5月12日は「看護の日」

5月12日は「看護の日」です。ご存知でしたか?

これは、1965年から5月12日が「国際看護の日」に制定されていたのに合わせる形で、1991年に日本独自の形で制定されました。ただ、本当の始まりは、赤十字社がナイチンゲール(1820~1910)の誕生日にちなんで制定したものです。

主旨としては、ナイチンゲールの誕生日に、看護や看護職について考えるということに変わりはありません。

2002年から看護婦と看護士が統一されて「看護師」に

なお、看護職と聞くと“看護婦”をイメージする人も多いと思われます。確かに、2001年までは女性の看護職を「看護婦」、男性の看護職を「看護士」としていましたが、2002年からは男女とも「看護師」に統一されています。

ただ、英語表記は従来通り「nurse」のままです。“ナース”と聞くと、白衣の天使(女性)をイメージしてしまうのは、少し時代遅れなのかもしれません。

そこで、ほとんどの人が1度はお世話になったことがある看護師について、公益社団法人日本看護協会のデータを参照しながら見てみましょう。

看護師数は約154万人、年率+2%弱で増加中。男性も急増中

まず、2015年現在の看護師(准看護師含む、保険師と助産師は除く。以下同)は全国で約154万人います。この看護師数はほぼ一貫して増加しており、直近10年間では年平均+1.8%の増加、人数にすると毎年3万人強の増加です。

特に、男性の看護師の増加が著しく、2004年の54,432人が10年後の2014年には96,845人へと+78%増加しました。しかも、国家資格である看護師に限れば倍増以上に増えています(31,594人が73,968人へ)。

確かに、男性の比率が未だ6%弱であることから、圧倒的な“女性職場”なのですが、男性の進出は着実に増えていると言えます。

女性にとって看護師は人気職業の1つ

さらに、この看護師という職業、結構人気が高いようなのです。まず、急速な高齢化社会の進展に伴う医療業務の増大が続くため、医療現場を支える看護師に対する需要が拡大しています。

また、女性にとっては、結婚・出産後も働き続けられる職業の1つであることも大きな魅力なようです。看護師の資格を取得すれば、活躍のフィールドは将来的にも有望なのでしょう。

新設ラッシュが止まらない大学の看護学部・学科

この人気の高さを裏付けるのが、看護学部・学科を設置した大学(看護系大学含む)の急増です。ご存知の通り、少子化の影響を受けて多くの大学が学生数の確保に苦心しており、大幅な定員割れもめずらしくありません。しかし、看護学部・学科の新設ラッシュは止まるところを知らない状況です。

看護学部・学科のある大学数は1989年度にわずか11校に過ぎませんでしたが、2014年度には228校へと20倍超に増加しています。これは、全国にある大学の3.3校に1校が看護学部・学科を設置していることを意味します。

しかも、最近では医療系とは全く関係ない大学(たとえば工業大学)でも看護学部を新設することがめずらしくなくなりました。

学生数確保に苦心する大学にとって看護学部は救世主

また、学生数(定員ベース)も1989年度の558人が2014年度には約2万人へと増加しており、今後もさらなる拡大が見込まれています。学生数の確保に苦しむ大学、言い換えれば、経営難に直面する大学にとって、看護学部・学科は必要不可欠というのは言い過ぎでしょうか?

こうした状況からも、年に1度の国家資格試験に合格する必要があるとはいえ、看護師が人気の高い職業であることが推察されます(注:准看護師は都道府県知事による免許制度)。

一昔前の看護師は3K職業だったはず

ここまで読んだ人の中には、“人気職業? 看護師は代表的な3K職業だったはずだが…”と思う方がいらっしゃるかもしれません。そうです、看護師の仕事は3K(きつい、汚い、危険)で表されることが多々ありました。

特に、バブル経済時期の頃は、女性にとって看護師(注:当時は「看護婦」)は敬遠する職業の1つだったと記憶しています。「3K」を超えた「9K」という言葉があったくらいですし、実際、夜勤の連続などで体調の維持なども大変だったようです。

今も看護師は大変な職業、とりわけ小規模病院では顕著

ということは、現在の看護師は3Kから解放されたスマートな職業になったのでしょうか。

いや、今でもそう変わっていない可能性があります。日本看護協会の調査によれば、2015年度における看護職の離職率(病院勤務のみ対象)は、常勤が10.9%、新卒が7.8%でした。新卒の離職率8%未満は、大卒平均の11%前後(厚生労働所のサンプル調査)に比べると低い部類ですが、それでも大変な仕事であることが伺えます。

しかも、この数字は、小規模の病院ほど高くなっており、病床数99未満の新卒離職率は約14%に達しています。

将来的には余剰人員が発生するという見方も

さらに、看護師の約85%が勤務する「病院」「診療所」では、厚生労働省の旗振りの元、病床数の削減が実施される見込みです。これが進むと、病院の経営が難しくなり、看護師人数の適正化に進むという見方もあります。今は不足している看護師ですが、一転して余剰時代が来るのでしょうか。

こうした看護師を取り巻く状況に目を向けながら、「看護の日」には改めて看護師に感謝していいのではないでしょうか。

LIMO編集部