2021年3月3日に行われた、AOI TYO Holdings株式会社2020年12月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:AOI TYO Holdings株式会社 代表取締役 グループCEO 中江康人 氏
AOI TYO Holdings株式会社 取締役 グループCFO 譲原理 氏
連結決算ハイライト
譲原理氏:それでは、2020年12月期の決算概要についてご説明いたします。2020年12月期通期では、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下での撮影業務の中止・延期、広告需要の減少等により、売上高が大きく減少し、各段階利益は損失を計上しました。
しかしながら、第4四半期は売上が回復、業績予想については売上高が11億円弱、営業利益が7億円弱上回り、下期の営業利益は黒字化しました。
一方、特別損失の計上により、当期純利益は業績予想を10億円下回り、25億円強の赤字となっています。
特別損失の内訳
特別損失の内訳については、ご覧の表のとおりです。中期経営計画に基づく連結子会社数の大幅削減、在宅勤務の推奨継続によるオフィスの集約、削減を17拠点で決定したこと等により、事業構造改善費用9億4,600万円を計上しました。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により投資時の事業計画と実績値との乖離が発生、M&Aを行った海外子会社やイベント制作会社の、のれんの減損損失3億円を計上しました。
四半期別売上高推移
四半期別の売上高推移です。売上高は第3四半期までは落ち込んでいましたが、第4四半期は大きく回復しています。
四半期別受注高・受注残高推移
四半期別の受注高・受注残高の推移を見ると、受注高は緊急事態宣言解除後の第3四半期から増加に転じ、第4四半期も増加しました。
点線で囲っている部分、当期末の受注残高は133億円と前期末には届かないものの、相応の水準は確保しています。
四半期別営業利益推移
四半期別の営業利益推移です。第4四半期の営業利益は、売上高の回復、費用削減策の前倒しでの実行、実行利益率の改善等により黒字化しました。第3四半期と合わせた下期6ヶ月間でも黒字化しています。
事業区分別売上高
事業区分別の売上高です。2019年、2020年の実績について、スライド下部から、上期、第3四半期、第4四半期と色分けしたグラフとなっています。
イベントを含む広告関連事業と海外事業の第4四半期売上高は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が継続しているため、引き続き前年同期比で減少してはいるものの、動画広告事業とソリューション事業の第4四半期売上高は回復し、ほぼ前年同期並みとなりました。
各事業区分の概要
それでは、各事業区分の状況をもう少し詳しく説明したいと思います。
動画広告事業
動画広告事業です。2018年からの上期と下期の売上高を棒グラフで、売上高から外部支出原価を引いた後の実行利益の売上高に対する率、実行利益率を折れ線グラフで示しています。ご覧のとおり、この下期の売上高は回復し、修正計画(点線の部分)を上回って着地しました。
実行利益率は、上期は新型コロナウイルスの影響で中止・延期となった案件の実費請求の影響等もあり低下しましたが、下期は改善しています。海外ロケや大規模な撮影を伴う単価の高い案件は、実行利益率が低いものも多く、こうした案件が感染拡大防止により減少したことも、その要因の1つとなっています。
また濃い青色で示しているプリント売上については、減少し続けているものの、すでにかなり少なくなっているものですので、決算に与える影響も限定的となっています。
ソリューション事業① −TYOオファリングマネジメント部門
次に、ソリューション事業のうち広告主に対して直接営業を行う、TYOオファリングマネジメント部門の実績です。各期の売上高を、スライド下部から上期、第3四半期、第4四半期と、色分けして棒グラフにしています。
第2四半期の対面営業自粛の影響で、第3四半期の売上高は減少したものの、第4四半期は回復し、修正計画を大きく上回って着地しました。メルカリさまやAmazonさまなどのネット系企業や、IT系企業からの受注が増えています。
ソリューション事業② − Quark tokyo + Mediator
同じくソリューション事業のうち、オンライン動画の企画、制作、配信を行うQuark tokyoと、電通グループのサイバー・コミュニケーションズとの合弁会社である、Mediatorの実績です。
第4四半期はネット系企業の大口案件もあり、前年同期比で増加し、修正計画を上回って着地しました。これらTYOオファリング部門、Quark tokyoは、この1月から新しいxpd(イクスピーディー)に集約しています。
広告関連事業
次に、広告関連事業です。イベント事業における、新型コロナウイルス感染拡大の影響は継続していますが、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型イベントが新たに主流となってきており、顧客層が拡大したため、第4四半期の売上高は回復して、ほぼ修正計画どおりの着地となりました。
海外事業
最後に、海外事業です。東南アジアの一部地域では、新型コロナウイルス感染拡大が収束しておらず、売上への影響は継続していますが、ほぼ修正計画どおりの着地となりました。
顧客別売上高
続いて、顧客別の売上高です。薄い青色の電通グループ、濃い青色の博報堂グループの売上高は、やはり大きく落ち込みました。
白抜き部分の直接取引の売上高も減少していますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を直接的に受けたイベント制作会社3社の売上減少が25億円程度あり、これを考慮すれば、直接取引の割合が高まっている傾向は、継続しているものと認識しています。
媒体別売上高
媒体別の売上高です。いずれも減少している状況ですが、テレビCMの減少に比べると、オンライン動画の制作を含むデジタルコンテンツの減少率は低くなっており、オンライン動画が増えてきている傾向は、この状況の中でも継続していると認識しています。
連結貸借対照表サマリー
最後に、連結貸借対照表のサマリーになります。期末は現金及び預金が108億円あり、流動比率は223.9パーセントと高い水準になっています。120億円のコミットメントラインですが、12月末の利用残高も「0」となっており、資金的な問題はありません。
連結キャッシュ・フロー計算書
当社の場合、売上債権のサイトが買入債務のサイトより長いことから、ご覧のとおり、売上債権の減少のほうが大きくなっており、連結キャッシュ・フロー計算書を見ると、営業活動によるキャッシュ・フローが大きくプラスとなっている状況です。私からの説明は以上となります。続いて中江からご説明します。
組織再編と新事業区分(2021年1月)
中江康人氏:グループCEOの中江です。私から中期経営計画への取り組みを、まずご説明します。昨年、中期経営計画をみなさまにご説明させていただきましたが、4つの事業区分をコンテンツプロデュース事業・コミュニケーションデザイン事業という2事業体制へ移行しました。
2021年の経営体制(2021年3月25日〜)
それに伴って、今年の経営体制についてご説明します。グループ経営の強化を目的に、執行役員制度を導入しました。そして、主要事業会社の代表に、執行役員として経営会議に参加してもらい、業務執行の効率性向上を目指して進めているところです。
さらに、新任の取締役2名を選任予定でして、3月の株主総会にお諮りさせていただく予定です。
事業環境の変化
事業環境の変化についてです。こちらも何度もご説明させていただいていますが、動画の広告制作市場はデジタルシフトが加速しています。我々としては、年間で20パーセント程度のペースで成長すると見通しており、その中でも、高単価のブランド動画の領域も成長しますが、低・中単価動画の伸びが大きくなると見ています。
広告主のニーズも多様化しています。広告戦略、マーケティングの戦略を内製化されている広告主の企業が増えており、我々がエグゼキューションの部分を担うことで、直接取引のニーズが増加しています。
直接取引、デジタルコンテンツの売上推移
我々は、このようなトレンドを捉えながら経営しているわけですが、実際にどうなっているかと言いますと、濃い青色がデジタルコンテンツ、薄い青色が直接取引の比率で、着実に伸びており、こちらの伸びを加速させていくのが中計の骨子となります。
新たな商流
直接取引はどのようなものかご説明します。我々の基幹事業は、広告主から広告会社を経由して制作の発注をいただくのが従来のかたちです。それに加えて、広告主から直接企画・制作の発注をいただき提案し実装するという、新たな商流が生まれているということです。
そういった中での事例を紹介させてください。ここのところ、かなりテレビコマーシャルでオンエアされていると思いますが、メルカリさまのテレビCM、アウトドアメディア、Web・PR等を、我々が担当しています。複数社の競合の中から、我々の提案をご採択いただいた事例となります。
またAmazonさまの「Amazon Prime Video」については、テレビCMを当社グループで担当しています。加えて、動画以外のキャンペーンとしての受注も増えており、ロッテさまのプロモーションや、BMWさまのWeb動画や、イベント・グラフィック・SNS等も担当しています。
COVID−19への対応
そして、気になるところであるCOVID-19への対応ですが、1年前に緊急事態宣言が発出されたため、広告主に撮影・編集の延期をお願いし、2ヶ月ほどすべてが止まりました。
そのような中で、緊急事態宣言明けは医療コーディネート会社とアドバイザリー契約を締結して、ガイドラインを作成し、感染拡大防止策を講じた上で、撮影・編集等の業務を再開しました。
今年については、現時点でも緊急事態宣言発出下にありますが、感染拡大防止策により、撮影・編集等の業務は問題なく継続しており、中止・延期となる案件もほとんど発生していないことから、当社における対応は完了しているという認識でいます。
今期のアクションプラン
今期の主なアクションプランです。コンテンツプロデュース事業においては、当社の主要顧客である電通・博報堂からの安定的な受注獲得を目指して、営業力を強化していきます。
また、顧客を拡大していくために、ADK及び外資系広告会社、ネット系広告会社、コンサルティングファームなどからの受注、さらにGoogle、Facebook等々を筆頭としたプラットフォーマーからの直接受注も進めているところです。
そして、低・中単価動画制作の本格始動を2022年から考えており、それに向けた準備を着々と進めています。
コミュニケーションデザイン事業については、7社を統合したため、まずは部門間連携の強化に向けた取り組みを、現在進めています。管理体制の構築、人事評価・報酬制度を今期中に制定していきたいと考えています。また、不足しているケイパビリティを拡充していくため、PR会社やプランニング会社との業務提携及び出向の受け入れを進めます。加えて、(広告主の)戦略の部分のお手伝いができるように、ストラテジックプランナーの新規採用などを進めていきます。
コスト削減の取り組み① − オフィス関連
もう1つの施策として、コスト削減も経営にとっては大きな施策となります。まずオフィスについて、連結子会社等を削減したことと、在宅勤務を継続していることで、17拠点のオフィスの削減を決定して、実行している最中です。
これにより2019年度比で賃料の4.9億円減少を、来年2022年度は実現する予定です。現在も相当実行できており、順調に進んでいます。
コスト削減の取り組み②
コスト削減の主要項目ですが、業績連動性の高い人件費は自然に減少しているほかに、接待交際費・旅費交通費等を削減、その他、業務委託費・支払手数料等を削減した結果、今期は2019年度比で、約18億円の削減が実現しそうです。
連結業績予想
連結業績予想です。国内市場の回復はもちろん見込まれているものの、緩やかなものになると見通しています。足元の緊急事態宣言発出等によって、先ほどもお伝えしたように、案件の中止・延期などはほとんどないものの、広告市場の回復が遅れる可能性はあるかと思います。
それに伴って、着実なコスト削減を併せて考えると、今期は売上高が530億円、営業利益は9億円、経常利益は8億円、当期純利益が4億円、そして、我々が一番大切にしている経営指標、EBITDAは19億円ということで、大幅に回復する予定です。
事業区分別 売上高計画
事業区分別の売上高の計画です。コンテンツプロデュース事業は、ある程度回復しますが、コンテンツプロデュース事業の人員をコミュニケーションデザイン事業に振り分けたこともあり、ほぼ横ばいの計画です。実質的にはプラスですが、シフトしたこともありほぼ横ばいとなります。
その分、コミュニケーションデザイン事業は、先ほどの広告主のニーズをxpdという新設会社が捉えることで、増加する計画となっています。
売上高、営業利益、EBITDAの推移
売上高・営業利益・EBITDAの推移です。実は、昨年2020年はCOVID-19の影響がなければ、2018年の水準まで戻す計画でしたが、想定外のことが起きてしまいました。2017年が過去最高の業績ですが、2025年までにEBITDAで50億円以上まで戻して、それに匹敵するところまで成長させていくことが、我々の中期経営計画となります。
株主還元
最後に、株主還元です。我々は、配当の方針を「連結配当性向30パーセント以上」でお約束しており、そこを変えるつもりはありません。2020年12月期においては、当期純利益が損失を計上するものの、安定的な配当水準を可能な限り維持したいということで、期末配当は2019年12月期の実績と同等の、1株当たり12円を予定しています。2021年12月期も同額、12円の配当を予想しています。
以上で説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。