「あの人は、本当にいい年の取り方をしている」というのは、これまでの人生を丸ごと肯定してもらえたような、若い頃の苦労が報われたような、嬉しいほめ言葉だと感じる方は多いかもしれません。

それでは、これから歳を重ねていく男女は、どのような年の取り方に憧れを感じているのでしょうか。

アクサ生命保険が20代~60代1,000人に対して行った調査によれば、理想的な年の取り方をしている著名人は以下のような結果となりました。

【男性】
1位・・・所ジョージさん
2位・・・タモリさん
3位・・・加山雄三さん

【女性】
1位・・・黒柳徹子さん
2位・・・吉永小百合さん
3位・・・樹木希林さん・夏木マリさん

社交的で多くの人に愛されていたり、いつも楽しそうに仕事をしてファンに元気を与えている著名人の方々が並んでいますね。

最近では、山口県の周防大島町で行方不明の2歳児を発見した78歳の尾畠春夫さんの無欲で利他的な生き方に注目が集まり、「あんな風に年をとりたい」という声がインターネット上で多く集まっていましたが、今回のランキングは、誰かの役にたちながら、イキイキと年を重ねていきたいという願望の表れなのかもしれません。

ところで、皆さんは自分の未来を何年後まで想像できますか? 10年後でしょうか、それとも30年後でしょうか。
 
同調査からは、人生がいつまで続くかわからないからこそ、長生きをすることに対して不安を感じている人が多いこともわかりました。

100歳まで生きたい人はわずか2割という結果に

かつて、「長寿を全うする」のは生き方の理想とされてきましたが、現在は100歳まで生きることが珍しいことではなくなり、「人生100年時代」という言葉が使われるようになりました。

厚生労働省の百歳高齢者表彰の発表によれば、平成29年9月1日現在の住民基本台帳に基づく100歳以上の人口は67,824人で、前年比+2,132人と増加傾向にあります。

前出の調査で「100歳まで生きたいですか?」という問いを投げかけたところ、「とてもそう思う」「そう思う」はわずか2割という結果に。78.8%は「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と回答しています。

また、4人中3人が「長生きはリスクになると思う」と回答。

自分が描いた人生設計よりもより長く生きることを「長生きリスク」と呼ぶ風潮がありますが、まさにそのリスクを案じる人が多く見受けられました。

長生きがリスクになる理由として、以下のような回答が多く集まっています。

1位・・・身体能力の低下(71.3%)
2位・・・収入の減少(70.9%)
3位・・・年金制度の破たん(62.4%)
4位・・・病気にかかる(52.4%)
5位・・・判断能力の低下(50.4%)

長生きしても健康でいられるのかわからない。認知症になったら誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない。老後資金が底をついてしまうかもしれない。年をとったことを受け入れられるかわからない。このような漠然とした不安が20代~60代を覆っていることがわかります。

とくに、団塊世代の親を持つ30代~40代は、長生きすることに悲観的な割合が他の年齢と比べてやや高くなっています。

ちなみに1935年の平均寿命は、男性が46.92歳。女性が49.63歳(厚生労働省:第20回生命表)。「この子が長生きしますように」という願いが込められた「久子」「栄子」といった名前が人気を博していました。

時が流れ、日本が長寿大国となった今、「長生きリスク」という言葉が生まれたのは皮肉なことです。核家族化が進み、世代を超えた交流が減っていくなか、同居する家族が年を取って命が尽きていく様子を見守る機会が減っています。また、高齢者への厳しい眼差しを感じて年をとることへの不安が先立っている人は少なくありません。

身近な家族以外の老後のロールモデルがないゆえに、ますます不安は高まっていきます。老いへの恐怖をどうやって和らげていくのか、お金、健康、生きがいの面から「充実した老後の過ごし方」をどうやって学んでいくのかが、人生100年時代のカギとなるかもしれません。

【参考】「人生100年時代に関する意識調査」(アクサ生命保険)

北川 和子