2024年からスタートする新NISA。現行NISAは期間に限定がある制度であったのに対し、新NISAでは制度が恒久化されることが決定しています。

より長期での資産運用が可能となったことから、老後資金の準備として新NISAの活用を検討している人もいるかもしれません。

この記事では、新NISAを活用した老後資金のシミュレーションについて紹介します。

準備しておきたい老後資金の目安についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

2024年から改正される新NISA

令和4年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」において、NISA制度が大きく変更されることが決まりました。

2024年からスタートする新NISAの概要は下記表の通りです。

出所:金融庁「新しいNISA」をもとに筆者作成

最も大きな変更点は「制度が恒久化された」という点です。これまでは期限付きの制度でしたが、恒久化されたことによってより長期での資産形成に適した制度となりました。

老後資金は2000万円が目安なのか

「新NISAで老後資金が準備できるか」ということを考える前に、そもそも老後資金はどれくらい必要なのか考えてみましょう。

総務省統計局が毎年発表している「家計調査年報(家計収支編)」では、「高齢者無職世帯」の収支に関する情報が掲載されています。直近5年分の収支状況を一覧表にまとめました。

なお、「高齢者無職世帯」の定義について、2017〜2019年は「夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯」、2020年〜2021年は「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」としています。

出所:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)」をもとに筆者作成

2020年以降は収支が改善されていますが、これはコロナ禍において娯楽費や交際費が減少している影響が考えられます。

こうした特殊要因を除いて考えると、夫婦高齢者無職世帯では毎月およそ3~5万円が不足している状況です。

仮に老後生活を30年とした場合、月4万円の不足で1440万円の貯蓄を取り崩す計算となります。

加えて、家のリフォーム費用や介護費用などを考慮すると、老後資金としてはおよそ2000万円を準備しておきたいところです。

毎月5万円を運用した場合のシミュレーション

新NISAを活用して、老後資金の2000万円を準備することはできるのでしょうか。新NISAでは生涯投資枠として1800万円が設定されており、全額積立投資で利用することも可能です。

ここでは、毎月5万円を積立投資した場合の運用結果についてシミュレーションしてみましょう。

【毎月5万円を積立投資するシミュレーション】

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」を参考に筆者作成

目標の2000万円に到達するのは、運用利回りが3%のときで25年後、5%で20年後です。

もし40歳から積立投資を始めると、ちょうど退職を迎える60~65歳の頃には老後資金を準備できることになります。

「2000万円を準備する」と聞くとハードルが高いように感じられるかもしれませんが、毎月コツコツと積立投資を続けていれば、決して実現できない水準ではないでしょう。

ただし、運用商品は日々値動きが変動するため、「必ず毎年利回りが得られる」という確証はありません。

よりリスクを抑えながら老後資金を準備するためには、若いうちから時間をかけて分散投資しておくことが大切です。

老後資金の準備は若いうちから始めよう

2024年から始まる新NISAでは制度が恒久化されたことから、より長期での資産形成に活用しやすくなりました。

非課税保有限度額の1800万円は全額積立投資で利用することも可能です。

老後資金の準備のひとつとして、NISA制度の活用を検討してみるのもいいでしょう。

参考資料

椿 慧理