筆記体にはメリットもあるようです。

目で覚えるブロック体と異なり、流れるように書ける筆記体はいわば体で覚えていけるのです。頭脳の記憶がスペルを忘れたとしても、体が覚えているので考えなくても書けるというものです。筆記体を教えられた世代には、思い当たるのではないでしょうか。

筆記体だとスラスラ書ける単語を、ブロック体で書くとなると思いだせなかったという経験をしている人も少なくないようです。またブロック体のXは×と見分けにくいときがありますが、そういうことも筆記体ならありません。

使わないものを教えてもムダなのはたしかですが、筆記体にはムダの効用というような面も否めません。強制はやりすぎにしても、たとえば筆記体で書いた答案にはプラス点を与えるというような対応はあってもいいかもしれません。

そういえば、雑音を排したCD全盛の時代ですが、一方でアナログレコードの人気も高まっているそうです。人間にはある程度のムダが必要なのかもしれません。だとすれば、教えないゆとり教育から教えるゆとり教育へ、という発想もありそうです。

間宮 書子