2024年8月~10月の電気・ガス料金において、政府は支援を再開することを表明しました。
「酷暑乗り切り緊急支援」として、2024年8・9・10月使用分を値引きします。
本施策の表明時には、「低所得世帯や年金世帯への追加給付」にも言及した岸田総理。低所得者向けの給付はコロナ禍以降から続いており、今回の対象者にも注目が集まっています。
住民税非課税世帯は高齢者が多くを占めるため、昨今の物価上昇で苦しい生活を強いられているのは年金世帯が主になると考えられているのかもしれません。
本記事では、現時点で決まっている電気・ガス料金支援の全容を確認しながら、実際に年金生活に入っている「65歳以上・無職の夫婦世帯」の生活費や貯蓄額に迫ります。
1. 【2024年8月】電気・ガス料金補助が再開「酷暑乗り切り緊急支援」
暑い夏を乗り切るための緊急支援として、岸田総理は2024年6月21日の記者会見で「酷暑乗り切り緊急支援」を表明しました。
これにより、8月~10月の電気・ガス料金が一部支援されることとなります。
1.1 2024年8・9月使用分
- 電気:低圧なら4.0円/kWh、高圧なら2.0円/kWh
- 都市ガス:17.5円/㎥
1.2 2024年10月使用分
- 電気:低圧なら2.5円/kWh、高圧なら1.3円/kWh
- 都市ガス17.5円/㎥
本事業による値引きについて、特別な手続きは必要ありません。
1.3 参考)2024年5月使用分までの電気・ガス価格激変緩和対策
電気・ガス価格激変緩和対策が2024年5月使用分まで行われており、こちらも月々の値引きが行われていました。
6月からは通常の光熱費がかかるようになり、その高騰が懸念されていたのです。
今回の施策により、8月から3か月間は軽減が継続されることとなりました。
なお、第二段の対策として「年金(生活)世帯や低所得者、地方経済に焦点を絞って、思い切った検討」をするとしています。
具体的には追加の給付金で支援するとのことで、物価高で苦しい生活を送っている「低所得者世帯」に焦点が当てられていることがわかります。
年金生活になれば収入が一定となるため、物価が急激に上がればやりくりが難しくなる、という考えがあるでしょう。
では、実際に年金暮らしをしているシニアたちのお金事情について見ていきましょう。
2. 65歳以上「無職の夫婦世帯」1ヶ月の生活費はいくら?家計の収支
まずは、65歳以上「無職の夫婦世帯」の1ヶ月の生活費を見ていきます。
2024年3月に公表された総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の消費支出額は平均で25万959円になりました。
2.1 65歳以上「無職の夫婦世帯」家計の収支
実収入:24万4580円
- うち社会保障給付:21万8441円
消費支出:25万959円
- うち食料:7万2930円
- うち光熱・水道:2万2422円
- うち保健医療:1万6879円
- うち交通・通信:3万729円 など
非消費支出:3万1538円(消費支出と合わせて支出合計は28万2497円)
月の収支:▲3万7916円
収入24万4580円に対して支出28万2497円となり、合計で3万7916円の赤字となりました。
支出額が高いように感じた方が多いでしょう。おそらく、年金生活に入れば生活費はダウンサイジングされるものと考える方がほとんどではないでしょうか。
内訳をみると、光熱・水道費の合計がおよそ10万円となっています。平均値は大きな値に引っ張られる傾向にあるので、実態を表しているとはいえません。
一方で、住宅改修費や介護費用など突発的な支出が発生すれば、年金収入でまかなうのは難しく、赤字になる月が出てくるのは自然なことと考えられます。
どれだけ支出を抑えても、老後資金としてある程度の備えが必要でしょう。
「年金額次第では?」「今のシニアは実際に貯蓄をしているの?」そんな疑問を持たれた方もいると思います。
次章からはそんな年金額と貯蓄額を見ていきます。
3. 年金収入「厚生年金・国民年金」ごとに平均額はいくらか
ここからは厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金と国民年金の平均受給額を見ていきます。
年金は基本的に2ヶ月分が支給されますが、資料に合わせて月平均の金額で紹介します。
3.1 厚生年金の平均月額
公務員や会社員等が加入する厚生年金の場合、全体の平均月額は以下のとおりです(国民年金を含む)。
〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金部分を含む
3.2 国民年金の平均月額
続いて国民年金の受給額を確認しましょう。自営業やパートなどで厚生年金に加入していない方は、国民年金のみの受給となります。
〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
国民年金の平均額は5万円台となりました。
夫婦ともに国民年金のみという場合、収入は11万円程度になるでしょう。先ほどの家計収支から考えると、赤字が続く可能性が高いです。
厚生年金であれば平均が14万円台ですが、実際には個人差が大きいことに注意が必要です。
年金額に興味を持った方は、ぜひ自身の年金目安額について調べてみてください。ねんきんネットでは働き方ごとにシミュレーションすることも可能です。
年金が少ない人にとって重要になるのが貯蓄です。65歳の無職夫婦世帯では、平均で2504万円の資産を保有していることがわかりました。
4. 65歳以上「無職の夫婦世帯」の平均貯蓄額は2504万円に
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」から、65歳以上「無職の夫婦世帯」の平均貯蓄額を確認します。
65歳以上で無職の夫婦世帯の平均貯蓄額は2504万円であり、ここ数年は増加傾向にあります。
- 2018年:2233万円
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
預貯金だけで保有するのではなく、さまざまな金融商品に振り分けている様子もわかります。
- 有価証券:480万円
- 生命保険など:413万円
- 定期性預貯金:846万円
- 通貨性預貯金:754万円
- 金融機関外:11万円
これから老後資産を形成するのであれば、「年金見込額」から「老後の不足額」を算出し、さらに「どのような金融資産で」準備するのか計画することが大切です。
5. 老後のシミュレーションは綿密に
65歳以上の無職の夫婦世帯について、貯蓄・生活費・年金月額を見ていきました。
物価上昇が続く今、支出額はさらに膨らむ可能性があります。政府はこうした世帯への支援を進めるものの、給付金や助成だけで生活できるものではありません。
公的年金以外にどれだけ準備できたのかがカギとなるでしょう。
「老後のことなんてわからない」そう思うのはとても自然なことですが、シミュレーションをした人とそうでない人では、老後を迎えたときの不安に差が出るのではないでしょうか。
確かにライフプランは変更の連続ですが、一度シミュレーションをした人はその都度修正することで対応が可能です。
なんの準備もなく老後を迎えてしまえば、「足りない」となっても打つ手がない可能性もあります。できることから検討を始めていきましょう。
【編集部よりご参考】
記事内で厚生年金の平均額をご紹介しましたが、実際には個人差が大きいのが現状です。
参考までに、厚生年金保険(第1号)の受給額ごとの人数もご紹介します。
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 経済産業省資源エネルギー庁「電気・ガス価格激変緩和対策事業」
- 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」2024年6月21日
太田 彩子
