そろそろ発表予定の2017年の「外国人雇用状況」

コンビニやファミレスなどで外国人従業員と接するのは日常的な光景となっていますが、日本全体ではどれだけの人数になっているのかをご存じでしょうか。そのことを知る手がかりは、厚生労働省が毎年1回発表している『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』という統計にあります。

2017年は1月27日に2016年10月末時点の統計が発表されており、その前年の2016年は1月29日、2015年は1月30日と、いずれも1月末に発表されています。このため、2017年10月末時点の統計は、もう間もなく発表されるということになりそうです。

近く発表される統計の結果が気になりますが、その前に1年前の統計がどのようなものであったかを、まずはおさらいしておきたいと思います。

外国人労働者が初めて100万人を突破

昨年1月末に発表された統計結果のポイントは以下の4点でした。

・外国人労働者数は1,083,769人で、前年同期比175,873人、19.4%の増加(平成19年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新)

・外国人労働者を雇用する事業所数は172,798か所で、前年同期比20,537か所、13.5%の増加(平成19年に届出が義務化されて以来、過去最高を更新)

・国籍別では、中国が最も多く344,658人(外国人労働者全体の31.8%)。次いでベトナム172,018人(同15.9%)、フィリピン127,518人(同11.8%)の順。 対前年伸び率は、ベトナム(56.4%)、ネパール(35.1%)が高い

・在留資格別では、「専門的・技術的分野」の労働者が200,994人で、前年同期比33,693人、20.1%の増加。また、永住者や永住者を配偶者に持つ人など「身分に基づく在留資格」は413,389人で、前年同期比46,178人、12.6%の増加

 

最も注目されるのは、外国人労働者全体の人数が初めて100万人を超えた点です。下図のように、ここ数年は毎年コンスタントに増加傾向が続いていましたが、いよいよ100万人の大台に乗ったことになります。

次に注目されるのは、外国人労働者を雇用する事業者数が過去最高を更新するなかで、建設業の伸びが+32%増と突出して高かったことです。東京五輪を控え、建設現場の人手不足が深刻化していると良く耳にしますが、それを補うために外国人労働者が活用されていることを、このデータからも読み取ることができます。

3番目に注目されるのは、外国人労働者の国籍は中国人が最大ではあるものの、伸び率としては+6.9%増に留まる一方で、ベトナム(+56.4%)やネパール(+35.1%)の伸び率が高かったことです。ちなみに、4年前の2012年と比べると、中国は+16%増に対し、ベトナムは+541%増、ネパールは+479%増と大きな開きが見られました。

なお、この背景には、中国で賃金の上昇が進んだことで、日本で働くことのインセンティブが低下してきたことなどがあると推察されます。

外国人労働者数の推移

出所:厚生労働省

100万人は多いのか少ないのか

ところで、この外国人労働者が100万人を突破という数値はどのような意味を持つのでしょうか。そのことを考えるために、日本人労働者数との比較を行ってみたいと思います。

まず、生産活動に参加可能な年齢にある15歳から64歳の「生産年齢人口」と比べてみましょう。直近の生産年齢人口は約7,600万人となっており、これとの対比では2016年10月時点での外国人労働者の割合は約1.3%です。

一方、実際に就業している「就業者数」は、直近では約6,500万人です。この数値との対比による2016年10月時点での外国人労働者の割合は約1.7%を占めていたことになります。

これらの比率を高いと見るか低いと見るかは人それぞれであるかもしれませんが、冷静に見ると、外国人労働者が増えてきたといっても、それほど大きな値にはなっていないということになると思います。

とはいえ、最近は外国人を見かける機会が増えたとお感じの方も多いと思います。その実感は、訪日外国人客数の動向を見ることで納得できます。実際、1月16日に日本政府観光局が発表した2017年の訪日外国人客数(推計値)は、前年比19.3%増の2,869万900人となり、過去最高を記録しています。

1月末発表の統計ではどこに注目すべきか

日本の生産年齢人口は少子高齢化に伴い下落トレンドが続いている一方で、就業者数は景気回復などによる失業率の低下で増加傾向が続いています。

持続的な経済成長を実現していくためには、当然ながら「働く人」の数が増えていくか、1人当たりの生産金額の平均が増加していくことが必要で、前者については女性や外国人の活用、後者についてはITやロボット活用による効率の改善が求められることになります。

こうした観点から、1月末に発表予定の2017年10月時点のデータについては、まずは全体としての外国人労働者の伸び率が前回(+19.4%増)に比べて加速しているのか、あるいは減速しているのかに注目したいところです。また、訪日外国人増加のニュースのように、外国人労働者の増加というニュースが盛り上がるのかどうかも気になるところです。

訪日外国人の伸びは観光収入の増加が見込まれるため、ポジティブなものとして素直に受け取られやすいですが、外国人労働者増加のニュースは、移民問題など政治的にセンシティブな問題にもつながるために、あまり大きくは盛り上がらないという印象がこれまではありました。

とはいえ、何もしなければ、生産年齢人口の減少に歯止めがかからないため、今後、外国人労働者の増加をどこまで容認するのか、また、どのように増やしていくのかという議論は避けられないと考えられます。近く発表される予定の統計が、そうした議論の発火点となるのかが注目されるところです。

LIMO編集部