東芝メモリと四日市工場を共同運営するウエスタンデジタル(WD)が、同工場での生産調整(ウエハー投入の削減)を公表した。NANDフラッシュの需給環境悪化を受けてのもので、新設の第6製造棟(Y6)に関しても新規設備導入の見送りを決めた。
東芝メモリとWDの共同運営
四日市工場は長年、東芝メモリと旧サンディスク(現WD)がジョイントベンチャー(JV)という形態をとって共同投資を行ってきた。建屋や付帯設備などファシリティー関係は東芝が単独で投資を行うものの、製造装置については折半出資となっていた。
WDは今回、ウエハー投入の削減を発表したが、JVパートナーである東芝メモリによれば今のところ、ウエハー投入の削減といった生産調整は計画していないとのことで、WD独自の動きと見られている。
19年出荷量を10~15%引き下げ
WDは19年度第1四半期(7~9月)業績にあわせて、四日市工場での減産を発表した。減産は19年1~3月期のウエハーアウトプットから効果が出始める見通し。具体的なウエハー投入の削減幅などについての言及はないものの、同社の19年(暦年)のGB(ギガバイト)出荷を10~15%引き下げる見通しになるという。
また、新規製造設備の導入時期の延期も決めた。現在、WDと東芝メモリの両社は四日市工場第6製造棟(Y6)の設備導入を進めており、延期の対象となるのはY6の2期分となるもようだ。
需要動向について、同社ではハイパースケーラー向けデータセンターの需要が落ち込んでいると指摘。クラウドサービスプロバイダーの設備投資は一時的に減速しており、NANDの在庫は適正水準を上回っているという。ただ、今後は減産を行うことで顧客側の在庫水準は削減されると見て、19年後半から成長が再開すると予想している。
7~9月は減収減益
WDの7~9月実績は売上高が50.28億ドル(前四半期比3%減/前年同期比2%減)、Non-GAAP営業利益が10.91億ドル(同15%減/同21%減)となった。うち、HDDは24.94億ドル(同9%減/同4%減)、NANDは25.34億ドル(同7%増/同1%減)。エクサバイトベースでの出荷成長率はHDDが前四半期比6%減、NANDが28%増となった。
なお、18年10〜12月の業績見通しは売上高42億~44億ドル(中心値は前四半期比8%減/前年同期比20%減)、Non-GAAP粗利益率は32~33%を計画する。
予想以上に早い生産調整が示すもの
NANDフラッシュの市況は年初以降、価格が値下がりを続けるなど需給が軟化傾向にあった。さらに18年下期に入ると供給各社の3D-NANDの歩留まり改善に加え、需要側ではクラウド分野を中心とする需要減に見舞われたことから、上期にも増して需給環境が悪化しそうな情勢となっている。
すでに需給悪化を受けて、NAND各社は新規製造設備の導入延期を決めていたが、ウエハー投入量の削減という手を打つタイミングは予想以上に早かった印象だ。我々が想像する以上に、年後半に向けてのNAND需給は悪化する可能性が高そうだ。
(※内容に誤りがあったため、記事を一部修正しました)
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳