「経済センサス」は日本企業の「国勢調査」
2017年5月31日、総務省と経済産業省は、2016年6月に行われた「経済センサス」活動調査の速報結果を発表しています。
経済センサスは、日本の企業活動を事業所ごとに把握する大規模調査です。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単に言えば、企業活動の「国勢調査」ということになります。国勢調査は日本に居住している人の世帯家族構成などを調査することを目的としていますが、「経済センサス」は家庭ではなく職場が調査の対象となります。
ちなみに、こうした調査が行われる理由は、従来は各省庁がそれぞれが担当する産業分野ごとに、異なる年次や周期で大規模調査を実施していたため、日本全体の企業活動を包括的に捉えるデータとしては不十分であったためとされています。
事業所は減ったけれど付加価値は増加した5年間
今回の調査結果で注目されるポイントは以下の通りです。
第1は、今回の調査結果(2016年6月に実施)と前回(2012年2月)を比べると、全国の企業者数は▲6.3%減、また、事業所数は▲2.5%減少していたのに対して、売上金額は+20.1%増、付加価値額は+20.5%増、従業員数は+2.9%増となっていたことです。
つまり、職場の数は集約されて減ったものの、業績や雇用は拡大していたということになります。
第2は、相変わらず東京への雇用の一極集中が進んでいることです。前回対比で東京の従業員数は+5.7%増と全国平均の+2.9%増を大きく上回り、全体に占める割合も15.5%から15.9%に上昇しています。
地方創生が叫ばれて久しいですが、全国平均を上回る伸びを示したのは、首都圏の千葉県、埼玉県、神奈川県を除くと、東日本大震災からの復興が進む岩手県(+3.9%)、宮城県(+6.2%)や、沖縄県(+8.4%)、奈良県(+3.2%)、福岡県(+3.9%)などに留まります。
第3は、業種ごとの従業員数の変化に少子高齢化の影響が見られることです。前回調査から従業員数が最も増加した業種は、+20.1%増となった医療、福祉関連でした。一方、最も減少したのは、生活関連サービス業、娯楽業(▲5.0%減)、次いで建設業(▲3.8%減)、金融業(▲3.7%減)、製造業(▲3.5%減)などとなっています。
医療、福祉関連の突出した伸びや建設業の減少は、まさに日本社会の高齢化を映し出していると考えらえます。また、生活関連サービス業には、洗濯・理容・美容・浴場業などが含まれるため、そこからも人口減による地域コミュニティの縮小を読み取ることができます。
5年後はどうなる?
「経済センサス」は5年に1回行われる大規模調査ですので、次回は2021年に行われると考えられます。
今から5年後を考えるのは少し気が早すぎるかもしれませんが、気になるのは、この先も人口減少や高齢化が避けられないなか、次の調査でも企業者数や事業所数は減少しても売上金額や付加価値額、さらに従業員数の増加を確保できるかです。
日経平均は久々に2万円を超えましたが、前回調査が行われた2012年2月時点は1万円近辺でした。つまり、この間、約2倍に上昇したことになります。
5年後の日経平均がさらに2倍となり4万円となるかはともかく、5年後の日本が、少子高齢化が進んでも雇用が増え豊かさを実感できる社会となっている、つまり、経済センサスで示される売上金額や雇用が増加していることを願わずにはいられません。
言うまでもなく、そのためには、「働き方改革」による新たな雇用の創出や、AIやロボットなどのテクノロジーの活用が重要です。これらは株式市場の注目テーマでもありますが、それが単なる「お題目」で終わるのではなく、しっかりと実現することが求められます。株式市場も日本経済も、これからがまさに正念場です。
LIMO編集部