人口減少の中、都心部への集中傾向が続く日本

7月に総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(以下、「人口動態調査」)によれば、日本の総人口は9年連続減少となる1億2,520万人でした。人口減少は今さら驚くことではありませんが、9年も連続して減少している事実に、改めて、将来の人口減少社会に危機感を持たずにはいられません。

一方で、減少傾向が続いてもまだ1億2,500万人超の人口がいることも事実です。これだけの人口がいるわけですから、そこに次々と新たな成長ビジネスが登場しても何ら不思議でありません。ちなみに、世界の国別人口ランキングで日本は第10位に該当しています。

さて、前述の「人口動態調査」では、人口の減少が続く中でも、地方都市の減少ペースが加速し、都心部へ集中する傾向が見て取れます。今回の調査で人口が増加した都道府県は、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、沖縄の6都県でしたが、出生数が死亡数を上回って増加となったのは沖縄県だけでした。

つまり、残り5都県は「転入>転出」によって増加しているのです。また、人口増加には至りませんでしたが、大阪府や福岡県などでもこうした傾向が見られます。

都心部へ人口が集中する理由は様々あると思いますが、大きな理由の1つは“仕事(働き口)がある”ということでしょう。人口が増加することで需要が拡大し、さらに働き口が増えるというサイクルに入ったとも考えられます。

これらを背景に、都心部への人口増加傾向は今後も続く可能性が高いと言えましょう。

カーシェアリングは今後有望な成長事業の1つ

こうした都心部への人口集中で注目されるビジネスが“シェアリングエコノミー”であり、その中でも、カーシェアリングは高い成長が見込める事業の1つです。

カーシェアリングとは、自動車を共同利用するシステムです。自動車を所有しないという点ではレンタカーと同じですが、カーシェアリングはレンタカーより1回の使用時間が短く、使用頻度が高いことが想定されています。簡単にザックリ言うならば、クルマを所有しなくてもクルマを利用できるシステムということでしょうか。

海外では、国土面積の小さい先進国などで普及が進み、近年では典型的な自動車社会である米国でも徐々に普及しています。

都心部でクルマを所有することは想像以上に費用がかさむ

高級消費耐久財であるクルマは、購入価格が高いだけでなく、その後の維持・保有コスト(税金、保険料、駐車場代、車検代、修理補修代、燃料コストなど)がかさみます。クルマをお持ちの方、あるいは、過去に持っていたという人ならば納得していただけるはずです。

カーシェアリングは、その運営企業の会員(主に月極め)になれば、一定額の費用(固定費と使用実績に応じた使用料)を払うことで、こうした膨大な費用を負担することなく、クルマを利用できるのです。この支払料金は、レンタカーを借りるよりも割安になることが知られています。

都心部でクルマを所有するのには想像以上に費用がかかります。特に、駐車場代は地方都市に比べて圧倒的に高くなり(ゼロが1個多くなります)、ガソリン価格もかなり割高です。さらに、地下鉄など公共交通網が充実しているため、利用頻度も低くなると見られます。

これに加えて、収入減少や今後予定されている消費増税などを勘案すると、クルマを所有する意義・モチベーションが薄れているのは確かでしょう。

こうした点からも、今後は日本でもカーシェアリングが有望と考えられますが、現時点ではどうなのでしょうか?

日本のカーシェアは直近8年間で爆発的な成長だが…

結論から言うと、カーシェアリングは急成長しています。まずは、全国のカーシェアリングの車両台数と会員数の推移を見てみましょう。

  • 2006年:118台、1,712人
  • 2010年:1,265台、15,894人
  • 2013年:8,831台、289,497人
  • 2015年:16,418台、681,147人
  • 2017年:24,458台、1,085,922人
  • 2018年:29,208台、1,320,794人

注1:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団  注2:2015年以降は毎年3月調査、それ以前は毎年1月調査

すると、以上のように急拡大しています。特に、人口減少が不可避となった2010年以降の拡大ペースが顕著であることが分かります。ちなみに、2010年からの8年間における年間平均増加率は、車両台数が約+48%増、会員数は約+74%増です。“クルマを所有するのは大変だけど、クルマは何かと便利だ”という人には、最適のシステムなのかもしれません。

足元は“普通の”大幅増加にペースダウン、今後の普及は?

一方で、ここ1~2年は、車両台数や会員数が大きく拡大しているものの、その増加ペースがやや緩やかになってきました。また、カーシェアリング事業の最大手(車両台数の約78%)である「タイムズ カー プラス」を運営するパーク24(4666)が公表する月次報告データを見ても、爆発的な伸びは一巡して“普通の”大幅増加になっています。

これは、都心部を中心とした地価高騰などにより、ステーション数の開発(増加)に苦戦しているためと推測されます。地価高騰を吸収して事業がさらに拡大するためには、カーシェアリングの認知普及を徹底させて、一層の会員数の増加が必要不可欠と言えましょう。

カーシェアリングがさらに拡大するかどうかは、今後の取り組み次第なのかもしれません。

LIMO編集部