2018年は「つみたてNISA元年」。そのほかにもiDeCo(個人型確定拠出年金)や一般NISAなどもあり、これらの制度を活用して資産形成、投資を始めてみよう、という人も多いかもしれません。
ネット証券大手の楽天証券によれば、同社でつみたてNISAの口座を開設した人の属性を見た場合、女性比率や20代の比率がiDeCoや一般NISAに比べると比較的高いといいます(2018年1月末時点)。また、つみたてNISAの口座を開設した人の7割近くが「投資経験がない」と回答したということから、投資初心者が投資をスタートするうえでまず選んでいる制度ということもいえそうです。
実際に、こうした制度を利用しながら投資をスタートする若い女性がいま増えているようです。証券会社の担当者も驚くほど熱心に研究をしている人が多いのだとか。そこで今回は、これから女性が資産形成を始める時のポイントをお金のプロに伺いました。女性はもちろん、投資をこれから始めたいという人も必見です。
女性向けマネーセミナーが大盛況
2月8日夜、東京・渋谷にある楽天カフェ。ここで、楽天証券が主催する「今年は賢くお金を貯める!働く女子の夜活マネー講座」と題するイベントが行われました。「これまで投資とはあまり縁がなかった層を取り込みたい」という同社の狙いもあり、対象者は20代、30代の女性に限定。働く女性が仕事帰りに参加できるようにと平日夜に設定されたこのイベント、短期間での募集にも関わらず定員を上回る申し込みがあったといい、担当者もその熱量の高さに驚いたといいます。
参加した30代の会社員に話を聞くと「今はまだいいけれど、将来、老後に向けてできるだけお金を貯めておきたい。資産形成に興味があり、すでにNISAは始めている。今後はiDeCoにもチャレンジしたい」と語ってくれました。他の参加者も資産形成に対する意識が高く、半数以上が一般NISAまたはつみたてNISAの口座を開設済みだったといいます。
当日、講師を務めたのは楽天証券経済研究所・ファンドアナリストの篠田尚子さん。冒頭、「女性の資産形成のポイントは2つ。寿命が長いことを前提に超・長期でライフプランを考えておくこと。そして、男性に比べると急なライフプランの変更を迫られる可能性も高いので、それに対応できるお金の運用を考えておくこと」と語り、次いで資産形成の方法について解説。参加者は時折大きくうなずきながら、熱心に聞き入っていました。
イベントを終えた篠田さんは「参加者の意欲が非常に高かったことに驚きました。質問も投資信託の選び方やアクティブ型とインデックス型の使い分けなど、上級レベルの内容が多かったです。皆さん投資を前向きに捉えている様子でしたし、どちらかというと、これまで自分がやってきた方法が間違っていないことを確かめたい、自信をつけたい、という雰囲気でしたね」との感想。話している中でも参加者の熱意が伝わってきたようです。
お金のプロが考える女性の資産形成のポイントとは
資産形成に意欲的な人が増える一方で、どこから始めていいのかと悩む人も多いと思います。また、「制度をしっかり理解していないとはじめてはいけないのではないか」などと考え込んでしまう人もいるのではないでしょうか。ですが、篠田さんは「スタートするのに遅い早いはあまりない」として、次のようにアドバイスします。
「女性の場合、否が応にも(結婚や出産などの)ライフイベントが訪れることが多く、特に20~30代の時期に集中します。資産形成のスタートはそうしたライフイベントがきっかけでもいいと思うんですよね」
結婚、出産、住宅購入などのライフイベントでは、現実としてお金を使う場面が多くなります。それがきっかけで、税金のことや、必要になるお金のボリュームが手触り感を持って理解できることもあるというのです。
また、ライフイベントがきっかけでも決して遅くないというもうひとつの理由として、篠田さんはイベントでも語っていた女性の寿命の長さを挙げます。
「女性の場合、平均寿命が長いので、20代、30代の方、あるいは40代であっても『老後資金をなんとかしなきゃ』と焦らなくてもいいと思います。かえって、長いスパンで考える必要がある分、慎重になったほうがいいのではないでしょうか。ただし、万が一のことがあっても柔軟に対応できるように自分で意識的に用意をしておくことも必要です。iDeCoやNISAを自分名義で用意しておく、というのにはそういう意味もあります」
出産や子育てなどで仕事から離れることがあっても、今後は「あくまでも一時的に」というケースが増えていくのではないかという篠田さん。たとえばiDeCoであれば、専業主婦でもつみたてることが可能ですし、転職しても持ち運びができるので、ライフスタイルの変化にも対応できるといえそうです。
ゴールから逆算しよう
ライフイベントがきっかけで投資を意識する人が多いという話でしたが「自分の周りを見ていると、住宅購入やお子さんが生まれたことがきっかけ、という人が多いですね」と篠田さん。
いずれはマイホームを、と夫婦で貯金を始めたり、子どもが生まれて教育費がかさむ時期までになんとかしようというタイミングで投資を考え始める人が多いのだそう。
「このようなケースでは、将来確実に数百万円単位でお金が必要になるとしても、必要になる時期がある程度予測できます。そのゴールに向けて、逆算して目標を立てるといいと思います」と篠田さん。
また、目標とする期間にあった制度を上手に使うのもポイントだといいます。「決して簡単とは言いませんが、堅実な形で資産形成ができる方法だと思います」と篠田さんは言います。
投資する商品。何を選べばいいのか
篠田さんは、資産形成をピラミッド型で考えることを提唱しています。基礎となる部分は「預金、現金」であり、その上に株式や債券、投資信託といった「投資性金融商品」、NISAやiDeCoなどの制度を乗せるイメージです。「これらで土台をつくること。不動産投資やFX、最近話題の仮想通貨などの投機性のある投資手法、ふるさと納税や株主優待などといった補足的に取り入れる制度やサービスは最上段。資産形成を考える人がいきなり取り入れるべきではないと思っています」と篠田さん。
また、お金を管理する「器」を分けることもポイントだと篠田さんは言います。「『守る器』と『増やす器』に分け、増やす器でiDeCoやNISAなどを使って増やしていくイメージです。守る器は定期預金や保険など。ここで増やそうと思わないことが大切です」
しかし実際に「投資性金融商品」となると、投資信託なのか株なのか、どの商品・銘柄を選ぶべきか、と悩む人もいるでしょう。篠田さんは「女性は比較的、投資信託や投信積立から入る人が多いと感じますが、株からでもかまいません。株なら身近なもの、ニュースを追っていけるものがいいですね。興味があるものからスタートしてみては」とアドバイスします。
30代、40代は世帯全体で考える
また、30代、40代で家庭を持つ人に対しては「制度を利用するにしても、世帯全体で考えてみてください」と篠田さんは話します。
「たとえばNISAとひとくちにいっても、つみたてNISA、一般NISAにジュニアNISAもあります。自分ひとりなら年間40万円あるいは120万円でも、夫や子どもとあわせると結構な金額になったりします。なんだかんだ言っても家庭では女性が家計の紐を握っているというケースは多いと思いますし、予算にあわせて考えてみてください。
また、iDeCoなど自分で手続きをしないといけない、万が一加入者が亡くなった際には遺族自ら請求しないといけないようなものについては、入っていること自体を知らなければ、請求のしようもありません。ざっくりと何をしているのかを把握するというレベルでも構いませんから、世帯で見て全体像をつかんでおいてほしいですね」
まとめにかえて
いかがでしたか。まだ今からでも遅くないと聞けば安心もできますが、一方で、積立などの場合は時間も大きな味方になってくれます。一度将来のことを考えてみても良いかもしれませんね。
LIMO編集部