老後の生活は、租税や社会保障の負担が重くのしかかる厳しい状況が待ち受けています。
財務省が2023年2月21日に公表した「令和5年度の国民負担率」では、所得のうち税金や社会保障の負担にまわる比率は、46.8%になる見通しです。
老後の生活に活用できる資金が今後も減少する可能性が高い中、年金の存在はますます重要になるといえるでしょう。
しかし、就業状況から将来受け取れる年金に期待が持てない人もいるのではないでしょうか。
本記事は、月額で10万円を受け取るために必要な収入条件や、老後に向けて準備しておきたい対策もあわせて解説します。
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1. 厚生年金「月額10万円未満」は何割?
2022年12月に厚生労働省年金局が調査した「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険の受給権者は2021年度末で1618万445人です。
年金月額ごとの受給権者数は、下表を参考にしてください。
厚生年金の受給額(老齢基礎年金を含む)が10万円未満の人は374万9779人で、全体の23.2%でした。
およそ4人に1人が老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせても、受給額が10万円に満たない実態です。
では、基礎年金と厚生年金の受給額が10万円になる人の年収はいくらになるのか、目安の年収を確認してみましょう。
2. 厚生年金を月額で10万円受け取るために必要な年収は?
基礎年金と厚生年金の受給額が10万円になる年収を、以下のケースでシミュレーションしてみましょう。
- 2000年生まれの23歳
- 23歳から60歳まで厚生年金に加入
- 年金の受給開始年齢は65歳
- 毎月の老齢基礎年金は2023年度における満額6万6250円(年間79万5000円)を受給
老齢基礎年金と老齢厚生年金を合算した受給額が毎月10万円の場合、年間では約120万円になります。
厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を利用した結果、基礎年金と厚生年金をあわせて受給額が120万円になる年収平均は、およそ240万円でした。
一方、65歳から厚生年金だけで毎月10万円を受給する場合に必要な平均年収は、650万円でした。
年間で203万円受給する年金のうち、基礎年金部分が79万5000円なので、残った123万5000円が老齢厚生年金になります。
老齢厚生年金は、加入期間が長い人や収入が高い人は、受給額も多くなります。
年金の受給額が想定より下回る見込みなら、適切な老後資金を確保するための準備が必要です。
どのような老後対策を行うべきかについて、確認していきましょう。
3. 始めておくべき老後への対策3つとは?
老後の生活を不安なく過ごすために始めておくべき対策は、次の3つです。
- 収入源が増やせるか検討
- 増やした収入を資産運用
- 不要な支出の削減
それぞれの対策について、確認していきましょう。
3.1 収入源が増やせるか検討
まず、始めておきたい対策の1つは「収入源が増やせないか」を考えましょう。
本業以外に収入源を増やせば、資産運用をするための原資にもなります。
具体的な収入源を増やす方法としては、副業やシェアリングエコノミーもおすすめです。
2022年11月18日に株式会社クラウドワークスは「副業に関するアンケート調査」を実施しました。
その結果、日本の労働人口6860万人のうち、1358万人が「副業を現在経験している」と回答しています。
全体の19.8%が副業を行っており、労働人口のおよそ5人に1人が副業を実施しています。
以上から、資産を運用するための資金を確保するためにも、少額でもいいので副業やシェアリングエコノミーを検討してみると良いでしょう。
3.2 増やした収入を資産運用
副業やシェアリングエコノミーで増やした収入は、老後の資金を増やすために運用に回すのもひとつです。
総務省統計局が2023年4月21日に公表した「2023年3月分の消費者物価指数」によると、総合指数は前年比で3.2%上昇しました。
足元の生活においても物価が上昇しているので、現金で持ち続けたまま物価が上がり続けると、実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。
資産価値が目減りしないように「お金」に働いてもらえる取り組みが大切です。
NISAやiDeCo、投資信託といった金融商品を検討するのも良いでしょう。
3.3 不要な支出の削減
不要な支出を減らす対策も重要です。
老後は現役時と比べて収入が下がるので、より支出する項目はシビアになる必要があります。
特に、以下の項目は見直すと支出が抑えられる可能性が高いです。
- 携帯電話の通信費
- 生命保険や自動車保険
- 光熱費
毎月の家計をチェックして、不必要な支出がないか確認しましょう。
4. 老後に向けて
厚生年金「月額10万円未満」という方は374万9779人で、全体の23.2%でした。
必要な年収や老後に向けて始めたい対策をご紹介したことで、老後への意識が向上した方も多いのではないでしょうか。
- 収入源が増やせるか検討
- 増やした収入を資産運用
- 不要な支出の削減
の3つの対策について、できそうなものから取り組んでいきましょう。
参考資料
- 財務省「令和5年度の国民負担率を公表します」
- 厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター」
- 株式会社クラウドワークス「副業に関するアンケート調査」
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年3月分」
川辺 拓也