この記事の読みどころ
11月11日午前9時35分ごろ、MRJが愛知県営名古屋空港を離陸、約1時間半後に無事着陸しました。
日本製の旅客機が初飛行するのは、戦後初のプロペラ機「YS11」の1962年以来、実に53年ぶりのことです。
三菱重工業の短期業績へのプラス影響はないものの、完成機の開発生産による様々なマクロ経済への波及効果(雇用、生産技術、材料技術など)を考慮すると、ポジティブなニュースとして捉えられます。
度重なる遅れに「飛ぶ飛ぶ詐欺」の声もあったが
三菱航空機(出資比率:三菱重工業64%、三菱商事10%、トヨタ自動車10%、他7社)と三菱重工業が進める「MRJ」(三菱リージョナルジェット)が11日午前、無事初飛行に成功しました。
MRJは日本で初めての小型ジェット旅客機で、日本製の旅客機が初飛行するのはプロペラ機の「YS11」の1962年以来、実に53年ぶりのことです。
MRJの事業化準備は2007年にスタートしましたが、ここまでの道のりは平たんではありませんでした。
2008年に正式に事業化を決定した時点では、2011年に初飛行、2013年に納入を開始する予定でした。しかし、その後遅れが生じ、機体の初公開は2014年10月にずれ込みました。
初飛行も当初は今年4~6月の予定でしたが、9~10月に延期され、さらに11月9日の週に延期されて、ようやく本日の実施に至りました。
会社側は、遅れの理由を安全性や完成度を最優先したためと説明してきましたが、度重なる遅れにより、「何か重大な問題があるのではないか」、「飛ぶ飛ぶ詐欺ではないか」など、不安視や揶揄する声がありました。
しかし、今日の初飛行のニュースで、そうした懸念は一気に消え去りました。
三菱重工業の業績への影響は?
初飛行はやや遅れましたが、2017年4~6月に予定している全日空向けへの引き渡し計画に変更はなく、すでに国内外の航空会社から400機超を受注済みです。
ちなみに、MRJは座席数が70~90席の中距離小型ジェット機です。このため、競合はボーイングやエアバスなどの大型ジェット機メーカーではなく、ボンバルディア(カナダ)やエンブラエル(ブラジル)に限定されます。
三菱重工業は、2018年3月期に売上高5兆円(2015年3月期実績3.99兆円)、営業利益4,500億円(同2,961億円)、純利益2,000億円(1,104億円)、ROEを10%(同6.5%)とする意欲的な中期計画(2015事業計画)を発表していますが、この計画はMRJへの先行投資を含んでいます。
2017年の初納入後も、黒字化はさらに先になると見られるため、今回の初飛行の成功によっても今後数年間の業績見通しが変化することはありません。
MRJがなければ、さらに利益の上乗せも期待できるのに、という冷めた見方もできるでしょう。
それでも、2020年以降の収益拡大ポテンシャルや、完成機の開発生産による様々なマクロ経済への波及効果(雇用、生産技術、材料技術など)を考慮すると、今回の初飛行のニュースは、三菱重工業だけではなく、日本の産業界にとってポジティブなニュースと捉えられると思います。
また、大きな夢が持てる新規事業に挑みながら、ROEも改善していくという、三菱重工業の経営姿勢にも注目したいと思います。
【2015年11月11日 投信1編集部】
■参考記事■
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LIMO編集部