神戸製鋼を支える7つの事業

神戸製鋼の各部門や子会社で検査データ改ざんが次々と発覚したのは周知の通りです。これら不祥事の業績に対する影響が読めないとして、同社では2018年3月期の当期純利益の予想が立てられない状況となっています。

一般に、神戸製鋼というと鉄鋼メーカーのイメージが強いと思いますが、今やそれだけでは捉えきれない企業となっています。今回の不正問題を理解するうえでも、同社が多角化経営の国内トップランナーという視点が必要です。

以下に、同社を構成する7つの事業とそれぞれの2017年3月期の業績をまとめました。

① 鉄鋼(売上高6,206億円、経常利益▲295億円)
② アルミ・銅(売上高3,233億円、経常利益120億円)
③ 建設機械(売上高3,104億円、経常利益▲313億円)
④ 機械(売上高1,507億円、経常利益58億円)
⑤ エンジニアリング(売上高1,211億円、経常利益28億円)
⑥ 溶接(売上高822億円、経常利益68億円)
⑦ 電力(売上高706億円、経常利益130億円)

現在の神戸製鋼は、①鉄鋼、②アルミ・銅、③建設機械が売上高の3本柱です。利益面では、これに電力事業を加えた4事業が柱となり、同社を支えています。

しかし、2017年3月期は鉄鋼と建設機械の2事業が赤字となり、他事業の黒字を積み上げても両事業の赤字を埋められず、連結経常利益は▲191億円となりました(当期純利益▲230億円)。

主力3事業が安定しない状態

今回、鉄鋼とアルミ・銅という同社の柱である事業で不正が発覚しています。同社は2018年3月期の経常利益予想を500億円としていますが、不正問題の影響が読めないとして、当期純利益の予想は開示していません。

前期は鉄鋼と建設機械の2事業が赤字でしたが、今期は特損を加味すると、鉄鋼とアルミ・銅の2事業が赤字となる可能性があります。多角化経営の企業で主力3事業のうち2事業が2期続けて赤字という事態となれば、神戸製鋼ならずとも非常に厳しい状況と言わざるを得ません。

そして第4の柱である電力事業は、昨年より開始されている新しい発電所の建設(真岡発電所)の費用先行により、今期は当初より減益(2018年3月期経常利益30億円)の計画です。よって、他事業を支えるだけの利益貢献は期待できません。

神戸製鋼の不正問題は、今や稼ぎ頭とも言うべき電力事業の利益が落ちる端境期に発生しています(2017年3月期は先述の7事業部門中トップの経常利益)。

主力3事業の黒字化で、電力事業の大きな黒字がなくとも全体的に増益とのシナリオで挑んだであろう今期の神戸製鋼でしたが、不正問題の発覚によりそのシナリオは完全に崩れつつあります。さらに、当期純利益では3期続けての赤字の可能性が高くなっています。

まとめ

主力の鉄鋼以外の事業においても、売上高で1,000億円クラスの事業を複数有する神戸製鋼は、国内における多角化経営の代表選手とも言うべき存在です。

世界的に見ると鉄鋼会社としては小規模な同社は、多角化経営を進めること、そして新日鉄住金と良好な関係を構築することで世界的な鉄鋼業界の再編から一歩離れた場所に身を置き、独自の存在感を発揮してきました。

しかしながら、今回の不正発覚で同社の競争力の源泉とも言うべき多角化経営が揺らぐ事態となっています。神戸製鋼はこの苦境を乗り切り、再建への道を歩むことができるのでしょうか。今後の行方に注目したいと思います。

石井 僚一