毎年、スーパーボウル(今年は2月5日)が終わると、シリコンバレーの住宅市場は取引が1年のうちで一番活発な春シーズンに突入します。このタイミングで、お客様に最もよく質問されるのは、今年のマーケットはどの方向に向かうだろうかということです。

パロアルトにおける住宅の中間価格は、2010年から15年にかけて著しく上昇し、2016年にやっとそのトレンドが止まりました。2017年は変動要因が多く、その調整を続ける可能性が高いと見ています。

Source: Xin Jiang based on MLS as of 12/31/2016

やっと価格の上昇が止まった2016年

2016年は、金融危機後の2009年からの回復以来、初めてパロアルトにおける住宅の中間価格が下がりました。2016年に売れた家の中間価格は240万ドルで、前年比▲2%の下落でした。居住面積1スクエアフィート当たりの単価も2015年の1,398ドルから1,373ドルまで小幅に下落しました。

2015年に比べ、2016年は供給と需要両面において変化があり、しかも、上期と下期で市場の動きがかなり違っていました。

2016年上期には、供給が前年比で+19%も増えました。それと同時に、グローバル経済の不安定さと米大統領選の不確実性によって需要が若干弱く、1つの物件に対する申込み数が大きく減少し、物件が売れるまでの期間も長くなりました。

しかし、その軟調さ、あるいは足踏み状態は長くは続きませんでした。夏以降は供給が減ったと同時に、需要の方は国内および海外ともに一気に戻りました。

パロアルトにおける売主のほとんどは、短期的な利益のために売るのではないので、相場が売主に対して不利と判断した場合、その物件を市場に出さない、あるいは売りに出す時期を大幅に遅らせるのです。

それに対し、需要が一時的に弱くなったのは、パロアルトに魅力がなくなったからではなく、価格があまり高く手が出なくなったこと、そしてマクロ的な要因がほとんどです。そのため、上期の調整を感じた買い手がすぐに市場に戻ってきました。

その結果、立地とコンディションの良い家には、またもや5~7件の申込みがあり、400万~500万ドルの売出し価格を10%あるいは20%も上回る価格で売買が成立するようになりました。

2016年、パロアルトでは年間454の物件が売買成立し、結局のところ2015年より+8%増になりました。ちなみに、2015年の売買件数は421件で1998以来最低であり、2016年は下から2番目の低い水準でした。この2年間で供給が極めて少ない状況に変化はありませんでした。

2017年は変化が多い年に?

今年は変化の多い年になりそうです。トランプ大統領の政策次第ということもありますが、地元不動産市場の一番のけん引役は、やはり「テック景気」です。

一時的な減税政策が実施されれば、多くの含み益を抱える地主がやっと動き出すかもしれません。これはしばらく続いた供給のタイトさを緩和できます。また、移民政策の変更で、仮にシリコンバレーに移住して来る人数が減れば、住宅に対する需要は減ります。

そして、それによってシリコンバレーがグローバル人材を獲得できなくなり、競争の優位性を失えば、テック景気全体に大きな打撃を与えます。しかし、移民ビザが収入の高い順に優先的に発行されれば、シリコンバレーは恩恵を受けます。

30年住宅ローンの金利はこの3カ月で3.25%から3.75%まで上昇しましたが、まだまだ歴史的に低い水準で、今は需要を後押ししている状況です。また、パロアルトにおける400万ドル以上の購入はほとんど現金払いです。

足元は、2016年後半の過熱状況を受け、未消化の需要が多くあります。住宅ローンが必要な買い手は、大体エントリーレベルの若いファミリーで、200万~300万ドルの予算で子供をパロアルトの公立学校に入れる目的で家を購入する人たちです。

一方、海外、主に中国人の買い手は現金で大体300万ドル以上の予算を持っています。最近では中国旧正月の休暇を利用して家を探しに来た中国人もたくさんいました。

さらに、3月中旬以降、地元の名門私立校の不合格通知が出た後には、もう一波あります。私立に入れないことになったら、なおさら質の良い公立校があるパロアルトで家を買わなければならないからです。

年間売買量の4割を占める春シーズンを目前に、市場参加者の多くが不安を抱えています。

 

Jiang Xin