当時の第3代社長・今野克二氏は、つねづね「有事の際に優先すべきは人命であり、お客さまの命、スタッフの命が最優先である」と考え、それを日ごろからスタッフにも繰り返し伝えていたそうです。店長たちは言うまでもなく仕事熱心です。店舗のことは気になったものの、「それでも『人命が第一だ』と店には戻らなかった」と教えてくれた方もいました。

 電話やメールはもちろん、いまのようにLINEなどのチャットツールもないような状況で、「経営者が日常的に発信していたメッセージ」が、店長のみなさんの素晴らしい判断と行動を生んだわけです。

 現在のように、チャットツールが充実している状況でも、緊急時は通信そのものができない可能性もあります。コロナ禍の現在はすでに有事とも言えますが、これからまたさらに、異なる問題が起こらないとも限りません。そんな状況下で、トップがこのような強いメッセージを発し、それを組織全体で共有できる体制づくりは非常に重要になるはずです。

 

■ 三科 公孝(みしな・ひろたか)
 株式会社ノウハウバンク 代表取締役。1969年山梨県生まれ。立命館大学文学部哲学科を卒業後、株式会社船井総合研究所を経て2000年より現職。中小企業の集客・売上アップ・販路開拓などの企業活性化プロジェクト、地域資源活用によるヒット商品開発や観光集客・PRなどの地方創生プロジェクト、研修・講演活動などを行う。企業・官公庁・公的団体など組織形態を問わず、実践的で確実に売上・集客につなげるコンサルティング手法に定評があり、特に近年は全国でSDGsに関する講演・セミナーを行っている。

 

三科氏の著書:
儲かるSDGs ――危機を乗り越えるための経営戦略

三科 公孝