2023年12月に厚生労働省から公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2022年度末現在の年金月額は、厚生年金14万3973円、国民年金5万6316円です。
決して十分とはいえない収入で、長い老後生活を過ごすことになります。
しかし、中には「月30万円以上」を受給する人も。
現役時代の年収がどのくらいあれば、ひと月30万円以上の年金を受け取ることができるのでしょうか。
1. 公的年金の仕組み「厚生年金と国民年金」とは?
日本の公的年金は、上記のように国民年金と厚生年金の2階建てになっています。
1.1 国民年金(1階部分)
- 原則、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員に加入義務がある
- 保険料は一律
- 納付した期間に応じて将来もらえる年金額が決まる
1.2 厚生年金(2階部分)
- 公務員やサラリーマンなどが加入する
- 収入に応じた保険料を支払う(上限あり)
- 加入期間や納付額に応じて将来もらえる年金額が決まる
個人によって加入する年金や納付期間が異なるため、将来の年金受給額には個人差があります。
特に厚生年金は年収に応じた保険料を支払うため、より個人差が大きくなっています。
2. 厚生年金「月額30万円以上」受給する人の割合は何パーセント?
では、厚生年金の平均月額はいくらでしょうか。厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に見ていきましょう。
2.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:14万3973円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4878円
※国民年金部分を含む
全体は14万3973円でしたが、男女で月約6万円の差が出ました。
この差は、シニア世代が現役だった頃の、男性と女性の労働環境やワークスタイルによるものだと考えられます。
厚生年金に加入して働く年数や、その間の給与や賞与などの報酬が、老後に受給する年金額に大きく影響することがわかります。
次に、厚生年金をひとりで「月額30万円以上」受給する人は何パーセントいるのかみていきましょう。
2.2 【厚生年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
- ※国民年金部分を含む
厚生年金を「ひとりで月30万円以上」受給しているのは0.08%でした。
3. 厚生年金「月30万円以上」受給する人の現役時代の年収はいくらだった?
先述したとおり、厚生年金は、収入に応じた保険料(上限あり)を支払い、この納付額や加入期間に応じて将来もらえる年金額が決定します。
20歳から60歳未満までの40年間、厚生年金に加入して会社員として働いた場合、生涯の平均年収がどれくらいあれば「月30万円以上」の年金を受け取ることができるのか。
計算してみましょう。
まず、月30万円の年金収入を老齢基礎年金と老齢厚生年金に分解します。
2024年度の国民年金の満額である6万8000円を老齢基礎年金とすると、老齢厚生年金は23万2000円になります。
年額にすると278万4000円です。
厚生年金の計算式は以下のとおりです。
A:2003年3月以前の被保険者期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
B:2003年4月以降の被保険者期間
平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の被保険者期間の月数
老齢厚生年金額=A+B
被保険者期間によって計算方法が異なりますが、ここではB.2003年4月以降に厚生年金に40年間加入し、加入期間中は給与額が一定であったと仮定します。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×480(40年間×12カ月)=278万4000円
- 平均標準報酬額=約106万円
- 106万円×12ヶ月=1272万円
上記のとおり、月30万円の年金を受け取るには、40年間の平均年収が1272万円となります。
会社員の場合、20歳代で年収1000万円を超えるのはレアなケースだと考えられます。
年収アップを重ね、40歳代~50歳代で年収1000万円を大きく上回り、40年間の平均年収を引き上げるケースが一般的でしょう。
いずれにしても、「月30万円以上」の年金を受け取るのは容易ではないようです。
4. 国民年金の平均月額はいくら?
参考までに、国民年金の平均月額も確認しておきましょう。
4.1 国民年金(老齢基礎年金)の受給額
〈全体〉平均年金月額:5万6316円
- 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4426円
4.2 【国民年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)
- 1万円未満:6万5660人
- 1万円以上~2万円未満:27万4330人
- 2万円以上~3万円未満:88万1065人
- 3万円以上~4万円未満:266万1520人
- 4万円以上~5万円未満:465万5774人
- 5万円以上~6万円未満:824万6178人
- 6万円以上~7万円未満:1484万7491人
- 7万円以上~:178万3609人
国民年金のみでは5万6316円となりました。
厚生年金に比べると、国民年金のみで老後生活するのは難しいでしょう。
5. 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で見込額の確認を
本記事では、月30万円以上の年金を受給する人がどれくらいいるのか、そして現役時代の年収がいくらあれば月30万円以上の年金を受け取ることができるのかを確認しました。
厚生年金の年金額は現役時代の働きぶりが大きく影響するものです。
個人差があるものですので、まずはご自身の受給予定額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認しましょう。
年金の受給予定額を確認した後は、老後に向けて以下のような対策を検討してみると良いでしょう。
- 公的年金を増やす方法を考える
- 私的年金を準備する
- 預貯金を貯める
- 資産運用をする
公的年金や私的年金だけでなく、貯蓄や資産運用までさまざまな選択肢を考え、ご自身に合った老後対策を検討しましょう。
参考資料
和田 直子