マレーシアでの金正男氏殺害事件から早10日が経過

2月13日にマレーシアの首都クアラルンプールにある国際空港で、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の国家元首である金正恩(キム・ジョンウン)委員長の異母兄弟、金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害されてから早10日が経とうとしています。

詳細は省略しますが、その殺害方法や国家関与などが関心を集めた結果、日本でも連日、ワイドショーのみならずテレビ報道番組のトップニュースとして扱われています。この金正男氏の殺害事件に関しては現在まだ捜査中ということですが、今後は徐々にその背景が明らかになっていくと思われます。

日本が北朝鮮に持つイメージは『悪の枢軸』なのか?

仮に、北朝鮮の首脳部が関与していたとすれば、政敵を暗殺するのはまさしく前近代的な時代の遺物と言えます。この殺害事件が報道されて以降、多くの日本人が改めて“北朝鮮は恐ろしい国だ”と思ったのではないでしょうか。

大多数の日本人にとって北朝鮮という国は、拉致問題事件に始まり、近年のミサイル発射や核実験実施など、『悪の枢軸』というイメージが強いことは想像に難くありません。そして、“北朝鮮は世界で孤立している”と思っている人も少なくないと推察されます。

実際、北朝鮮という国は国際外交上でどのような位置付けにある国なのでしょうか?

国連加盟国の約84%が北朝鮮と国交関係を有する

結論から言うと、北朝鮮は、多くの日本人が考えているほど孤立してはいないと言えます。現在、国連加盟国193か国のうち162か国が北朝鮮と国交を有しています(外務省のHPより。なお国連加盟国数は195か国という見解もある)。

ここで言う「国交を有する」とは、お互いを「国家」として承認するという意味であり、決して“仲が良い”ということではありません。

しかしながら、国連加盟国の約84%が北朝鮮と国交関係を有しているという厳然たる事実があるのです。確かに、隣国の大韓民国(韓国)が188か国と国交関係があるのに比べると大幅に少ないですが、“国際的に孤立している”というのは少し大げさな表現かもしれません。

ちなみに、北朝鮮と国交関係を有さない主な国は、日本、韓国、米国、フランス、アルゼンチン、チリ、サウジアラビアなどです。

欧州諸国の対応はやや意外、英国やドイツは平壌に大使館を置いている

このうち、日本人から見ると少なからず違和感を覚えるのが欧州諸国の対応です。フランスなど一部を除く大多数が国交関係を有しているだけでなく、英国、ドイツ、スウェーデンなど主要国は、平壌(ピョンヤン)に大使館を構えています。

大使館は在外公館の最上位に位置付けられ、当然、駐在大使もいます。表面上だけの国交関係ならば、大使館を設置することはないでしょう。欧州から見る北朝鮮という国は、日本人が思っている位置づけとは大きな乖離がありそうです。

なお、北朝鮮に大使館を置いている国は、これら欧州諸国に加え、中国、ロシア、イラン、インド、キューバなど25~30か国と見られています。各国の駐在大使がどのような日常生活を送っているか気になるところです。

マレーシアと北朝鮮は“超”友好国関係だった

その平壌に大使館を置いている国の1つが、今回の殺害事件の当事国となったマレーシアです。今般の数々の報道の中で、マレーシアと北朝鮮が“超”友好国関係だったことを知って驚いたのではないでしょうか。

何と、両国は2009年からビザ(査証)なしで相互訪問ができるようになっています。親密な関係がなければあり得ないことです。マレーシアは有名な親日国の1つであるだけに、意外と言えばあまりに意外過ぎたのかもしれません。

現在、今回の殺害事件の対応を巡って、北朝鮮とマレーシアの関係悪化が言われています。今後、とりわけマレーシア政府がどう対応するかに注目が集まるでしょう。

北朝鮮への対応は国交のない日本も無関係ではない

北朝鮮という国が、意外なほど国交関係を有していることがわかりました。しかしながら、上述の通り、「国交を有する=関係が良好」とは限りません。

ミサイル発射や核実験など目に余る行動が目立つ北朝鮮への対応を、国交を有する国々は真剣に考えるべきでしょう。そして、国交がない日本も改めて考える時期に来ていると言えましょう。

LIMO編集部