夫婦げんかが子どもに及ぼす悪影響は、様々なところで語られています。「大切な子どものために夫婦げんかをやめたい」と思うものの、現実は「どうしてもけんかがやめられない」と悩む夫婦も少なくないのでは。

夫婦げんかがやめられないと、「分かってくれない相手が悪い」「感情を抑えられない自分が悪い」とパートナーや自分を責めてしまいますよね。お互いを責めるよりも、視点を変えて取ってほしい行動があるのです。

余裕がなければ理性は働かない

夫婦げんかをやめようと思っていても、疲れているとすぐに感情が溢れ出ますよね。「仕事も家事も育児も全部一人でやってるのに、ソファで寝ながらスマホでゲームしている旦那に怒らないなんて無理」と思う女性もいるでしょう。「仕事で疲れて帰ってきて休みたいのに、アレコレ要求が多くてイライラしている妻とけんかしないなんて無理」と思う男性もいるでしょう。

夫婦げんかをやめるためには、「感情より理性を優位に働かせる」必要があります。理性を優先的に働かせるためには、心身ともに安定した状態を保つための環境作りが欠かせないでしょう。

現代は「共仕事・共家事・共育児」時代です。大家族から夫婦2人へと家族の人数が減った分、全てを2人でこなさなければいけませんし、苦手なこともやらなければいけません。今の時代、男女ともに疲れているといえるでしょう。「女性が家事育児を担うべき」という親世代に育てられきたこともあり、特に女性の疲れは大きいといえます。

心身ともに疲れ切った状態で「理性的な話を」というのも、「夫婦仲良くけんかせず」というのも無理があるでしょう。まずは夫婦げんかをやめるための土台作りとして、「お互いの心身の余裕を取り戻す環境作り」を具体的に考えましょう。

どうやって心身の余裕を取り戻すか

とにかく人手が足りない家庭の中で、具体的にどうやって負担を減らすのか。「仕事・家事・育児」の中でも、「仕事・育児」は減らすことができません。すぐに減らせるのは「家事」でしょう。人手の代わりに「家電を導入する、冷凍食品やお惣菜を利用する、家事の回数や物を減らす」ことは必要でしょう。

「そうは言われても食事は手作りで、洗濯物は日光に当て…」と家事にこだわりがある場合、そう思う原因を考えましょう。「単に好きだから」ならいいですが、「親がそうだったから」という場合、価値観のアップデートをお勧めします。「一世代は30年」といいますが、世代が変われば人々の生活は変わります。自分たちの生活に合った新たなライフスタイルを夫婦で相談しましょう。

また、3歳以下の乳幼児を抱えている家庭の場合、夜間授乳・夜泣き・寝ぐずりなどで慢性的に睡眠不足になる女性が多いものです。睡眠不足では脳の働きも落ちてしまいますので、なるべく休日は眠れるようにしてあげたり、大切な話は疲れを取りやすい休日を選んでしましょう。

自分の時間を取ることも大切です。育児中は時間がないものですが、朝10分早く起きたり、日中もたとえ5分であっても自分の時間を大切にして好きなことをしましょう。休日は夫婦で交互に自分の時間を取り合うのも一つです。

余裕が出ると見えてくるもの

疲れていると、頭の中は自分のことでいっぱいになります。いかに自分は正しく、いかに相手は間違っているのか、ということばかり考えてしまうでしょう。

心と体に余裕が生まれて、初めて相手のことまで見えてきます。たしかに自分も正しいけれど、「実は相手も悩んでいたんだ」「言い方がキツかったかもしれない」「自分で自分や周りを追い込みすぎた」なんてことに気付くこともあるでしょう。こう気付けるようになるのも、心身の余裕が生まれてこそです。

「仲良くしたい」の一言を

心に余裕が生まれ、相手の言葉や行動まで見えてくるようになったら、5回に1回はけんかを抑えることもできるようになるでしょう。人間すぐには変わりませんから、グンとけんかが減るということはやはり難しいものです。

けんかとなると今のことばかり考えてしまいますが、長い人生の中で考えてみることもお勧めします。自分の人生の中で、子育てができるのは今しかありません。それも乳幼児期は6年ですし、学童期、青年期…と子どもは成長していきます。

「子育て中は自分1人しんどくて苦痛だった」という思い出にしますか。それとも「子育ては大変だったけれど夫婦で頑張れた」という思い出にしたいでしょうか。後者を願うなら、まずはパートナーに「あなたと仲良くしたい」と話してみましょう。

何でもない言葉ですが、けんかしている夫婦にとっては、2人のムードを柔らかくする言葉です。これはけんか中に使うのもいいでしょう。「自分はあなたと仲良くしたい。長い人生の中でも、家族で楽しく今を過ごしていきたい」といったプラスの言葉がけは、相手の感情を動かします。

けんかをしていると、頭の中はネガティブな言葉でいっぱいですが、プラスの言葉を増やすことで心も変わっていくものです。環境作りとプラスの言葉がけで、1回でも夫婦げんかを減らしていけるよう試してみてくださいね。

宮野 茉莉子