3.「厚生年金「月額20万円未満」の人は受給者全体のうち84.5%!
ここからは、厚生年金受給者総数のうち、老齢年金が「20万円未満」の割合がどのくらいかを見ていきましょう。
厚生年金受給者総数は1618万445人。このうち老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)が20万円未満という方は1367万8851人です。この数字をパーセンテージで表すと、84.5%にも上ります。
さらに詳しく男女別に見た場合、男性の77.5%、女性の98.8%が「年金月額20万円未満」となっています。
男女ともに大多数の方が、年金月額20万円を下回るという何ともショッキングな結果となっています。
厚生年金の受給額は現役時代の収入や加入期間に応じて決まるとお伝えしましたが、大多数の人が受給額20万円を下回るとなると、「いまの自分の年収だと、将来の年金額はいくらになるのか?もしかしたら月20万円を大きく下回るのではないか?」と不安に感じた方も多いでしょう。
そこで、ここからは年金受給額がどうやって決まるのかその計算式を見ていきながら、自分たちの将来の年金額について考えていきましょう。では、さっそく厚生年金の計算方法からお伝えしていきます。
4. 老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算方法
厚生年金の計算方法は次のとおりです。
【厚生年金の計算方法】
A:2003年3月以前の被保険者期間
・平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の月数
B:2003年4月以降の被保険者期間
・平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の被保険者期間の月数
A+Bが老齢厚生年金の受給額となり、これに国民年金の受給金額をあわせたものが将来受け取れる年金額になります。
例えば、20歳~60歳までの40年間ずっと年収約732万円だった場合に、厚生年金を20万円受給することができます。(厚生年金の被保険者期間が全て2003年4月以降だと仮定)
厚生年金を月額20万円(年額240万円)
年額240万円のうち国民年金部分を2023年度満額の79万5000円とすると、厚生年金160万5000円が必要です。
240万円-79万5000円=160万5000円
この160万5000円を厚生年金の計算式にあてはめると、年金を月額20万円受給するために必要な年収を割り出すことができます。
160万5000円=平均年収÷12×0.005481×480
平均年収=約732万円
年収700万円以上を新人時代からずっと継続して得るケースはあまり現実的ではないので、こちらも参考程度に見ておきましょう。
ただ、実際に40年間ずっと年収が約732万円だった場合でも、年金は月額20万円。「意外と少ないな」と思った方は多いのではないでしょうか。
年収700万円レベルの生活を維持するには、年金月額20万円では足りないかもしれないですね。「これじゃ不安だな」と感じる場合は、収入を上げる方法を考えたり、年金以外の老後資金を準備する方法について考えてみてはいかがでしょうか。
5. 老後資金の準備について
今回は、いまのシニアの年金事情について見てきました。私たち現役世代が子供の頃は「おじいちゃん、おばあちゃんは年金生活で悠々自適」なイメージを持たれていた方も多いと思います。
しかし、今は「年金だけでは生活が破綻する」等、「年金=ネガティブ」なイメージを持たれる方も多いですよね。
事実、今回見てきたようにいまのシニアが受け取っている年金額は、大卒の平均初任給を下回る金額です。その結果、定年後も働き続けたり、貯蓄を切り崩したりして生活しているのがいまのシニアの現状です。
年金を受け取るまでしばらく時間のある現役世代の私たちも「将来の年金額は月20万円を下回るかも」という危機感を持って、足りない老後資金の準備をいまの段階から進めておく必要があるでしょう。
いまは、老後資金を準備する方法の一つとして「iDeCo」や「つみたてNISA」など初心者でも始めやすい金融制度や金融商品がたくさんあります。
この「iDeCo」と「つみたてNISA」においては、少額で毎月こつこつと積立投資ができるのですが、投資を成功させる秘訣は「長期で投資を継続すること」です。
年金を受け取るまで、まだまだ時間はありますが「長期で投資を継続する」となると話は別です。「年金だけじゃ老後が不安」と感じたそのタイミングから、将来に向けて準備をスタートさせてみてはいかがでしょうか。
参考資料
鶴田 綾