なぜ現代のママの承認欲求が満たされにくくなったのでしょうか。それは家事育児が特別なものとなった環境の変化が一つの要因といえるのではないかと思います。

日本では、まるで息をするのと同じくらい「女性が育児や家事をするのは当たり前」という認識があります。そのためいくら家事育児を頑張ったところでほめられませんし、感謝の言葉もなければ、評価や報酬もありません。

たしかに昔のように、大家族で育児家事を担うなら、評価についての考え方はまた違ったかもしれません。日常生活の中で家事育児が家族それぞれに分担されていたからです。

しかし現代は、ほぼママ1人で家事育児の全てを担っています。人類の長い歴史を見ても、1人で全てを担うのはここ最近のこと。家事育児が自然なものではなく、ある意味特別なものになったともいえます。

それだけ負担はもちろん、家事育児の責任も全て1人で担い、重くなっています。それでいて評価ゼロでは、承認欲求を満たしたいとママが求めるのも不思議ではありません。

自分の気持ち良さを大切に

とはいえ、「誰かに認めてもらいたい」と他人に求めると、満たされず余計苦しむことになります。承認欲求は「欠乏欲求」といい、満たされないと不安や緊張を感じる欲求。夫がほめてくれ、負担を分担するのが一番ですが、難しい人もいるでしょう。

他人に求めるより、まずは自分で自分を満たすことを考えてみましょう。シンプルに「自分が気持ち良くなること」を家事や育児で優先するのです。「自分のため=ワガママ」ということはありません。誰かのために頑張って相手が喜ぶと、自分も気持ち良いものですよね。「誰かのため」と思うときには、「自分のため」も入っているものです。

たとえば部屋を片付けると「自分も気持ち良いから」「子どもが怪我をする心配もなく、自分も安心だから」と思うなら片付けても良いでしょう。「疲れてるけどきれいな部屋を保って完璧に家事をしていると認めてもらいたい」と思うなら、まずは休みましょう。その思いが満たされることはあまり期待できません。

特に乳児期は赤ちゃんを優先にしなければいけないことも多いですが、自分を大切にすることも忘れず、無理をしないようにしましょう。乳幼児期にほぼママ1人できれいな部屋を保ったり自炊にこだわるのは、無理があるのです。

頑張り過ぎれば過ぎるほど他人の評価を求めてしまいますが、頑張り過ぎなければ他人に求めることもなくなります。頑張る人ほど頑張ることをやめて、シンプルに自分のために過ごしてみましょう。自分を大切にすれば、本当の意味で子どもや夫を大切にする余裕が生まれるでしょう。

宮野 茉莉子