若年層の投資の課題は何か

ところでちょっと気になることも見つかりました。購入額が増加するにつれて売却額も増えていることです。

34歳以下の売却額は、過去20年間ほとんど金額として表面に出てくるほどではありませんでした。それが2018年から増え始めています。

もちろん、購入額から売却額を差し引いた純購入額も拡大していますので、若年層に投資が広がっていることに変わりはありません。ただ、売却の増加が、もしつみたてNISAの影響だとしたら、少々頭の痛いところです。

なぜつみたてNISAで売却額が増加するのでしょうか。

例えば、2018年につみたてNISAで投資をした人が上昇相場で利益が出たとします。NISA導入以前の“10%優遇税率”のような売買優先の優遇制度の場合には、少額での儲けはそれほどうまみが出ません。

しかし、つみたてNISAのような非課税制度だと、「非課税なら(それがどれだけ小さな利益でも)まずは利益確定しておこう。また来年新しく非課税投資をすればいいから」といったマインドセットになっていないでしょうか。

筆者は断然、優遇税率方式よりも非課税口座方式の方が有用だと思っていますが、まだまだNISAには改善する点が残っているようにも思われます。

 

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史