2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症が「5類」に引き下げられました。

これまで公費で負担されていた入院費やPCR検査費用の一部が、自己負担となる見通しです。

5類への移行によって、あらためて健康保険や介護保険で適用されている保険料率も関心を集めています。

本記事では、2023年度に適用されている健康保険料や介護保険料について解説します。

地域別にみる健康保険料の料率

まずは、2023年度の健康保険料に適用されている料率について確認しましょう。

健康保険は、企業の規模や業種によって、加入する種類が異なります。

今回は、主に中小企業の従業員が加入している協会けんぽを見ていきましょう。

協会けんぽの保険料率は、都道府県によって決められています。

2023年度から、各都道府県で料率がどのように変わったか確認していきましょう。

●北海道・東北エリア

北海道・東北エリアは、すべての道県で2022年度より料率が引き下げられました。

出所:全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

エリアで最も料率が引き下げられたのは、秋田県でした。

●関東エリア

関東エリアでは、茨城県を除く都県で2023年度の保険料率が引き上げられています。

出所:全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

2022年度は栃木県がエリアで最も保険料率が高い県でしたが、2023年度は神奈川県が最も高い県となりました。

●東海・北陸エリア

東海・北陸エリアでは、静岡県と愛知県を除いたすべての県で、保険料率が引き下げられています。

出所:全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

静岡県は全国で唯一、保険料率を2022年度と同じ料率に据え置いています。

●近畿エリア

近畿エリアでは、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県の料率が引き上げられました。

出所:全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

一方で、滋賀県、和歌山県、三重県は料率を引き下げています。

●中国・四国エリア

中国・四国エリアはすべての県で保険料率が引き下げられています。

全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

四国地方の徳島県、香川県、愛媛県、高知県は保険料率がすべて10%を超えています。

●九州・沖縄エリア

九州・沖縄エリアでは、福岡県を除いて保険料率が引き下げられています。

保険料率が10%を下回っている県は、宮崎県と沖縄県のみでした。

出所:全国健康保険協会「令和5年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」を元に筆者作成

他のエリアと比較すると、相対的に保険料率が高いエリアといえます。

また、佐賀県は全国で最も保険料率が高い都道府県でした。

以上から、全国的にみると33の道県で保険料率が引き下げられています。

一方で、東京都や大阪府、愛知県といった都市部では、保険料率が引き上げられている傾向にありました。

健康保険料の料率は、2023年4月に納付する分から改定されています。

介護保険料も値上げ

健康保険に続き、介護保険料も値上がりしています。

介護保険料の値上げは、40歳から64歳までの第2号被保険者が対象です。

協会けんぽでは、介護保険料の料率を全国一律で1.82%としています。

2022年3月分は1.64%で、2年ぶりに引き上げられました。

健康保険の料率が下がっているエリアに居住していても、介護保険料は0.18ポイント引き上がっているので、40歳から64歳までの人は手取りが減っている場合もあるでしょう。

後期高齢者医療保険も値上げへ

2023年4月12日、後期高齢者医療制度における保険料の上限額を引き上げる改正案が、衆議院を通過しました。

75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度は、今回の改正で「保険料の上限額」が引き上げられます。

具体的には、年金収入が153万円を超える人の保険料を、収入に応じて段階的に引き上げる見通しです。

段階的な保険料の引き上げに伴い、保険料の年間上限額も現行の66万円から引き上げます。

2024年度は73万円、2025年度は80万円に引き上げる見通しです。

出所:厚生労働省保険局「医療保険制度改革について」

2年間で、およそ全体の4割が保険料の値上げとなる見通しです。

勤労世帯だけでなく、後期高齢者も保険料の引き上げによって、日々の生活に影響を及ぼすかもしれません。

保険料の引き上げは家計に影響

財務省が2023年2月21日に発表している「国民負担率」は、2022年度の実績見込みで47.5%となりました。

そのうち、社会保障の負担は18.8%となっています。

収入のおよそ5分の1が保険料の負担となっているので、少なからず家計にも影響が生じているといえるでしょう。

今後も社会保障をはじめとする国民負担率は上昇する可能性が高いので、毎月の家計管理はよりシビアに対応する必要があります。

参考資料

川辺 拓也