この記事の読みどころ

10月29日(木)8:50発表予定の鉱工業指数に注目。

9月の鉱工業生産指数は、市場予想の-0.6%(前月比)を上回るかどうかをチェック。

鉱工業指数発表翌日の展望レポートにも注目。

10月29日(木)8:50発表予定の鉱工業指数の動向に注目

10月29日(木)8:50発表予定の鉱工業指数は、日本の株式市場全体に影響を及ぼす可能性がある指標として注目です。特に、セクター別では輸送用機器(自動車)、鉄鋼、機械の株価のボラティリティが短期的に高まる傾向にあります。

鉱工業指数は、 “鉱工業”、具体的には鉱業と製造業の大部分の活動を示す指数です。国内全体の経済活動を捉えたものではありませんが、鉱業と製造業の生産・出荷・在庫という、景況感を敏感に反映する部分にフォーカスを当てた指数であることから、株式市場での注目度はとても高いものです。

今回の生産指数は、市場予想の-0.6%(前月比)を上回るかどうかをチェック

生産・出荷・在庫の中でも、特に注目したいのは鉱工業生産指数です。

前回、8月の生産指数は、前月比-0.5%と2か月連続のマイナスとなり、市場予想の+1.0%を下回る内容となりました。

また、生産実績のみならず、出荷とのバランスで捉えた在庫水準を示す在庫率指数(在庫/出荷)が、2011年5月以来の水準まで上昇しました。これは、企業の抱える在庫負担が、東日本大震災直後の水準まで上昇したことを意味します。

9月30日の同指数発表後、株式市場全体はプラスで終えたものの、これは、前日(9月29日)の日本株暴落(日経平均株価-714円、TOPIX-63.15pt)からの小反発に過ぎず、市場には失望感が広がりました。

こうした中、9月の生産指数が市場予想の-0.6%を上回るかどうかが注目されています。

10月30日の日銀の展望レポートにも注目

日銀は、10月30日(金)の日銀金融政策決定会合後に、半年に一度の経済・物価情勢レポート(展望レポート)を公表する予定です。同レポートにおける注目点は、成長率・物価シナリオがともに下方修正されるか否かです。

10月29日の鉱工業指数、10月30日の展望レポートで、日銀が今後追加緩和に動くかどうか、見えてくる可能性があります。

生産指数と在庫率指数の推移
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出所:SPEEDAをもとに筆者作成

【参考情報】鉱工業指数の基礎知識

そもそも、鉱工業指数とは?

鉱工業指数とは、鉱工業(鉱業および製造業)製品の生産量・出荷量・在庫量について、基準点(現在は2010年)を100として指数化したもので、経済産業省が、速報値(原則として翌月27日前後)、確報値(原則として翌々月15日前後)に公表しています。

日本のGDPに占める鉱工業の割合は約18%(平成24年)ですが、卸売業・小売業・運輸業などの一部は鉱工業製品の流通を担っているため、これら関連産業も含めると、GDPに占める割合は約40%を占めています。

日本の製造業の海外進出に伴い、国内工場のみを調査対象にした鉱工業指数の重要性が薄れてきていることは事実ですが、株式市場で重視される経済指標であることに変わりありません。

なお、鉱工業生産の指数は以下の種類が公表されます。

  • 生産指数:国内で生産された製品量を表し、付加価値額ベースで利用されます。
  • 出荷指数:国内で出荷された製品量を表し、国内工場から出荷されたもので算出されます。
  • 在庫指数:国内の製品在庫量を表し、月平均在庫と月末在庫の2種類があります。
  • 在庫率指数:在庫数量を出荷数量で割って算出された在庫率を指数化したものです。
  • 稼働率指数:確報時に公表され、生産指数と能力指数から算出されます。
  • 生産能力指数:確報時に公表され、国内工場の生産能力を指数化したものです。
  • 製造工業生産予測指数:一部企業に対して行っている生産見込みの調査結果を指数化したもので、母集団が異なるものの、速報性があるため重要視するマーケット参加者も多いです。

※元データの確認は、経済産業省のウェブサイトをご参照ください。

岡野 辰太郎