先週、ドル円は113円台前半からスタートしたものの、トランプ政権のロシア疑惑浮上で16日から円が買われ、18日には110円台前半にまで円高が進みました。その後、111円台にまで値を戻して週の取引を終えたものの、金融市場はリスクオンからリスクオフに切り替わった感があります。
株式市場と比べ、ロシア疑惑の影響がより大きく生じた為替市場。今週は戻りを試す展開となるかどうかに注目です。
先週の為替動向振り返り
大きな指標発表等がなく無風かと思われた先週の為替市場でしたが、米連邦捜査局(FBI)コミー長官の解任を契機とするロシア疑惑が急浮上。コミー氏の解任自体は先々週の出来事でしたが、その後続々とトランプ政権のロシア疑惑が報じられるようになり、かつてのウォーターゲート事件に倣いロシアゲートと呼ばれるようになっています。
このロシアゲート問題を契機に、16日からドルが下落。ドル円は113円台半ばから一時110円台前半まで3円以上の下落となりました。週末は111円台前半にまで戻しましたが、週初と比べ2円以上下落して取引を終えています。
一方、株式市場は特に米国では17日には大きく下落しましたが、18日、19日には上昇して値を戻すような形となっています。
ドルインデックスが急落、原油(WTI)は50ドルを回復
ドル円を大きく動かしたのは、ドルインデックスの急落です。これまで98ポイント台がサポート&レジスタンス(サポレジ)として機能していましたが、16日に98ポイント台のサポレジを大きく割れて下落。その後も17日、19日と長い陰線を付けて下落し、97ポイント台前半で取引を終了しています。
一方、原油価格(WTI)はサウジアラビアとロシアの間で減産延期の合意がなされたことを契機に上昇を続け、19日には節目価格の50ドル台に到達しました。
また、リスク指標のVIX価格が急騰し、金価格も上昇しています。このように、商品市場等から見ると、フランス大統領選挙の第1回投票後に始まったリスクオンが、先週ついに終了してリスクオフに移ったと判断できそうです。
今週の為替動向見通し
リスクオンからリスクオフへの転機となったロシアゲート問題は、今週も引き続きその行方が注目されます。トランプ大統領弾劾の動きも出ていますが、大統領の弾劾は共和党が上下両院で過半数を占めている中では、ハードルが相当高いのも事実です。
問題は、ロシアゲートの浮上でトランプ政権が疑惑対応を余儀なくされ、減税やインフラ投資といった経済政策が後回しにされる可能性が高いという点です。これまでトランプ政権の経済政策への期待感を背景に日米欧の株価は上昇しているため、今後注意を要します。
また、為替市場の方向を探る上では、ドルインデックスの動向に注目したいところです。
先週16日に98ポイント台のサポレジを大きく下抜けし、その後も下落した結果、ダウ理論から見れば下落トレンド入りとなります。よって、ドルインデックスは先週、新たなるステージに入ったと考えられます。ドルインデックスの影響を大きく受けるドルが絡む通貨ペアは、これまでとは違う観点での分析が必要となるでしょう。
ただし、ドルインデックスは17日を除くと11日から陰線が6本継続しており、いったん戻しが入ってもおかしくはない状態です。いずれにしても、先週リスクオンからリスクオフに市場のモードが変化しているため、今週からはリスクオフという観点で為替市場を見るべきと考えます。
まとめ
ロシアゲート問題は米国では連日大きく報道されており、今後の行方に注目せざるを得ません。
米国の株式市場は、ロシアゲート問題が大きく報じられた17日こそ大幅な下落を見せましたが、その後は18日、19日と上昇しています。株価の上昇=戻りと比べると、為替市場の戻りはあまり生じていないので、今週は株式市場同様に戻りを試すような値動きとなる可能性もあります。
ただし、ドルの相対的な強さを表すドルインデックスが先週、完全に下落トレンド入りしていることから、今週はロシアゲート問題の行方およびドルインデックスの状況を注視しつつ、為替市場を眺めていきたいと思います。
LIMO編集部