経済領域が国家間紛争の舞台になる時代

一方、昔と比べると、経済領域は国家間の紛争の舞台になりやすい。かつての戦争においても、国家は戦争をしたいからするわけではなく、軍事手段に出る前には資源獲得競争やブロック経済といった経済的な理由もあった。

しかし、現在では経済のグローバル化や相互依存、人々の国際的往来などが進み、また、世界大戦への反省や武力紛争禁止を巡る国際法の発展などもあり、軍事的手段へのハードルは高くなっている。

このように軍事的手段がとりにくい時代においては、国家間の対立は経済戦争という形をとりやすい。経済で多くの国が網の目のように繋がる時代においては、経済制裁というものは発動国にとって敵対国に対する有効な手段となる。

米中対立が進むからといって、両国が本当に武力で攻撃し合う可能性は、偶発的衝突の場合を除き、極めて低い。両国とも紛争の舞台として軍事領域を使用することは避ける一方、対立が激しくなるのであれば、経済領域がその主戦場になることは想像に難くない。

我々は、エコノミックウォーズの時代に入りつつある。いわゆる戦争の主体は軍だが、エコノミックウォーズにおけるキープレイヤーは企業である。

日本企業にはこれまで以上に経済安全保障、地政学リスクへの危機管理意識が求められる。

和田 大樹