2. 「パートで働かざるを得ない」「いまさらキャリアといわれても…」と悩む人も

パートの年収の壁撤廃により、年収の壁を気にせず働く人も増える可能性があるでしょう。

一方で、さまざまな制度変更のはざまで、自身の生き方やキャリアに悩む女性もいます。

共働きが主流の現代。

とはいえ、家庭によっては男性が長時間労働のため、家事育児のために女性が正社員として働きにくい場合もあります。

「子育て中の女性は家事育児メインで働くならパート」という考えの人や、「子どもが熱を出したら呼び出しや看病に対応するのは女性」という人もおり、女性がフルタイムで仕事をしにくいケースも。

また、一度退職してブランクがあると、正社員として再就職するのは難しい場合も多いでしょう。

少し前の調査になりますが、国立社会保障・人口問題研究所「2021 年社会保障・人口問題基本調査 <結婚と出産に関する全国調査>第 16 回出生動向基本調査結果の概要」では、子どもの出生年別にみた出産前後の妻の就業変化を公表しています。

第一子産後の妻の就業変化は以下の通り。

2.1 第一子産後の妻の就業変化

子ども出生年:就業継続(育児休業利用)・就業継続(育児休業利用なし)・出産退職・妊娠前から無職 ・不詳

  • 2000~04年:15.3%・12.2%・40.3%・26.9%・5.3%
  • 2005~09年:21.1%・10.2%・40.8%・22.3%・5.6%
  • 2010~14年:31.6%・10.8%・31.1%・21.2%・5.2%
  • 2015~19年:42.6%・11.2%・23.6%・17.4%・5.2%

※第1子が1歳以上の夫婦について、妻の出産前後の就業変化を以下に定義
・就業継続(育児休業利用)=妊娠判明時就業~育児休業取得~子ども1歳時就業
・就業継続(育児休業利用なし)=妊娠判明時就業~育児休業取得なし~子ども1歳時就業
・出産退職=妊娠判明時就業~子ども1歳時無職
・妊娠前から無職=妊娠判明時無職~

※仕事が変わっていても両時点で就業していれば「就業継続」に含む

就業継続(育児休業利用と育児休業利用なしの合計)が半分を超えたのは、子ども出生年が「2015~19年」からと最近のこと。2000~04年では27.5%、2005~09年で約3割、2010~14年で約4割となっています。

一方で、「出産退職」は2000年代は約4割、2010年代前半で約3割でした。

ブランクがあると再就職がしにくいのは女性だけではありません。また、一度退職し「子どもが少し大きくなってから再就職」と考え、子どもが2人以上となるとブランク期間が長くなる場合もあるでしょう。長いブランクにより正社員としての就職が難しかったり、諦めたりする人もいます。

これまでの環境をふまえ「今になってキャリアと言われても…」と戸惑う人もいるでしょう。

3. 年収の壁以外の変化も必要か

本来、産後の希望は専業主婦、パート、フリーランス、正社員…など人それぞれ。

時代が変わるとともに、一昔前よりは「仕事を続ける」選択肢も選びやすくはなっているでしょう。

ただ、年収106万円の壁の撤廃以外にも、変化が必要な部分は多いのが現実です。

参考資料

宮野 茉莉子