それは、購入価格よりも鑑定結果が上回った時に喜ぶ依頼者の姿に対して、です。先祖代々、蔵に眠っていたような依頼品は別にして、依頼者が自ら購入した骨董などの鑑定では、何十年前の購入価格と同じか、それより高い鑑定結果が出れば依頼者は喜び、下がっていれば落胆します。

たとえば、50年前に30万円で買った茶碗に、同じ30万円の鑑定評価が出たとしましょう。すると、依頼者はひとまず安心し、自分の目利きは確かだったと喜ぶ。そして、番組はハッピーエンド。

恐らく、番組を見ている視聴者も「あぁ、よかったねぇ」な〜んて多くの人が思っているはずです。でも私が、この依頼者だったなら「あぁ〜大損した〜」と、すごく落ち込むと思います。仮に鑑定評価が50万円になっていても落ち込むでしょう。

骨董品の現在価値を正しく評価する方法

なぜ鑑定評価がよくても落ち込むのか?

それは、50年前の30万円の価値と、現在の30万円の価値は違うからです。

50年もの間、日本は経済成長し、消費者物価が上がっているので、昔の1万円と今の1万円の価値はぜんぜん違うのです。

よくテレビなどで「今の価値に直すと・・・」とコメントされることがありますが、どうやって現在価値を出しているのかご存知でしょうか?

今の価値を出す方法はいくつかあります。

まずは消費者物価指数を使う方法。総務省統計局の「消費者物価指数」によれば、1965年の消費者物価指数は24.4、50年後の2015年の指数は100となり、当時の100円は現在約400円になっています。

したがって、50年前と現在の指数差は約4倍。ということは、鑑定団で評価されている50年前の30万円の価値は現在なら4倍の120万円になっていなければイコールではないのです。

現在価値を出す方法は、消費者物価指数以外にも方法があります。

それは大卒初任給を使う方法です。厚生労働省のサイトには、毎年の大卒初任給のデータが蓄積されていますが、これを見ると、50年前の大卒初任給は約2.5万円、現在は20万円位ですから、その差は8倍です。

ということは30万円の茶碗は8倍の240万円になっていなければなりません。

この他にも日銀が推奨している、企業物価指数を使う方法もありますが、昔と今の貨幣価値を比べる方法は、いずれの指標を使うかによって、振れ幅は結構あります。

いずれにしても、「なんでも鑑定団」で仮に購入時と同じ額の鑑定評価出た場合は、実質損をしている。もしくは、購入時に骨董屋さんから高値づかみをさせられていたかもしれない、という認識を持たないといけないわけです。

実はここに、鑑定人(骨董屋さん)が儲かるヒントが隠されているんですが、気がつきましたか?

骨董屋さんが儲かる理由とは?

たとえば、この依頼人が30万円で購入した骨董品を、番組終了後に鑑定人が40万円で買い取ったとしましょう。しかし、その骨董品は、現在価値に直すと120万円〜240万円で売れるので鑑定人は確実に儲けることができるのです。

たとえば、150万円の値を付けておいて「あんた熱心だから100万円で売ってあげるよ」なんて小耳で囁けば、自称骨董マニアはイチコロなのではないでしょうか。

こんな感じで、毎回、「なんでも鑑定団」を楽しく?観ているのですが、このように日常のあらゆるものに突っ込みを入れるというエクササイズはとてもとても重要です。

まずは、突っ込みを入れ、いったん目の前のことを否定してみて、自分の仮説を実際の数字で検証してみる。

こういった訓練を常にしておくことで、今まで見えなかった本当の世界が見えるようになってくると思うのです。ぜひ、あなたも、突っ込み名人になってみてください。

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浦田 健