!」という持論に達するのであれば、それは尊重されるべき見識になると思います。

それでは、また。フラスコ代表、安田でした。

安田 修