半導体ファンドリー世界最大手の台湾TSMCは、2018年通年の売上高見通しを、従来予想の前年比10%増から1桁台後半の伸びに下方修正した。17年後半から盛り上がりを見せていた、仮想通貨マイニング向けの半導体需要が急減したことが大きく影響する。

年初時点では10~15%成長と予想

 TSMCは年初時点で、今年の売上成長率を前年比10~15%増に設定していたが、第1四半期(1~3月)決算時点で同10%増に下方修正、さらに今回の第2四半期決算発表にあわせて、再度これを引き下げた。

 修正要因として大きいのが、マイニング需要の急減だ。中国ビットメインを筆頭にマイニング用ASICの需要がここ数四半期にわたって同社の先端プロセスを牽引してきたが、ビットコインなど仮想通貨の価格下落が進んだことでマイニング需要が減退。同社も売上高見通しを下方修正せざるを得なかった。

 もっとも、TSMCもマイニング需要の継続性に対しては当初から懐疑的で、「マイニングは非常にボラティリティー(変動性)が高いビジネス」「マイニング向けにキャパシティーを増やしたりはしない」(魏晢家CEO)とコメントしており、業績へのマイナス影響が軽微であることも強調している。

7nm売上構成比は第4四半期20%以上に

 一方で、ハイエンドスマートフォン向けの需要は前回の3カ月前の予測に比べて需要に改善傾向が見られるとしている。アップルなどの主要顧客に対しては、第2四半期から最先端の7nmプロセスを用いた製品の量産を開始。第2四半期はまだ売上構成比として1%未満であるが、第3四半期ではこれが10%以上に、第4四半期には20%以上になると予測している。

 マイニング需要の急減に見舞われているものの、仮想通貨を含むHPC(High Performance Computing)部門の18年売上高は前年比で40%成長、売上高構成比としても25%にまで高まる見通しで、モバイルに次ぐ新たな事業の柱として育ってきている。HPCは仮想通貨のほか、AIやディープラーニング向けプロセッサー、GPU、ネットワークプロセッサー、FPGAなどで構成されている。一方でスマホなどのモバイル関連の構成比は17年の50%から、18年はそれを下回る水準になるとしている。

 第2四半期決算にあわせて、18年の年間設備投資の計画も見直した。従来計画では115億~120億ドルを計画していたが、今回これを100億~105億ドルへと、約15億ドル分の減額修正を行った。修正分の内訳は①先端プロセス装置の支払いが19年にずれ込むことで7億ドル、②設備投資の効率化で6億ドル、③為替変動で2億ドルとしている。

(稲葉雅巳)

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳