2. 厚生年金が15万円以上なら老後は安心できるの?
物価高や年金額の実質的な目減りにより、年金だけで生活するのは不安なのが現状です。
実際に総務省の「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上単身世帯の可処分所得が「11万4663円」であるのに対して平均支出は「14万5430円」であり、毎月約3万円の赤字となっています。
急な入院や住宅の改修費用などの突発的な支出もあるため、生活費には変動があるものです。
加えて、上記では住居費が持ち家を想定されているため、賃貸住まいの方は家賃の上乗せが必要である点にも注意が必要です。
厚生年金が15万円であっても、必ずしも安泰であるとはいえないのです。
3. 厚生年金「月額15万円」から天引きされるお金
厚生年金の見込額が15万円であることがわかっても、実際の振込額はもっと下がる点に注意しましょう。
公的年金からは天引きされるお金があるのです。
天引きされる金額は居住地や家族構成等によって異なりますが、ここでは年金から天引きされる代表的な4つのお金を見ていきましょう。
3.1 介護保険料
40歳から64歳までの間、介護保険料は健康保険料に含まれていますが、65歳になると単独で支払うことになります。
年金が18万円以上の場合、介護保険料は年金から天引きされるほか、介護保険料の支払いは一生続きます。
勘違いする人が多い部分ですが、万が一介護状態になった場合でも支払いは継続されますので注意が必要です。
年金受給者の場合、年間の年金受給額が18万円以上の人は年金天引きによる特別徴収、18万円以下の場合や、繰下げ待機中の場合に普通徴収となるため、天引きにはなりません。
なお、介護保険料は自治体によって異なりますが、年々増加傾向にあります。
3.2 国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料
国民健康保険や、原則として75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の保険料も、年金から天引きで支払うことになります。
「介護保険料が特別徴収になっている」など一定の条件もあるため、普通徴収(納付書や口座振替)で納めるケースもあります。その場合は天引きはありません。
3.3 個人住民税
前年中の所得に対してかかる住民税についても、年金所得が一定になれば課税され、年金天引きで納めます。
保険料とは異なり、収入が一定に満たなければ非課税となり、支払い義務が発生しないこともあります。
なお、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
3.4 所得税および復興特別所得税
一定額以上の年金にも所得税がかかります。
公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると課税されます。
また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
ただし、収入が公的年金のみの場合、65歳に満たない人は108万円以下、65歳以上の人は受給額158万円以下の場合、所得税そのものが課税されません。
また、個人住民税と同様に障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
以上の4つのお金が主に年金から天引きされるお金となります。
実際の手取り額はおよそ13万円程度となるでしょう。ただし、手取り額については個人差がありますので、あくまで目安として参考にしていただければ幸いです。
4. 年金を正しく理解して今から老後に備えよう
厚生年金15万円以上の男性の割合、さらにそこから引かれるお金について見ていきました。
老後は毎月約3万円の赤字が出ることが予想されています。
実際の老後生活では生活費以外にも、医療費や介護費用、家の修繕費用といった、突然の大きな支出にも備えておかなければいけません。
老後に向けた資産形成には、私的年金やNISA・iDeCoなどの制度を活用する方法があります。
自分にあった準備方法について、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「社会保障審議会年金部会『基礎年金の保険料拠出期間を45年に延長した場合のイメージ』」
中本 智恵