3. 年金から天引きされる4つのお金とは?
年金も所得の一種と見なされるため、下記のようなお金が天引きされます。
- 介護保険料
- 国民健康保険料・後期高齢者医療保険料
- 所得税
- 住民税
3.1 1.介護保険料
介護保険料は、地域や所得水準、家族状況などに応じて大きく異なります。
65歳以上で年間の年金受給額が18万円を超える場合に、天引きの対象となります。
自治体によって介護保険料の額は異なりますが、厚生労働省のデータによると、2021年から2023年にかけての65歳以上の方の1人あたりの平均月額(基準額の全国加重平均)は6014円となっています。
3.2 2.国民健康保険料 / 後期高齢者医療保険料
65歳以上~75歳未満の方は、国民健康保険料が差し引かれ、75歳以降は後期高齢者医療保険に切り替わり、健康保険料が天引きされます。
国民健康保険料も、年金収入の水準によって変動します。
参考までに、東京都新宿区の場合の国民健康保険料は下記のとおりです。
後期高齢医療保険に関する平均値は、厚生労働省から発表されています。
被保険者1人当たりの平均保険料は、全国平均で月額7082円となっており、令和4・5年度の6575円から507円(7.7%)の増加となりました。
3.3 3.所得税
所得税は前年の収入に基づいて課税され、所得の水準に応じて税率が異なる「累進課税制度」が採用されています。
そのため、年金が高い場合や他に収入がある場合は税率も上昇し、一般的な目安として、65歳未満の場合は108万円、65歳以上の場合は158万円を超えると課税対象となります。
さらに現在は、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」に基づき、復興特別所得税も天引きされています。
3.4 4.住民税
年金所得が一定の水準を超えると、所得税と同様に住民税も天引きされます。
住民税には、均等割と所得割の2種類があり、所得割は「前年の課税所得額の10%が基本」で、均等割は自治体によって異なりますが、一般的には5000円前後になることが多いです。
なお、所得が一定以下の場合や障害年金・遺族年金を受給している場合は、住民税が非課税となります。
4. FPからのアドバイス
ここまで厚生年金の平均受給額と、厚生年金から引かれるお金について見てきました。
一点注意していただきたいのは、年金を受け取る資格があっても必要な手続きを行わなければ当然支払われません。
事前に年金機構から「年金請求書」が届くので、必ず請求の手続きをしましょう。
また、年金受給額については、毎年改定が行われているため、いまと同じ水準が将来も保障されているわけではありません。
自営業やフリーランスの方々は国民年金のみとなるため、老後の生活費を見据えた場合に不安に感じられる方は多いでしょう。
公的年金に加え、iDeCoや個人年金保険などを活用した「自分年金」の準備などを含め、早めの老後資金対策スタートが必要になりそうですね。
何事も早めの準備がカギです。まずは現在の受給見込み額を把握することから始めてみるのも大きな一歩となるでしょう。
参考資料
- 国民年金基金「よくあるご質問(給付に関して)」
- 厚生労働省「令和5年度 介護納付金の算定について(報告)」
- 厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」
- 総務省「個人住民税」
- 新宿区「令和6年度 国民健康保険料 概算早見表(給与/年金のみの場合)」
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
笹村 夏来