「ヒゲで低評価は違法」判決、服装に個人の自由はどこまで許されるべき?

ビジネス、今日のひとネタ

みなさんは、職場での身だしなみには気を配っていますか? 特に接客業や教員、公務員となれば、厳しい決めごとがあることも少なくありませんね。

そうした中、大阪で「ヒゲを理由に人事評価を下げられた」として起こされた裁判が注目を浴びています。

ヒゲを巡って争われた裁判

大阪メトロ(旧大阪市営地下鉄)に勤務する男性運転士2人が、ヒゲを生やしていたことで人事評価を下げられたことは、憲法上で保証されている「人格権」を侵害していると主張し、大阪市に損害賠償を求めて訴訟を起こしました。

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この訴訟について、さる1月16日、大阪地裁は慰謝料を含む44万円の支払いを市に命じる判決を下し、原告側が勝訴する形となりました。

裁判長は「地下鉄の乗務員らに理想的な身だしなみを基準として設けることは必要性・合理性がある」と基準の妥当性を認めるものの、「基準はあくまで任意の協力を求めるもの」と指摘し、「ヒゲを生やすことは個人の自由であり、人格的な利益を侵害し、違法である」という見解を示しました。

しかし一方で、現大阪市長の吉村市長はTwitterで上訴する意思を明らかにしています。

過去にも入れ墨調査や思想調査

今回の裁判の元となった規律は、橋下徹・元大阪市長らが主導して2012年に定めた「身だしなみ基準」によって規定されたものであり、当時「市政改革」として取り組んだ政策の一部でした。

実は、「身だしなみ基準」以外にも過去、大阪市の対応が「個人情報の侵害」にあたるのではないかとして問題になった例があります。

2014年には、大阪市交通局が行った「入れ墨調査」を拒否したことから懲戒処分を下された市バス運転手らが起こした裁判例があります。1審では「個人情報保護条例に違反する」として原告側が勝訴したものの、2審では「違法性はない」として結果的に市側が勝訴する形で終わりました。

一般の声は?

今回の判決に関しては、賛否両論あるようです。容認派の意見としては

「真面目に働いてヒゲだけで人事評価されたら堪らん」
「公序良俗に反しない範囲で自由はみとめられるべき」

などの声が上がっています。

一方で、規律を容認する側の意見としては、

「自己表現でヒゲが必要なら、それが許容される職業に就けばいいのに」
「ヒゲを剃るのは身だしなみだし、社内規定ならルール破るほうがおかしい」
「規律を制定した当時の交通局に不正や風紀の乱れがあったのだから仕方ない」

などの声もあります。

そもそも裁判の意義を問う声も

また、そもそもの「裁判の意義」に関しても、

「規則無視して評価下げられて納得できないから裁判っておかしくない? 嫌なら辞めろよ」
「ヒゲなんぞで裁判なんて税金の無駄。ヒゲぐらい剃れよ」

というように、裁判そのものに対して否定的な意見が多く見受けられました。

しかし一方で、

「ヒゲ裁判、これもう少し広げてスーツやネクタイについても誰か裁判起こしてほしい」
「日本社会全体が多様性を認めようという方向に進んでいっている中で、(中略)『ルールだから』の一言で片付けられてきた問題に一石を投じる意義を、とても感じる」

など、そもそもの窮屈なマナーへの異議や、グローバル化・ダイバーシティという視点で裁判に肯定的な意見もあります。2018年末には、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法が(審議時間も少なく「問題・欠陥だらけ」だという声もありますが)成立しました。外国人労働者が今以上に増えるとみられる中で、「多様性」はより重要な視点かもしれません。

個人の自由か、規律か

ヒゲ、タトゥーや入れ墨、化粧、髪色、スーツ、ハイヒール……。特に「クールビズ」などが浸透した後は、働く人の服装も全体的により「ゆるく」なってきましたが、身だしなみの是非を巡る議論は、常に大きな賛否両論を呼ぶ話題になっています。そういった意味でも今回の判決のゆくえは興味深いところです。

今、「身だしなみの価値観」は過渡期にあるといってもいいでしょう。どこまでは個人の自由として容認すべきで、どこからは「マナーやルールに反する」として制限されるべきなのでしょうか。みなさんはどう思いますか?

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2005年創業。ビジネス書・実用書を中心とした書籍出版や企業出版、メディア・コンテンツ事業、デザイン制作事業などを手がける。

主な刊行書籍に、20万部突破の『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』をはじめ、『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』 『起業家のように企業で働く』 『すべての仕事を紙1枚にまとめてしまう整理術』 『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』 『自分を変える習慣力』 『鬼速PDCA』など。