晶の彼氏・京谷は、元カノの朱里を「仕事が見つかるまで」という約束で4年間も自分のマンションに住まわせていました。そして朱里は、働きたいのにちゃんと働けないこと、そして京谷の理想とする彼女像になれなかったことへのフラストレーションを持ち続けています。

「女の敵は女」的な物語は、ドラマや映画だけでなく、テレビ番組やワイドショーでも扱われてきました。女性同士を戦わせると、愉快さを感じる人が少なくないからでしょう。特にドラマや映画の世界では、外面は良いけど意地の悪い女と、それに騙される素直で優しい主人公といったわかりやすい勧善懲悪が一つの見どころになっている作品はよくあります。

「けもなれ」がそれらと全く違うのは、晶も朱里も京谷を巡る恋敵として単純に敵対しているのではないということ。晶は本音で生きている朱里を、朱里はなんでも器用にこなす晶を、お互いを羨ましく思って複雑な感情を抱いているのです。

こうした複雑な描き方は、一見するとわかりづらさはあるかもしれません。しかし、安易に女性同士の対立構造を描かない安心感があります。京谷に別れを告げた晶、晶の会社に就職して働き始めた朱里。二人があくまで女性同士の対立によってではなく、自分との戦いによってこじらせてきた生き方を変えていこうとする姿がとても健全で、全女性に希望を与えてくれるように感じます。

おわりに

「けもなれ」を観ている人は、晶と恒星が結ばれるのかどうかという結末に関心があるでしょう。しかし筆者は二人がどうなるかより、脚本家の野木亜紀子さんが仕掛けてくれる、女性を取り巻く状況や社会への仄かなアンチテーゼが最後まで気になって仕方がありません。

最終回まであと少し。第9話は今夜12月5日放送です。

秋山 悠紀