総務省統計局は2023年4月21日に「消費者物価指数 2022年度平均」を発表しました。
その結果、2021年度に比べて総合指数が3.2%上昇しています。
これから老後の生活をおくる人にとって、ますます厳しい情勢といえるでしょう。
本記事では、老後への備えがなぜ重要かをさまざまなデータから解説します。
平均貯蓄額や家計の支出についてもあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
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リタイア夫婦の平均貯蓄額は?
65歳を迎え、年金生活に入る夫婦の平均貯蓄額はいくらなのか確認しましょう。
金融広報中央委員会は「家計の金融行動に関する世論調査」で、各年代別の金融資産保有額を調査しました。
その結果、60歳代の中央値は700万円、70歳代は800万円となっています。
3000万円以上の資産を保有している60歳代が20.3%でした。
およそ5世帯に1世帯は、金融資産を3000万円以上も保有していますが、一方で金融資産がない世帯も20.5%います。
つまり、金融資産が全くない世帯と、3000万円を超える額を確保している世帯は、ほぼ同じ割合ということです。
老後に向けた準備を進めていた世帯と、そうでない世帯に分かれる結果となりました。
65歳以降の収入や支出の実態は?
65歳を迎えて、老後生活に突入した場合の生活費や年金の受給額について確認していきましょう。
厚生労働省は、2023年1月20日に年金額の改定を発表しました。
夫婦2人分の標準的な厚生年金は22万4482円と、2022年度に比べ4889円引き上げられています。
しかし、物価変動率が2.5%に対して、年金の引き上げ率は67歳以下で2.2%でした。
そのため、実質は目減りしているといえます。
では、年金の収入に対して家計の実態について確認していきましょう。
総務省統計局が2023年2月に発表した「家計調査(家計収支編)」では、無職世帯の支出額は2022年平均で27万4007円となりました。
支出金額27万4007円に対して、年金額は22万4482円なので約5万円が不足しています。
仮に65歳から年金収入だけになった場合、20年で不足額は約1200万円です。
以上から、年金収入だけでは生活ができない状況で、20年間の老後生活で少なくとも約1200万円の生活費が不足します。
そのため、老後に向けた準備は、前もって行う必要があるといえるでしょう。
「60歳代」各年収別で見た実際の実態は
金融資産保有額の中央値は、60歳代で700万円でした。
金融資産保有額を年収別に分けて、より詳しい貯蓄の実態を確認してみましょう。
金融資産保有額を年収別に見ると、下表の通りになりました。
1500万円以上の金融資産を保有している割合を年収別に見ると、以下の通りです。
- 収入はない:12.5%
- 300万円未満:21.1%
- 300~500万円未満:33.3%
- 500~750万円未満:36.8%
- 750~1000万円未満:49.0%
- 1000~1200万円未満:44.6%
- 1200万円以上:61.3%
収入が低くなるにつれて、金融資産を十分に保有している割合も減少している状態でした。
とはいえ、どの年収ゾーンでも一定の割合で1500万円以上の金融資産を保有しています。
計画的に準備すれば、1500万円以上の金融資産も保有できるでしょう。
リタイアする前に計画的に老後生活の準備をしましょう
年金だけでは生活できないので、リタイア前に計画を立てて準備する必要があります。
具体的な準備としては「増やす」「守る」「減らす」をポイントにしましょう。
「増やす」とは、自分の資産を増やす準備です。
NISAやiDeCoといった資産運用をはじめ、投資信託やFXなどが該当します。
「守る」とは、不測の事態に備える準備です。
生活資金とは別の緊急費の確保や、保険などでカバーする必要があるか検討しましょう。
「減らす」とは、日常の生活費で不要な支出を減らす取り組みです。
老後の生活は、収入が限られるので、現役時代よりも家計の管理は詳細に行う必要があります。
足元の生活では、今後も物価高やエネルギー価格の高騰が続くため、老後の生活はますますシビアになるでしょう。
65歳でリタイアする前に、先々の計画をしっかり立てて準備しておきましょう。
参考資料
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年度平均」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上の世帯)令和4年」
- 金融広報中央委員会「設問間クロス集計(令和4年)」
- 厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2022年」
川辺 拓也