トレックス・セミコンダクター、通期は業績予想を上方修正 高い成長が見込まれる産業機器・車載分野に注力

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2021年3月20日にログミーFinance主催で行われた、第19回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第4部・トレックス・セミコンダクター株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:トレックス・セミコンダクター株式会社 執行役員 経営企画部部門長 前川貴 氏
元ファンドマネージャー/元ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
フリーアナウンサー 八木ひとみ 氏

1−1.会社概要

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前川貴氏(以下、前川):それでは、資料を使って説明させていただきますが、その前に、私の経歴についてお話ししますと、私は約20年以上アナログ半導体の開発設計に携わってきていました。

その後、製品のマーケティングや製品開発を行っていましたが、約4年前から経営企画に携わっています。経営企画自体はそれほど長い経験ではないですが、ご説明させていただきます。

まずは、簡単に我々の会社をご紹介します。弊社は、2014年4月にJASDAQスタンダードに上場して、東証二部を経て、2018年3月に東証一部の指定替えを行った、創業25年になる半導体のメーカーです。所在地は、東京都の中央区に本社があり、最寄り駅は茅場町となります。代表は芝宮孝司でございます。

資本金は約30億円で、事業内容としては、半導体デバイスの開発・設計製造、そして半導体デバイスの販売を行っています。トレックス単体では177名の従業員ですが、トレックスグループを含めると、約1,000名の会社規模となります。

スライドの右側に、企業理念を記載しています。「常に豊かな知性と感性を磨き、市場に適応した価値ある製品を創出し、豊かな社会の実現と地球環境の保全に貢献するとともに、私たちの事業に携わるすべての人々がともに繁栄することを企業理念とする」ということで、掲げています。

1−2.沿革

前川:簡単に会社の沿革をお伝えします。1995年、岡山の井原市に設立されました。それ以来、電源IC一筋で、省電力・小型化の技術を強み・武器として事業を展開しています。

沿革には、創業以降、海外の弊社グループ会社名が多く記載されていますが、事業の展開としては、海外での販売が多い会社でございます。2016年以降、フェニテックセミコンダクターを連結子会社化した後、100パーセントの完全子会社化と記載していますが、こちらは後ほど説明させていただきたいと思います。

2−1.トレックス・グループの事業内容(ビジネスモデル)

前川:事業内容です。トレックス・グループは大きく2つに会社が分かれています。

1つが、トレックス・セミコンダクターで、もう1つがフェニテックセミコンダクターです。どちらも「セミコンダクター」と横文字が付いています。これは半導体という意味で、両社とも半導体を扱う企業であるということです。横文字の名前ですが、どちらも純粋な日本企業です。

トレックス・セミコンダクターはアナログ電源ICを専業としているメーカーで、特に小型化・省電力の電源に力を入れています。日本ではそれほど多くない、工場を持っていないファブレスメーカーです。

それに対し、フェニテックセミコンダクターは、ディスクリートと呼ばれる製品を製造しています。ネジ・釘のようにどこにでも使用できる半導体製品から、パワー半導体と呼ばれる大きな電力を動かすものに使うデバイスまで受託製造している会社になります。工場を持っていないファブレスの会社と工場である会社がつながっているというかたちになります。

2−2.トレックス・グループの拠点

前川:トレックス・グループの拠点となります。弊社は、ワールドワイドに事業を展開しており、ヨーロッパと中東とロシアをカバーするイギリスに販売事務所があります。

中国は上海と深圳、香港・台湾に販売事務所があります。こちらで中国をカバーしています。 シンガポールにも販売拠点があり、インドを含めた東南アジア・アセアン地区をカバーしています。

アメリカはカリフォルニアにありますが、販売事務所はロサンゼルスのアーバインにあります。もう1つ、技術開発を行うシリコンバレー・サンノゼにR&Dセンターを持っています。

国内は、本社東京と関西支社、札幌にテスト・技術センター、名古屋に販売事務所があります。

フェニテックセミコンダクターは、本社は先ほどお伝えした岡山にあります。岡山に工場が2つと、鹿児島に工場が1つ、京都にはデザインセンターがあります。

また、ファブレスではありますが、ベトナムに小規模のアセンブリの工場を持っています。

2−3.トレックスが展開する事業①

前川:トレックスの展開する事業内容について、少し説明したいと思います。「電源ICとは何か?」ということで、スライドに例を記載しています。ノートパソコンは、ACアダプタからおおよそ16ボルトの電源が入ります。あるいは中にリチウム電池が搭載されており、それをもとに動いていますが、その中にはCPUやメモリ、USBのポートなど、いろいろな機器が組み込まれています。

それぞれの機器では、CPUは3ボルト、メモリは1.8ボルト、USBのポートは5ボルトで動くなど、きっちりとした電圧が供給されないと、ノートパソコンは動きません。

そのバッテリーやACアダプタから来た電圧を、それぞれ必要な電圧に変えるのが電源ICの役目です。ですので、例えばノートパソコンだけでも、非常に多くの電源ICが使われることになります。

2−3.トレックスが展開する事業②

前川:ノートパソコンの話をしましたが、世の中を見るとさまざまな電子機器に電源ICが入っています。家電を含めると、例えばエアコンではリモコンもそうですし、本体のエアコンをコントロールするマイコンも使っています。

冷蔵庫も最近はモニター付きのものがありますし、また、健康機器も電子化されており、ウェアラブル機器といったものもあります。

産業機器ではドローン、スマートメーターです。そして、我々が注目しているのは車です。車はますます電子化が進む中で、非常に多くの電子部品が使われるようになっています。

2−4.トレックスの強み

前川:事業を展開していく中で、コンペティターに勝つための、我々の強みはどこかというところですが、前述のとおり、小型化・省電力ということです。

実際、例えばソニーの「スタミナWALKMAN」と言われる20年以上前の製品に採用された時から取り組んできています。その後、携帯オーディオ機器、ページャ・携帯電話、デジタルカメラなどを経て、現在ではかなり小型化が進んでいます。

また同時に省電力化を要求されており、この2つのキーワードでビジネスを展開してきました。今では小さなものは、シャープペンの芯より薄いパッケージの製品となります。

2−5.トレックスの技術力

前川:手前みそではありますが、2020年に省エネルギーセンターから「省エネ大賞」として、高い省エネポテンシャルがあるということで賞をいただきました。

2019年には日刊工業新聞主催の「超モノづくり部品大賞」において、これも世界最小の実装面積を作るDC/DCコンバータで、賞をいただきました。

2018年には経産省の主催の「ものづくり日本大賞」において、こちらも省電力を作る電源ICということで賞をいただきました。そして、2018年の日刊工業新聞主催の「超モノづくり部品大賞」では、DC/DCコンバータではない別の製品ですが、こちらも賞をいただきました。このように、社会的にはかなり評価いただいています。

2−6.フェニテックが展開する事業

前川:続いてフェニテックセミコンダクターのご説明をします。フェニテックセミコンダクターはトレックスとは異なり、工場が主体のファンドリーと言われる会社になります。

ファンドリーというのは、受託の専門会社で、日本では珍しいと思います。世界的には、台湾にあるTSMCが非常に有名で、大きなファンドリーでもあるのですが、それに似たかたちで日本で展開しているのが、フェニテックセミコンダクターになります。

こちらでは、特にディスクリートと言われるダイオードやMOSFET、そして、パワー半導体を主力製品としています。車を動かしたり、太陽光の電力コンディショナーを作るパワー半導体製品は、最近、非常に注目されるようになってきました。

受託製造ですので、フェニテックはウェハーを購入し、お客さまから言われたものを製造し提供しますので、主なお客さまは半導体メーカーなど同業の方々になります。

また、半導体の自社工場を持っているお客さまが、場合によってはフェニテックの工場生産でキャパをアップしたり、あるいはBCP対策、ビジネスを継続するために工場をもう1つ持とうということで、委託製造されることもあります。

2−7.フェニテックの強み

前川:次に「フェニテックが生き残っていくための強みはありますか?」ということです。通常のファンドリーとして、受託として「何でも作ります」という部分はありますが、強みとしてフェニテックはオリジナル製品も持っています。

ダイオード、MOSFET、さらにはSiC(シリコンカーバイド)と言われる、新しいパワーデバイスを自社技術で作ることができます。通常の受託ビジネスを行いながら、さらには「オリジナル製品のラインナップに追加してはどうですか?」と提案すると、お客さまは自社の製品ラインナップになければ、フェニテックから買って増やすといったビジネス展開ができます。

また、部分加工も受けることができるため、TSMCのような大型なファンダリーではありませんが、「小回りが効く」ということが、フェニテックの一番の売りとなっています。

3−1.当社の目指す姿

前川:今年の2月に、この先5年間の中期経営計画を発表しましたので、そちらの説明をさせていただきたいと思います。

スローガン的に「Powerfully Small!」と挙げています。意味は「小型で力強い」ということで、この言葉をイメージとし「CMOS電源ICとパワーデバイスで 脱炭素社会の実現を目指す」としています。

「今までも、これからも。」と表現していますが、先述のとおり、企業理念に「『地球環境の保全』を掲げ」という言葉を入れています。

これは、経営理念を作った時から小型化・省電力、低損失であるデバイスの開発を行っていこうと掲げた理念です。これまでもそうしてきましたし、これからもそれを推していくというのが我々の理念であり、これからも変えずに強みとして活かしていこうと考えています。

3−2.GX グリーントランスフォーメーションを推進

前川:具体的に何ができるのかご説明します。最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)が出ていますが、さらにGX(グリーントランスフォーメーション)という言葉も出てきました。

脱炭素社会に向けて、どのようにして炭素を減らしていき、変革していくのかというところで、理念にもあるとおり、GXを推進しています。

具体的には、DC/DCコンバータや小型パッケージを推進していく中で、発熱を抑えたり、実装する基板を小さくできるというポイントがあります。電子機器が世の中に広がっていくと電子基板が増えることに対し、その面積を減らしていくのが、我々の1つのミッションだと思っています。

もう1つはパワーデバイスで、こちらはフェニテックが中心になります。原理的な現象としては、電流を流すと電子機器は発熱しますが、抵抗を下げることで発熱を抑えることができます。

この抵抗を下げる技術に特化しているのが、フェニテックセミコンダクターのパワーデバイスです。今後、新しい素材を使ったり、これまでにないデバイス技術で抵抗を抑えていくことにより、小型化・省電力、低損失で、脱炭素社会に向けた取り組みをグローバルに進めていきたいと考えています。

3−3.トレックスグループ 数値目標

前川:実際にどのくらいの規模感で成長していくかという目標値ですが、2023年、3年後に連結売上高で300億円、営業利益としては30億円を目指します。5年後には連結売上高は350億円、営業利益は40億円で、株式資本の配当率であるDOEは3.0パーセントを数値目標として挙げています。

3−4.トレックスグループ 連結売上目標

前川:数値目標に向けてどのように増やしていくかというところですが、今期の着地予想を235億円と置いています。

2023年に300億円、2025年に350億円というのは、右肩上がりにならないとなかなか厳しいと思いますが、目標的には1.5倍、年間成長率8.3パーセントで伸ばしていき、なんとか到達していきたいです。

その下地としての省電力・小型化は世の中が要求しているものですので、まず売上を上げていきたいと思っています。

3−5. トレックスグループ 連結営業利益目標

前川:営業利益ですが、今期、予測で9億円と発表させていただいているので、最終的に40億円まで上げることはかなり厳しいハードルではありますが、売上を上げると同時に、自社内でのさまざまな改善やコストダウンを続けていけば、営業利益としては上げられると考えます。ですので、3年後に30億円、5年後に約40億円を目標として持っていたいと考えています。

3−6.トレックスの戦略①

前川:具体的に「どうやって実現するか」というところをご説明します。これまではコンシューマ向けのオーディオ機器やページャ・携帯電話の話をさせていただきましたが、トレックスでは10年以上前から、産業機器と車載への販売も力を入れてきています。

確かに、コンシューマ向けは数量は出ますが、利益を得るにはなかなか厳しい環境になってきています。特に近年、中国の半導体メーカーからも性能がよいものも出始めました。そのようなところに勝つには、信頼性の構築や精度を上げていくことが必要で、要求されるのは産業機器や車載ですので、こちらに注力しようと考えています。

実績として、2015年3月期と2020年3月期を比較すると、産業機器の売上高は5年で約1.5倍に伸ばせましたし、車載の売上高に関しても、5年で約1.4倍に伸ばすことができています。

3−6.トレックスの戦略②

前川:車載を例に挙げると、「動く・止まる・曲がる」という基本的なところではなく、もともと家電メーカーとのお付き合いが非常に多かったことから、カーナビやカーオーディオ、いわゆるカーインフォテイメントと呼ばれる部分を主軸に販売を進めてまいりました。

そこからパワーウィンドウや電動シート、スライドドアといった部品、さらにはADASと呼ばれるセンシング技術にも展開していこうと進めています。

センサーによる位置決めや、カメラの画像解析などにはマイコンが必ず使われ、そこには必ず電子部品があり、電子部品があるところには電源ICが必要です。

電源ICが必要なところに対して、ビジネスを増やしていこうと思っており、電子部品に対する電源ICを展開しているのがトレックスになります。

3−7.フェニテックの戦略①

前川:続いて、フェニテックです。フェニテックはトレックスの省電力・小型化に対し真逆のような製品になりますが、今後の方針としては、パワーに力を入れていきます。

先ほど、「車は動かしません」とお伝えしましたが、フェニテックのお客さまは、車を動かすためのドライバや、産業用ロボット、それをモーターで動かすための半導体デバイスを作っているところがあります。このようなところが今後伸びるということで、フェニテックでは大電力のものを中心に展開していこうと考えています。

3−7.フェニテックの戦略②

前川:実際にどういうものができるかと言いますと、SiCと呼ばれる次世代の化合物材料を用いた、SBD(ショットキーバリアダイオード)というダイオードの一種で、去年の9月にサンプル提供を開始しました。

これは世界的にまだ数社しかできていない技術で、これをフェニテックはオリジナルで提供できるため、フェニテックのお客さまが自社ブランドで販売していただけるよう、サンプルを提供し始めたということです。

また、今年は電圧を倍に上げて1,200ボルトで動くものに展開していくということで、まさに大規模な半導体作りを徐々に進めています。また、装置もすべて用意していますので、受託もできるようになっています。

3−8.コラボレーションとM&A

前川:それ以外のトピックとしては、トレックスは小型化・省電力を強みにしているのですが、電池メーカーとのコラボレーションなどは昔から行っています。

スライドの左側には、日本ガイシとのコラボレーションを挙げています。テレビコマーシャルも放映されていますが、「EnerCera電池」を開発されました。これは半固体電池で、リチウム電池の二次電池、次の世代の電池だと言われているものです。

新しい電池に対する充電や放電を正しく制御するため、トレックスの電源ICを使った電源ソリューションを提供させていただきました。

スライド右側には、ノベルクリスタルテクノロジーという会社を記載していますが、こちらはどちらかと言えばフェニテックのビジネスの将来の種になります。先ほど「SiCのデバイスを、フェニテックオリジナルで」というお話をしましたが、その次の世代には酸化ガリウムという素材でのデバイスが考えられます。

酸化ガリウムの素材を作っているのは日本で2社しかなく、そのうちの1社がノベルクリスタルテクノロジーという会社です。トレックスはフェニテックのパワー半導体を推進していくため、こちらと資本提携して徐々にコラボレーションしたいと思います。次世代に向けた先手先手の一手を打つために、M&Aを含めて行っている状況です。

3−9.トレックスグループの戦略(まとめ)

前川:まとめです。トレックス・フェニテックをそれぞれ分けさせていただきました。戦略的には、トレックスはファブレスで工場を持っていませんが、逆に、フェニテックは工場です。

どちらも省エネで社会に貢献するデバイスを提供していくことについては一緒です。主な製品は、トレックスは電源IC、フェニテックはディスクリート・パワー半導体、次世代のSiC、酸化ガリウムと言われる製品です。また、ターゲットにする市場は、どちらも産業機器や車載で、今後伸びると思われるところを中心に展開していきたいと、戦略を立てています。

4−1. 2021年3月期 業績予想

前川:最後、非常に簡単ですが第3四半期の決算をお伝えすると、第3四半期までの売上高が171億円、営業利益が6億9,300万円です。

2月に上方修正を行い、通期の着地見込みは、売上高は235億円、営業利益は9億円を予想しています。

5−1. 基本方針

前川:配当についてご説明します。配当性向は20パーセント以上、株主資本配当率は3パーセントを当面の目標としており、ここ数年間ずっと同じとなっております。

ポリシーとしては、戦略的投資による成長力の向上を図りつつ、当社を取り巻く経営環境、中長期の連結業績、株主資本利益率の水準を踏まえて決めさせていただきたいということで、還元の指針としてはこのように挙げています。

5−2. 配当金

前川:実際はどのようになっているかと言いますと、配当性向については高ければよいというものではなく、前回は100パーセントを超えてしまいましたが、予想としては70パーセントくらいです。DOEも少し下がっており、1.9パーセントというかたちで出させてもらっています。

以上で、私からの説明とさせていただきます。ありがとうございました。

質疑応答:フェニテックを買収した背景について

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社はファブレスでしたが、工場で生産するフェニテックを買収した背景と、理由を教えていただきたいと思います。

前川:我々は、もともとコンシューマモデルのオーディオ機器などを中心に展開していましたが、先ほどお伝えしたとおり、中国から安いものが出てきたということで、利益率がだんだん下がってきました。そのため、軸足を車載や産機に向けていきたいということです。

軸足を車載に向けようとすると、車メーカーから「あなたのところはファブレスで工場がありませんが、10年、20年、しっかりと提供してもらえますか?」と問われ、ファブレスのメリットが逆手となってしまいました。

そのために工場をいろいろ探し、その中で、フェニテックセミコンダクターを選択しました。

坂本:もともとお付き合いがあったという話がありましたが、御社がフェニテックに注文を出していたということで、つながりはありましたよね?

前川:実は、フェニテックのほうが親会社でした。

坂本:そうですか。逆だったのですね。

前川:そうです。今日はあまり話していないですが、もともとフェニテックが親会社で、フェニテックの自社のブランドとして立ち上げようとして設立したのが トレックスになります。トレックスはブランド力が必要でしたので、上場を目指し徐々に親会社の資本を抜いていきました。

坂本:リレーションもありましたよね。

前川:リレーションはもともとありましたが、一番は、内情をよく理解できているという点です。

坂本:もともと車は要件が厳しいため、なかなかよいところがなかったのでしょうか?

前川:半導体メーカー各社が車載に向かっていた中で、「自分たちの工場がいっぱいでも、トレックスの分を流してあげますよ」となるには、何かしらのよい関係を作り続けないといけません。特に最近は半導体の需要が高まっており、足りないと言われることもあります。

坂本:足りない、生産できないと聞きます。

前川:ファブレスで製品を作ってもらうためには日々の関係も大事ですが、しっかりとした資本関係を持つことも重要だと思います。

質疑応答:半導体のビジネスチャンスについて

坂本:5GやIoTが拡大していますが、「そこで使われる半導体が増えるよね」という話はみなさまされています。そのあたりの御社のビジネスチャンスなどを含めて、教えていただけたらと思います。

前川:もともと小型化・省電力の、いわゆる携帯できる機器向けの製品を得意としているメーカーですので、5G・IoTのどちらも期待しています。「5Gで何が新しく出てくるの?」「昔からIoTと言われて長いけれども、何が出てくるの?」といったところはなかなか見えてきませんが、ただ確実に新たな機器は出てくるでしょうし、それに向けて前もって取り組んでいます。

我々の製品では、ワイヤレス、いわゆる無線通信用の低ノイズの電源ICに強みがあります。今までWi-FiやBluetoothなどのモジュールにも採用されていますし、5Gは無線通信であり「IoTも5Gを使って」という話にもなります。ですので、低ノイズの電源ICの需要はあるということで、非常に期待しています。

八木ひとみ氏(以下、八木):Bluetoothの製品も増えてきていますね。

前川:そうですね。Bluetooth製品は、Bluetoothの チップセットメーカーと一緒に開発を行ってきた経験があります。そのような経験からも新しい5Gに向けて機器を作っていただくことを楽しみにしています。

坂本:5GもIoTも真価が発揮されるのは、敷設された後だと思います。いろいろなサービスが出てくると思いますので、つながるものが相当増えて、御社のチャンスになるかもしれないですね。

前川:ホームセキュリティも、今後は増えてくると思います。

坂本:5Gの敷設も日本はまだまだですが、5Gによってつながるものは10倍どころではないので、そのあたりは楽しみです。

前川:我々としては、そのようなことを行っているメーカーと、開発段階から一緒に次の世代へ取り組みたいと思います。

坂本:そこに半導体も入っていくということですよね。

前川:そうです。電子部品1つひとつに対して電源ICが入っていくことになります。

質疑応答:自動運転に対してのビジネスチャンスについて

坂本:先ほどは5G・IoTの話をお伺いしたのですが、今度は自動運転やEVなど、大きなパワーのものについてお伺いしたいと思います。これから自動運転になると個数が増えると思いますが、このあたりのビジネスチャンスについてどうお考えですか?

前川:フェニテックとトレックスでは少しだけ違いますが、トレックスは自動運転になると、センシング技術や5Gの利用も出てきます。センシングは、レーダーセンサーや、カメラモジュールで画像を認識しながら動きます。そうすると、画像認識用のチップや、データを処理するためのマイコンが非常に増えてきます。

例えばセンサーでしたら、ノイズ低減や省電力が必要です。いろいろな要求に対して、マッチした電源ICを出していきたいと思います。車のECUと呼ばれるような部分に、電源ICを提供していきたいと考えています。

フェニテックは、動かすほうの「動く・曲がる・止まる」といったことに使うような大きなパワーデバイスも製造を行っていますので、パワーステアリングやパワーウィンドウ、ワイパーなど、すべてモーターで動いているため、そのようなモータードライブにいかに効率よく電力を伝えるか、そのようなところが今後のビジネスチャンスになると思います。

坂本:スライド18ページにある中計の伸びは、先ほどご説明していただいた5G・IoT・自動運転・EV、このあたりがかなりのウエートを占めるイメージでよろしいですか?

前川:そうですね。そこが成長のポイントだと思っています。

質疑応答:酸化ガリウムについて

坂本:次の質問は、次世代パワー半導体であるSiCや酸化ガリウムについてです。素材としてはわかりにくいところがあると思いますが、新しいものですので、個人投資家も非常に興味があると思います。このあたりをご説明していただけたらと思います。

前川:SiCは、化合物半導体の素材の1つです。素材自体をフェニテックが作るわけでなく、購入してくるのですが、10年以上前から大学と研究してきました。

日本でもすでに何社かでデバイスが販売されており、フェニテックも10年かかりましたが、出せるようになったので提供を開始したということです。SiCは性能はよいですが普通のパワーデバイスに比べたら高価で、使われるところは限定されてきますので、できるだけコストダウンしていきたいと思います。

前川:スライド右側は、ノベルクリスタルテクノロジーです。これが酸化ガリウムと言われる化合物半導体の素材になります。ノベルクリスタルテクノロジー社はその素材とデバイスを作っている会社となります。この素材は、作り方そのものがローコスト化できるというものです。

他のものでは、1枚1枚作らないといけないのですが、酸化ガリウムは液体から結晶を作るため、結晶の成長速度が大変速くできます。高品質で大型の単結晶基板を「かなり安くできる」ということを聞いています。

坂本:半導体の教科書の1ページ目を開くと、シリコンの作り方が書いてあります。イレブンナイン(99.999999999パーセント)まで高めて、それを切って削るという工程があるからこそ参入障壁が高く、日本の2社が力を持っているかと思います。

これが、予定しているような性能やコストがある場合、ひっくり返る可能性はありますか?

前川:そうですね。現実は少し方式が違いますが、融液成長で作ることができるというのは、SiCやGaNとは違って、かなり低価格でできますので、かなり魅力的なものを作ることができる素材になります。

坂本:素材はどこにでもあるものでしょうか?

前川:いいえ。実は日本が引っ張っている部分があって、ノベルクリスタルテクノロジーは日本で2社あるうちの1つになります。

坂本:もし、これが一般的になれば、業界が変わるかもしれないと思っていました。

前川:ただ、大量に使えるようにするためにはまだ時間がかかります。

坂本:そのあたりも楽しみにしていきたいと思います。

質疑応答:半導体の微細化について

坂本:次の質問は、御社はかなり小さい半導体を作られていますが、現在、半導体の微細化が進んでいて、それが「限界まで来ているのでは?」といった話もあるようです。将来的に、もっと小さいものを作れる可能性はありますか?

前川:我々の製品はもともと小さくて、シリコンは1ミリメートル以下、0.7ミリメートルの上に半導体の回路を作り、それをアセンブリします。どちらかと言うと、それ以上小さくするというよりは、同じサイズで性能を上げたいと思います。

八木:省エネということでしょうか?

前川:省エネや熱を出さないようにするなど、さらに複雑な回路を組み込むという意味では、微細化技術は非常に有用だと思います。技術的にはもっと小さくできると思いますが、アセンブリと言われるパッケージ技術が1つのポイントになります。

先ほどもお伝えしましたが、薄さ0.3ミリメートルなど、シャープペンシルより薄いパッケージング技術がないと、カードなどの基板に載せられません。そのようなことが提供できるアセンブリ会社の技術の進歩も、非常に重要だと思います。

質疑応答:トレックス・セミコンダクターの強みについて

坂本:御社は、世界トップクラスの小型・省電力ICを作られていると思いますが、小型化・省電力のためにこれまでに蓄積してきたもの、「小さくするのはこのようなところが難しい」といったことや、強みがありましたら教えてください。

前川:一番難しいのは、少しずつしか改善されないということです。10年、20年かけてやっとここまで来ることができましたし、一足飛びに抜け出られるものでもないです。アナログ電源ICですが、アナログ技術者が一人前と言われるまでには、最低でも5年、10年の経験が必要となります。そのようなエンジニアを、しっかり育成しているところが強みでもあります。

また、実際に製品として開発し販売するに当たり、そのマーケットの要求にタイミングよく提供していることが、強みだと思います。ですので、特に「これだけが突出しているから」というものではなく、経験と実績で少しずつ改善できていると思っています。

坂本:「すぐにできるものじゃないよ」ということですね。

八木:そこは重要なところですよね。

質疑応答:パワー半導体のデメリットについて

八木:先ほど、次世代パワー半導体についてお話しいただいたのですが、「逆にデメリットは何かありますか?」といただいています。いかがでしょうか?

前川:パワー半導体のデメリットは値段です。「今すぐ置き換わるのか?」と言われると、既存の製品で十分使えるという方々にとっては、「なぜ高いお金を出して、そこまでしないといけないの?」ということになります。将来、コストがこなれてくれば全部切り替わることもあると思いますが、現時点ではコストがネックの1つになっています。

坂本:正直、いいものということと、手間がかかっているから高いのですよね?

前川:量の話になりますね。

坂本:「たくさんある程度発注してくれれば、それなりにはこなれる」ということですか?

前川:そうですね。卵が先かニワトリが先かという話でもありますが、どんどん出れば出るほど半導体ですから下がっていきます。

質疑応答:M&Aと今後の成長分野について

坂本:今日は、今後の御社の概要、戦略、重点市場など、このあたりをお話しいただきました。車載の部分や5Gも含めて成長例をお見せいただいたのですが、今後もっと成長するためには、M&Aで補っていく可能性はありますか?

未来の話になるかもしれませんが、今日のお話以外にも「このような分野に実は興味がありますよ」ということがありましたら、教えてください。

前川:まず、M&Aに関しては、半導体の業界は非常に展開が多いです。日常茶飯事のようにM&Aが繰り返されています。みなさまご存知のように、日本の大手も名前がどんどん変わるくらい、オーナーが変わっています。ですので、もちろん常にM&Aに関しては意識していますし、できるだけ広げようと思っています。

足元の話では、例えばデザインエンジニアを確保したいから、設計会社とM&Aを行う、資本を入れる、そのようなことがあります。実際に2年前に、インドにあるCirel Systems Pvt Ltd.という会社と資本提携しました。そこはデザイン会社であり、今後のトレックス製品の設計に有用だと考え、資本を入れました。

それ以外でも、先ほど話しましたように、ノベルクリスタルテクノロジーにも資本を入れました。

さらには、フェニテックで生産キャパを増やしていく場合は、自前で全部整えるのがよいのか、それとも、既存の工場で売られている工場があれば、そこを買ったほうが手っ取り早いのかといった話も含めて、常にアンテナを広げた状態で考えています。

坂本:確かフェニテックさまは、ヤマハの工場を譲り受けたことがありますよね?

前川:そうですね。ヤマハの工場を買いました。ですので、工場を買う経験もありますので特に敷居は高くなく、それが当たり前だと思っています。

坂本:そこは、案件があれば柔軟に対応する可能性があるということですね?

前川:おっしゃるとおりです。

八木:ファブレスですので、あまり関係ないかもしれません。例えばイギリスにも拠点を持っていらっしゃいますが、直近だとブレグジットの影響はありませんか?

前川:今のところ大きくはありません。イギリスにあるのは販売会社ですので、ブレグジットの影響がゼロではないと思いますが、今後のEUとイギリスの関係にもよると思います。取引はドルで行っていますが、ポンドはどうなるのだろうと思っています。

坂本:これまでであれば「イギリスに置くのが普通だろう」と、日本人的な発想では思いますよね。

前川:ヨーロッパの中で、イギリスがどのような目で見られるかも含めて、「0」ではないと思っていますが、大きな数字として表れるような影響があったかと言うと、今のところは出ていないと思っています。

八木:今後は、状況を見ながら注視していくかたちでしょうか?

前川:そうですね。それよりも影響があったのは、米中の貿易摩擦です。こちらのほうが数字的に影響を受けました。

八木:そのあたりについても、これからアメリカも政権が代わって、いろいろ動きそうなところもありますので、今後とも注視というところですね。

記事提供:ログミーファイナンス

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