喫煙者に世間は意外と寛容? 2つの調査の異なる結果

加熱式タバコ規制への意見はどうか

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異なる2つの調査結果

最近、東京都は喫煙に関する2つの調査結果を公表しています。

1つ目は、「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方」に対する意見募集(以下、「公募意見」)の結果です。これは、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けてホスト都市である東京を“スモークフリー”な場所とするための条例であり、東京都は今回の公募結果を踏まえ年明けの都議会定例会でその賛否を問う方針です。

その結果は、一部反対を含む反対の総数が8,192件となり、賛成(規制強化含む)の6,464件を上回っています。

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また、「趣旨・目的や定義等に関するもの」「規制内容に関するもの」「実効性の担保に関するもの」「条例の施行時期に関するもの」の4つの項目別で見ても、賛成が多数を占めたのは4番目の「条例の施行時期に関するもの」だけとなっています。

こうした結果を見ると、東京都民は法律で受動喫煙を防止することにはあまり積極的ではなく、意外と喫煙者に対しては寛容であるという印象が持たれます。

もう1つの調査結果は、2016年に続き今回が2回目となる「受動喫煙に関する都民の意識調査」(以下、「意識調査」)というものです。

こちらの結果は、今後の受動喫煙防止策における法的な規制については69.2%が「ある方が良い」と賛成の考えを表明し、「規制はしてほしくない」の15.4%を大きく上回りました。ちなみに、規制への賛成は、喫煙者の31.8%に対して、非喫煙者では75.8%に達しています。

いずれも、受動喫煙防止策に対する東京都民の考えを知るうえで重要な調査であると言えますが、興味深いことに、前者は反対が賛成を上回り、後者は賛成が圧倒的多数を占めるという大きく異なる結果となっています。

では、なぜ、このように相反する結果が見られたのか。そのことを探るために、両者の調査方法について比較を行ってみたいと思います。

両調査で異なる喫煙者比率

「公募意見」の調査は今年9月8日から10月6日まで行われました。5,085人(メール:2,541 人、郵送・FAX等:2,544 人)から回答が寄せられ、提出された意見の総数は16,972 件となっています。

一方、「意識調査」は今年7~8月に実施されました。こちらは東京都全域の満20歳以上の男女2万人に行われたアンケート調査で、合計で8,712人(有効回答率 43.6%)から回答を得ています。

サンプル数は「意識調査」のほうがやや上回りますが、東京都の人口(約1,375万人)に対する割合で考えるとほぼ誤差の範囲と言ってよいでしょう。

そこで気になるのが喫煙者の比率です。

「公募意見」では、回答者のうち喫煙者は2,034 人、 非喫煙者2,766 人、無回答は285 人となっており、喫煙者数は総回答者数の40%です。一方、「意識調査」では全体の喫煙者比率は14%となっています。

ちなみに、日本全体の成人喫煙率は19%(2016年JT全国喫煙者率調査)ですので、この比率に近いのは「意識調査」のほうになります。

別の言い方をすれば、「公募意見」では喫煙者の意見がより強く表れやすくなっていることになります。

加熱式タバコへの規制には慎重な意見が見られる

どちらの調査結果が行政に反映されていくかは今後の行方を見守る必要があるものの、「意識調査」のほうが日本全体の喫煙率に近いサンプルとなっているため、今後はその結果、つまり「規制強化」の方向に進むことは避けられないと推察されます。

そう考えると今後も喫煙者には肩身の狭い世の中が続くということになりますが、唯一の救いは、いずれの調査報告書にも、今話題の加熱式たばこの規制については比較的慎重な意見が見られたことです。

「公募意見」では、「加熱式タバコは規制対象外とすべき。また科学的根拠に基づいて規制すべき」というコメントが記載されています。

また、「意識調査」では、「あまり規制しすぎると喫煙者は生活しづらくなると思います。最近ではiQOSのような電子タバコにして気をつかっている人たちもいます......今までどおりでいいと思います」といった意見が紹介されています。

喫煙者のなかには、せっかく煙がなく匂いも少ない加熱式タバコに乗り換えたのに、それも規制されてしまうのかと不安に思っている方も多いかもしれません。加熱式タバコが規制から外れるかどうか現時点では確定的とは言えないものの、こうした意見が調査結果に盛り込まれていたことは、せめてもの朗報であると言えるでしょう。

まとめ

東京都受動喫煙防止条例が実施されるのはこれからですが、法規制以前に、喫煙にはマナーが求められることには変わりがありません。このため、喫煙者には非喫煙者に対する配慮を忘れないでほしいと思います。

一方、「禁煙ファシズム」という言葉が取りざたされているように、喫煙者を徹底的に排除するという世の中も、あまり好ましいとは言えません。非喫煙者の方も、マナーを守っている喫煙者に対しては、それを受け入れるという寛容さを持っていただきたいと思います。

和泉 美治

ニュースレター

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和泉 美治

同志社大学文学部卒業後、エルコインターナショナル (現:京セラエルコ) に入社。英国バーミンガム大学にてMBA取得。その後UBSフィリップスアンドドリュー証券 (現:UBS証券) に入社し、調査部にてエレクトロニクスセクターを担当。2002年より2013年までJ.P.モルガンにて産業用エレクトロニクス及び民生エレクトロニクスセクターを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。