政府は脱炭素社会に向けて、2030年代半ばまでに新車販売をすべて「電動車」にする目標を掲げました。すでに米カリフォルニア州では、35年までに州内で販売されるすべての新車を「ゼロエミッション車」にする義務付けを発表。中国では35年までに新車販売のうちEVやハイブリッド(HV)車などの環境対応車を50%以上にする目標を掲げており、自動車の電動化はさらに加速するもようです。

EV車普及には、バッテリーの安定供給が重要といえます。各自動車メーカーは車載電池メーカーと複数社にわたり取引をしています。また自動車メーカーが自社生産する動きも出てきています。そのためリチウムイオン電池(LiB)市場において、競争は激化しているのです。

「3強」コロナ禍どこ吹く風?

車載電池は日本のパナソニック韓国のLG化学、そして中国の寧徳時代新能源科技股(CATL)が主なサプライヤーとなっています。

パナソニックの「2020年度第3四半期決算」(2020年4~12月期)によると、オートモーティブの売上高は前年同期比14%減の9,604億円、営業損失は74億円となっています。ただ固定費削減や車載電池の材料合理化、新製品の導入効果があり、前年同期は292億円の損失からは増益となっています。

10~12月期のオートモーティブの売上高は3,910億9,700万円、営業損失は30億4,900円です。ただ通期はテスラ事業の黒字化が見通せる状況で、従来予想(全社ベースの純利益は前期比56%減の1,000億円)を上方修正(同34%減の1,500億円)しています(※1)

韓国LG化学の「2020年12月期通期決算」(2020年1~12月期)によると、LG化学の電池事業を引き継ぐ子会社LGエナジーソリューションの12月期連結売上高は同48%増の12兆3,560億ウォン(約1兆1,800億円)、営業利益は3,880億ウォン(370億円)と前の期4,540億ウォンの赤字から大幅な増加となりました。

10~12月期の同子会社の売上高は同66%増の4兆1,280億ウォン(約4,000億円、前の期は2兆4,810億ウォン)、営業利益は1,160億ウォン(約111億円、前の期は2,510億ウォンの損失)です。

CATLの「2020年第3四半期決算」(2020年7~9月期)によると、売上高は同0.8%増の126億9,300万元(約2,067億円)、純利益は同4.24%増の14億2,000万元(約230億円)となっています。ただ、コロナ禍で新エネルギー車の市場が冷え込んだ影響は大きく、2020年1~9月期の累計売上高は、同4.06%減の315億2,200万元(約5,133億円)、純利益は同3.1%減の33億5,700万元(約547億円)となっています。今期初めて7~9月期でプラスとなり、回復を予見させます。

3社ともがテスラのサプライヤーとなっているなか、LG化学の強さが見て取れる結果となっていますが、CATLの急成長も目を見張るものがあります。

CATL、続く多額の投資

CATLの2月2日の発表によると(※2)、第一段階では広東省肇慶市の工場の新設を計画、120億元の投資で生産能力は25GWh。また2030年末までに広東省の関連産業を支援し、150GWhの生産能力構築にも言及しています。20年2月には260億元、20年12月には390億元をかけて中国内に工場を新設・増設することを明らかにしています(※3)